【計算例付き】防衛特別法人税とは?課税対象や企業に与える影響を解説
日本を取り巻く情勢が変化するに伴い、国の財源を防衛費などに費やす必要が生じています。
財源確保を目的とした付加税の導入も決定しており、その1つに挙げられるのが防衛特別法人税です。
しかし、「防衛特別法人税とは、どのような税金なのか」や「自社にはどれくらいの影響があるのか」など不安が大きい方も多いでしょう。
この記事では、防衛特別法人税について、課税対象者や導入の背景を踏まえながら解説します。
防衛特別法人税の計算例や企業に与える影響もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
防衛特別法人税とは
防衛特別法人税とは、防衛財源を確保するため新たに創設される付加税のことです。
令和7年度税制改正の大綱によると、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることになっています。
ここでは防衛特別法人税について、以下の2つを紹介します。
- 付加税率
- 対象となる法人種別
それぞれ詳しく見ていきましょう。
付加税率
防衛特別法人税の付加税率は4%で、課税標準法人税額(課税標準)に乗じて計算します。
つまり、通常の法人税とは異なり、所得に応じて算出されるわけではありません。
付加税率4%の詳細は、以下の通りです。
×4%(防衛特別法人税)=23.2%(法人税)×4%≒1% |
つまり、防衛特別法人税の付加税率は4%ですが、実質的には約1%の増税ということです。
また、基準法人税額から500万円を控除した金額が、防衛特別法人税の対象となります。
法人税率の負担増加についてより詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】法人税率はいつから・どれくらい上がる?増税が進む理由や節税対策も解説
対象となる法人種別
対象となる納税義務者は、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人です。
その法人には、人格のない社団等および法人課税信託の引き受けを行う個人も含まれます。
上述したように控除金額が500万円となっているため、法人税額が下回っている場合には対象ではありません。
具体的に影響がある企業については次項で解説するので、ぜひ参考にしてください。
【計算例付き】防衛特別法人税の影響がある企業とは
防衛特別法人税における影響の有無は、所得金額によって異なります。
課税有無のボーダーになるのは、所得2,400万円前後です。
ここでは防衛特別法人税の影響について、以下の3点をもとに解説します。
- 基本的な法人税率
- 計算式
- 税額シミュレーション
それぞれ詳しく見ていきましょう。
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基本的な法人税率
防衛特別法人税を計算するためには、まず通常の法人税を算出します。
開始事業年度が2022年4月1日以後である最新の法人税率は、下表の通りです。
区分 | 法人税率 | |||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | |||
年800万円超の部分 | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.20% | |||
協同組合等 | 年800万円以下の部分 | 15% | ||
年800万円超の部分 | 19% | |||
公益法人等 | 公益社団法人、公益財団法人または非営利型法人 | 収益事業から生じた所得 | 年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.20% | |||
公益法人等とみなされているもの | 年800万円以下の部分 | 15% | ||
年800万円超の部分 | 23.20% | |||
上記以外の公益法人等 | 年800万円以下の部分 | 15% | ||
年800万円超の部分 | 19% | |||
人格のない社団等 | 年800万円以下の部分 | 15% | ||
年800万円超の部分 | 23.20% | |||
特定の医療法人 | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% | |
適用除外事業者 | 19% | |||
年800万円超の部分 | 19% |
※一部例外もあるため、詳細については国税庁のホームページで確認してください。
上表から法人の種類によって、法人税率は異なることがわかります。
また、ほとんどの法人において、所得800万円が法人税率を大きく左右するラインとなっているのも特徴です。
次項では上表の法人税率をもとに法人税と防衛特別法人税の計算式を解説するので、あわせてチェックしてください。
引用:国税庁|法人税の税率
計算式
法人税の計算式は、以下の通りです。
法人税={課税所得×法人税率}-税額控除 |
防衛特別法人税の計算式は、以下の通りです。
防衛特別法人税={基準法人税額-500万円(基礎控除額)}×4%(防衛特別法人税率) |
基準法人税額とは、所得税額控除や外国税額控除などを適用していない法人税額になります。
そのため、上記の税額控除を適用した法人税とは金額が異なる場合もあります。
続いて計算式を用いた税額シミュレーションを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
税額シミュレーション
まず、普通法人の資本金1億円以下で、課税所得2,400万円である企業における税額をシミュレーションします。
基準法人税額の試算は、以下の通りです。
{800万円×15%}+{1,600万円×23.20%}=120万円+371万2,000円=491万2,000円 |
基準法人税額が基礎控除額である500万円を下回っているため、防衛特別法人税を納める必要はありません。
続いて、普通法人の資本金1億円以下で、課税所得5,000万円である企業における税額をシミュレーションします。
基準法人税額の試算は、以下の通りです。
{800万円×15%}+{4,200万円×23.20%}=120万円+974万4,000円=1,094万4,000円 |
防衛特別法人税額の試算は、以下の通りです。
{1,094万4,000円-500万円}×4%=23万7,760円 |
試算の結果、防衛特別法人税として23万7,760円を納める必要があります。
防衛特別法人税額を把握したい場合には、上述した法人税率やシミュレーションを参考に試算してみましょう。
なお、弊社では高税率の日本でも資産を形成するためのノウハウを、「100億円資産形成倶楽部」で発信しています。
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防衛特別法人税の創設が決定した背景
防衛特別法人税の創設が決定した背景として挙げられるのは、以下の2つです。
- 海外情勢の悪化
- 財政のひっ迫
それぞれ詳しく見ていきましょう。
背景①:海外情勢の悪化
近年は、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮による弾道ミサイル発射など、海外情勢の悪化が懸念されています。
日本を取り巻く安全保障環境が変化しているため、その対応には防衛力の強化が急務です。
日本国民の安全保障として、防衛費の財源確保に向けた増税が必要になっているのです。
背景②:財政のひっ迫
日本では高齢化が社会問題になっており、社会保障給付受給者が増加しています。
結果として社会保障支出の拡大にも影響しており、財政をひっ迫している状況です。
日本の厳しい財政状況を考慮すると、増税によって財源を調達する必要はやむをえないといえるでしょう。
防衛特別法人税を創設するまでの経緯
防衛特別法人税を創設するまでの経緯は、下表の通りです。
2022年12月 | ・国家安全保障戦略の策定 ・国家防衛戦略の策定 ・防衛力整備計画の策定 ・防衛費増額の方針を決定 |
2022年12月 | ・令和5年度税制改正大綱を閣議決定 ・法人税、所得税、たばこ税の税制措置を決定 |
2023年12月 | ・令和6年度税制改正大綱を閣議決定 ・令和5年度税制改正大綱により検討を加え、適当な時期に必要な法制上の措置を講ずる趣旨を明示 |
2024年12月 | 所得税について増税開始時期の決定を先送り |
2024年12月 | ・令和7年度税制改正大綱を閣議決定 ・防衛特別法人税として法人税額に4%の付加税を課すことを決定 ・2026年4月1日から適用 |
防衛特別法人税はいきなり導入されたのではなく、段階を踏んで創設に至っていると理解しておきましょう。
引用:
・財務省|令和5年度税制改正の大綱の概要
・財務省|令和6年度税制改正の大綱の概要
・財務省|令和7年度税制改正の大綱の概要
防衛特別法人税が企業に与える影響
税負担増加という直接的なもの以外にも、防衛特別法人税が企業に与える影響は以下の3つがあります。
- 資金計画の見直しが必要になる
- 競争力が低下し得る
- 税効果会計における実効税率の算出方法が変わる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
なお、法人税の引き上げによるメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、下記の記事もチェックしてください。
【関連記事】法人税の引き上げはデメリットだらけ?実効税率の国際比較や節税対策も解説
影響①:資金計画の見直しが必要になる
税負担が増加するということは、これまでの資金計画とは必然的に差異が生じます。
防衛特別法人税の負担増は実質1%と決して大きな数値ではありませんが、コストや投資計画などを見直すことが重要です。
また、現在は防衛特別法人税の対象ではないものの、将来的に所得の増加によって納税が必要になる可能性もあります。
自社の状況や資金計画については、定期的に見直すようにしましょう。
影響②:競争力が低下し得る
税負担の増加によって製品やサービスへの価格転嫁が起こると、海外企業との競争力低下が懸念されています。
単純に負担が大きくなるため、企業としては経営状況が苦しくなる一方です。
開発や設備投資へ資金が回せず、製品・サービスの質を下げてしまう可能性もあります。
防衛特別法人税の導入は決定事項のため、増税にも左右されない企業経営を目指しましょう。
影響③:税効果会計における実効税率の算出方法が変わる
新たに防衛特別法人税が加わることで、税効果会計における実効税率の算出方法が変更されます。
税効果会計とは企業会計と税務会計のずれを調整し、正確な損益を計上する手続きのことです。
また、繰延税金資産や繰延税金負債を計算する際に利用されるのが、実効税率となります。
防衛特別法人税の導入に対応した、実効税率の算出方法は以下の通りです。
法定実効税率={法人税率×(1+地方法人税率+住民税率+防衛特別法人税率)+法人事業税率+特別法人事業税率}÷{1+法人事業税率+特別法人事業税率} |
税効果会計が必要となる企業は、防衛特別法人税による変更点を必ず確認しましょう。
防衛特別法人税とともに増税が予定されている税金
防衛特別法人税とともに増税が予定されている税金は、以下の2つです。
- たばこ税
- 防衛特別所得税
なお、増税策の1つである金融所得課税はすでに適用されています。
金融所得課税の詳細や節税対策について知りたい方は、下記の記事もご参照ください。
【関連記事】金融所得課税の強化とは?推進されている理由や節税対策のポイントを解説
税金①:たばこ税
たばこ税としては、まず加熱式タイプの税率を2026年4月・10月に引き上げ、紙巻きタイプとの税負担差を解消します。
その後、加熱式・紙巻きたばこ双方の税率を、以下に挙げる3段階で引き上げる予定です。
- 2027年4月:1本あたり0.5円
- 2028年4月:1本あたり0.5円
- 2029年4月:1本あたり0.5円
1箱20本で換算した場合には、3年間で30円の増税になります。
税金②:防衛特別所得税
防衛特別所得税の導入は現在見送られており、2027年1月の実施を検討している段階です。
付加税率は、所得税額に1%を上乗せする案で進められています。
防衛特別所得税の導入による負担を軽減するため、あわせて復興特別所得税の引き下げも検討されています。
防衛特別所得税については、今後の動向を注視しましょう。
防衛特別法人税の適用前にもできる節税対策
防衛特別法人税の適用前にもできる節税対策は、以下の通りです。
- 役員報酬を増やす
- 経営者の旅費日当を支給する
- 接待交際費を支給する
- 不良在庫を処分する
- 福利厚生を充実させる
- 経営者の自家用車を社用車に転用する
- 中小企業倒産防止共済制度に加入する
- 未払金・買掛金の計上漏れを防ぐ
- 貸倒処理を行う
- 繰越欠損金を利用する
経費を計上する際や決算時の対策によって、法人税を節税できます。
節税対策は多岐にわたっているため、自社でできるものがないか漏れなく確認することが大切です。
法人税における節税対策の詳細について知りたい方は、下記の記事もチェックしましょう。
【関連記事】【増税前に】法人税の節税対策13選|経費計上・決算で使える方法を解説
防衛特別法人税の節税対策には不動産投資もおすすめ
防衛特別法人税の節税対策としては、不動産投資もおすすめの方法になります。
不動産を運用するにあたり、さまざまな費用を経費として計上できるためです。
不動産運用で経費として計上できるのは、以下の費用が挙げられます。
- 保険料(火災保険など)
- 租税公課(固定資産税)
- 管理会社への業務委託料
- 減価償却費
- 修繕費
- ローン金利
- 司法書士への報酬 など
ただし物件などの条件次第で節税効果は異なるため、最適な方法で行うには専門家への相談も検討しましょう。
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まとめ:防衛特別法人税は長期間継続される可能性あり
日本の財政状況や海外情勢を考慮すると、今後も防衛特別法人税は継続される可能性があります。
税負担を少しでも抑えるためにも、自社で取り入れられる節税対策は積極的に行いましょう。
なお、弊社では日本独自の節税対策や不動産投資による資産形成のサポートを実施しています。
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