【不動産特化】法人の節税対策5選!法人化すべき人の特徴や相談先も解説

【不動産特化】法人の節税対策5選!法人化すべき人の特徴や相談先も解説

「法人税は何となく知っているものの、しっかり理解を深めて節税につなげたい」と考える方も多いでしょう。

大きな節税効果を狙うのであれば、マンション投資を始めるなど不動産を活用するのがおすすめです。

また、一定の収益を得ている不動産所有者が法人化することで、多くのメリットを得られます。

ただし、法人税や法人化に関して認識が甘いと、ミスマッチや後悔を感じる可能性があるので注意が必要です。

このでは、不動産に特化した法人の節税対策について解説します。

不動産所有者が法人化すると節税対策になる理由も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

 

法人税の基礎知識

節税対策をチェックする前に、法人税の基礎知識として以下の2つを解説します。

  1. 法人税とは
  2. 節税対策が必要な理由

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

法人税とは

法人税とは、企業活動によって得られた所得に対して課税される税金で、所得金額に原則23.2%の税率をかけて算出します。

法人の所得は益金から損金を引いた金額であり、益金と損金の例は以下の通りです。

  • 益金:商品などの販売による売上収入・土地や建物の売却収入など
  • 損金:売上原価・販売費・災害による損失など

課税対象になる法人は、下表の通りとなります。

区分 法人例 課税所得の範囲
公共法人 地方公共団体・日本放送協会など 納税義務なし
公益法人など 社会医療法人・学校法人など 収益事業の所得に課税
人格のない社団など PTA・同業者団体など 収益事業の所得に課税
協同組合など 農業協同組合・漁業協同組合など 全所得に対して課税
普通法人 株式会社・合同会社など 全所得に対して課税

普通法人における法人税の税率は、下表の通りです。

普通法人の区分 年800万円以下の部分 年800万円超の部分
資本金1億円以下の法人など 15% 23.4%
上記以外の法人 23.4% 23.4%

法人税の納付期限は事業年度終了日の翌日から2月以内とされており、ダイレクト納付やクレジットカード納付などさまざまな方法で納められます。

また、法人の利益に課税される代表的な税金を「法人税等」として一括りにする場合があり、内訳は以下の通りです。

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税

上記の税金をトータルして法人の所得に対する税額を把握するには、所得金額に応じてそれぞれの税率をかける必要があり、簡単には算出できません。

大まかな金額を知りたい場合には、法人の実質的な所得税負担率である「実効税率」を利用するのがおすすめです。

実効税率は30〜33%とされており、課税所得に実効税率をかけると、法人の所得にかかる税金を素早く確認できます。

引用元:
財務省|法人課税に関する基本的な資料
国税庁|No.5759法人税の税率
国税庁|2 法人税の基本的な仕組み
国税庁|主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日
国税庁|G-2国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)

 

節税対策が必要な理由

節税対策が必要となる主な理由は、「手元に資金を残して事業を安定的に継続するため」です。

少しでも多くの資金を事業に当てることで事業の拡大や新しい分野への投資が可能となり、スピーディーな企業成長につながるでしょう。

法人は個人とは異なり所得金額も高く、節税対策が与えるプラスの影響も大きなものになります。

特に資金繰りに厳しい法人は、税金の負担も経営に大きな影響を与えるので、日頃から節税に取り組むことが重要です。

また、税務署は効果的な節税の方法などは教えてくれないため、ただ経営をしているだけでは節税につながりません。

ただし、度を超えた節税は経営を悪化させる可能性があり、正しい知識を身につけて法人税を節税してください。

 

法人における節税対策の方向性

法人における節税対策の方向性は、下表の通りです。

方向性 内容 具体策
維持・強化のための対策 現状の資産の見直しや処分を実施する ・不良在庫の処分
・不要な固定資産の処分
・含み損のある有価証券の売却など
投資的な対策 将来的に利益を生み出す分野へ投資する ・設備投資
・従業員の賃上げ
・短期間で減価償却できる中古資産の購入など
税制を利用した対策 税制上で控除や経費にできる項目を見直す ・出張旅費の規定を作成
・資本金額の見直し
・役員報酬を損金計上など

「維持・強化のための対策」や「税制を利用した対策」は、不良在庫を減らしたり、出張旅費の規定を作成したりするなど、現状の見直しで比較的簡単に節税できます。

「新たな物品を購入する余裕がない」といった場合には、現在の資産や経費を見直すところから始めましょう。

「投資的な対策」に取り組めば、発生した経費を計上して節税できるのはもちろん、将来の事業拡大や利益増大につながります。

また、効率良く節税したい方は、不動産を活用して取り組むのもおすすめです。不動産を用いた節税対策については次章で詳しく解説します。

 

【不動産編】法人の節税対策5選

不動産を活用した法人の節税対策として、以下の5つを紹介します。

  1. 経営者や従業員の自宅を社宅扱いにする
  2. 不動産投資を始める
  3. 建物の購入は借入金で対応する
  4. 資産計上を細分化する
  5. 売却損は繰越控除を適用する

自社の状況と照らし合わせながらチェックして、有効な対策を見つけてください。

 

節税対策①:経営者や従業員の自宅を社宅扱いにする

経営者や従業員の自宅を社宅扱いにすると、会社が支払った家賃と入居者から集めた賃料の差額を経費として計上できるので節税につながります。

社宅の種類は、企業が所有する「社有社宅」と不動産から借りている「借り上げ社宅」の2種類です。

社宅制度があると人材を募集する際にも好印象になるため、優秀な人材が集まりやすいのもメリットだといえます。

社宅扱いにする場合には、以下の点に注意しましょう。

  • 法人名義で物件を契約する
  • 入居者が50%以上の家賃を負担する
  • 社宅規定を作成する
  • 豪華な社宅は認められない場合がある

経営者や従業員の入居者が負担する家賃が安過ぎたり、無料だったりすると、「現物支給」として課税対象となるため、気をつけてください。

また、社宅に似ている福利厚生に「住宅手当」がありますが、住宅手当は給与扱いになることから所得税などが発生します。

住宅手当は従業員側からすると所得税が、会社側からすると社会保険料の負担が増えることにつながるので、節税するのであれば社宅の活用がおすすめです。

 

節税対策②:不動産投資を始める

不動産投資を始めると、土地と建物の購入費用や取得・運用に関わる必要を経費計上でき、節税効果を得られます。

建物部分の購入費用は法定耐用年数に沿って減価償却し、複数年にわたって経費にできるのが特徴です。

また、不動産運用に関わる多くの費用が経費として認められるのも魅力で、以下の種類があります。

  • 保険料(火災保険など)
  • 租税公課(固定資産税)
  • 管理会社への業務委託料
  • 減価償却費
  • 修繕費
  • ローン金利
  • 司法書士への報酬など

将来的に家賃収入や売買差益を得られる可能性もあるので、投資的な節税としても有効です。

さらに、不動産投資は融資を受けられることから、少ない自己資金でもスタートできます。

不動産投資による節税は物件などの条件により効果が異なります。節税を目的とした投資をする際は専門家のサポートを受けながら行いましょう。

不動産投資について理解を深めたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】不動産投資とは?種類やメリット・初期費用の目安などをご紹介

 

節税対策③:建物の購入は借入金で対応する

建物の購入を借入金で対応すると、節税面では以下のメリットがあります。

  • 減価償却によって長期的に経費計上できる
  • 「任意償却」によって耐用年数期間内ならいつでも償却できる
  • 追加融資を受けて次の投資を展開しやすい

法定耐用年数に沿って費用を配分できる「減価償却」の会計処理ができるため、購入年以降も経費として計上できます。

例えば、木造であれば最大24年、鉄骨鉄筋コンクリート造であれば最大50年の期間で費用を分割でき、長期的な節税が可能です。

また、法人は個人とは異なり、耐用年数期間内ならいつでも償却できる「任意償却」が認められており、収支の状況に合わせて調整できます。

ただし、過度な任意償却は粉飾決算と認められる場合があるため、注意しましょう。

法人は会計処理のルールが明確で厳格なので、金融機関からの信用度も高まりやすく、新たな融資を受けて投資を拡大できます。

不動産の減価償却で節税対策をしたい方は、国内の築古戸建てを活用した中古再生:ズバッと節税ズバッと償却をご覧ください。

引用元:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表

 

節税対策④:資産計上を細分化する

建物を購入したり、工事・修繕を実施したりした場合には、資産計上を細分化することで節税効果を得られる可能性があります。

法定耐用年数が長い資産と短い資産を一括の期間で減価償却するよりも、各資産の期間に合わせて償却するほうが1年の経費計上額を増やすことが可能です。

例えば、事務所の内装工事をしたケースでシミュレーションをしてみましょう。前提条件は、以下の通りです。

  • 建物:500万円
  • 建物附属設備:150万円
  • 器具備品:50万円

まず、建物として一括で経費計上した場合は、以下の通りとなります。

種類 取得価額 耐用年数 減価償却費(1年)
建物 700万円 50年 14万円
合計 700万円 14万円

次に、資産の種類に合わせて減価償却した場合は、以下の通りです。

種類 取得価額 耐用年数 減価償却費(1年)
建物 500万円 50年 10万円
建物附属設備 150万円 15年 10万円
器具備品 50万円 8年 6.25万円
合計 700万円 26.25万円

全体の取得価額は変わらないものの、法定耐用年数の短い資産を償却している間は1年間の計上額が増えて節税につながります。

ただし、固定資産によっては複数の資産を一体と見なして細分化できない場合があるので、注意しましょう。

 

節税対策⑤:繰越控除を有効活用する

不動産で売却損が発生した場合には繰越控除を利用できるケースがあり、売却年以降も節税効果を得られます。

ただし、繰越控除は各事業年度の所得金額がトータルでマイナスの場合に使えることから、不動産の売却損を含めて事業年度全体で赤字の場合に利用可能です。

青色申告の場合には、10年間という長期の繰越控除が認められており、長期的に節税できるのもメリットだといえます。

繰越控除の限度額は、以下の通りです。

  • 資本金1億円以下の中小企業など:全額
  • 大企業(2018年4月1日以降を開始事業年度とする場合):繰越控除前の所得金額の50%

収支全体のバランスを踏まえて、繰越控除を上手に活用しましょう。

引用元:
財務省|欠損金繰越控除制度の概要
国税庁|No.5762青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

 

不動産所有者が法人化すると節税対策になる3つの理由

不動産所有者が法人化すると節税対策になる理由は、以下の3つです。

  1. 個人の所得を圧縮できる
  2. 欠損金を繰越控除できる期間が長くなる
  3. 従業員の退職金を損金計上できる

1つでも役立つ要素があると感じたら、法人化を検討してみましょう。

資産管理会社を設立するメリット・デメリットや手順を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】資産管理会社とは?運営するメリット・デメリットから設立方法まで解説

 

理由①:個人の所得を圧縮できる

法人化して役員報酬として収入を得ると、給与所得控除が適用されるため、個人事業主の場合よりも所得を圧縮できる可能性があります。

給与所得控除は金額によって異なり、下表の通りです。

給与などの収入金額 控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001〜1,800,000円 収入金額×40%−100,000円
1,800,001〜3,600,000円 収入金額×30%+80,000円
3,600,001〜6,600,000円 収入金額×20%+440,000円
6,600,001〜8,500,000円 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

例えば、役員報酬として1,000万円支払った場合には、195万円が控除されます。

「給与所得控除」と聞くと従業員の給与に適用されるイメージがありますが、役員報酬も控除を受けられるので積極的に活用しましょう。

引用元:国税庁|No.1410給与所得控除

 

理由②:欠損金を繰越控除できる期間が長くなる

欠損金の繰越控除は個人で3年間、法人で10年間(一部の事業年度では9年間)とされており、より長期的に繰越控除を利用できます。

翌年以降の黒字分から欠損金を差し引くシステムなので、黒字が出ないと節税効果が得られず、期間が長く設定されている法人のほうが使用できる可能性が高く有利です。

ただし、欠損金を繰越控除する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 最も古い年度の欠損金から利用する必要がある
  • 繰越控除は好きなタイミングでは利用できない
  • 節税目的の合併による繰越控除は認められない場合がある

繰越控除は次回の黒字から利用することになっており、好きなタイミングで適用できないため気をつけましょう。

 

理由③:退職金を損金計上できる

法人化すると退職金を損金計上できるので、課税所得を減らせるのがメリットです。

個人の場合にも従業員の給料やボーナスを経費として処理できるケースがありますが、退職金は経費計上できません。

また、従業員はもちろん役員が退職した場合にも退職金は損金に算入できるのも嬉しいポイントです。

退職金は社会保険料や労働保険料の課税対象外なので、税負担も軽く済みます。

退職金制度があると従業員としても安心して仕事に取り組め、人材募集の際にも有利に進められるでしょう。

 

節税対策として法人化すべき不動産所有者とは

節税対策として法人化すべき不動産所有者について、以下の観点から解説します。

  • 法人化すべき事業利益のライン
  • 法人化による節税シミュレーション

「法人化するか迷っている」という方は、ぜひ参考にしてください。

 

法人化すべき事業利益のライン

法人化すべき事業利益のラインは、所得税の税率が大幅に変化する800万〜1,000万円です。

まず、個人の課税所得800〜900万円前後の所得税の税率変化を、下表でチェックしてみましょう。

課税される所得金額 税率
6,950,000〜8,999,000円 23%
9,000,000〜17,999,000円 33%

続いて、普通法人における法人税の税率は、下表の通りです。

普通法人の区分 年800万円以下の部分 年800万円超の部分
資本金1億円以下の法人など 15% 23.4%
上記以外の法人 23.4% 23.4%

課税所得が900万円以上となった場合には、個人では33%課税されるのに対して、法人では15〜23.4%で済むため節税効果を得られる可能性があります。

また、個人の所得は金額がアップすると税金も上がる「累進課税」を採用しており、将来的に利益増大の見込みがあれば法人化するのがおすすめです。

サラリーマンの所得税の節税について気になる方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】所得税は節税できる?サラリーマンでもできる節税方法9選を紹介!

引用元:国税庁|No.2260所得税の税率

 

法人化による節税シミュレーション

課税所得1,000万円のケースで法人化による節税シミュレーションを、以下の条件で計算してみましょう。

  • 所得税率:国税庁の税率と控除に準ずる
  • 復興特別所得税:所得税額の2.1%
  • 住民税:10%
  • 個人事業税:5%

上記の前提条件に基づいて計算すると法人のほうが個人よりも100万円程度節税することが可能で、詳細は以下の通りです。

個人 法人(役員報酬)
給与所得控除 195万円
基礎控除 48万円 48万円
控除後の所得 952万円
1,000万円−48万円
757万円
1,000万円−(195万円+48万円)
所得税 160.56万円
952万円×0.33−153.6万円
110.51万円
757万円×0.23−63.6万円
復興特別所得税 約3.37万円 約2.32万円
住民税 95.2万円
952万円×0.1%
75.7万円
757万円×0.1%
個人事業税 33.1万円
952万円−290万円×0.05
合計税額 約292.23万円 約188.44万円

控除後の所得に対して所得税や住民税が課税されることから、給与所得控除の影響が大きいことが分かります。

ただし、扶養の有無など利用できる控除によって所得税は変化するため、より詳細なシミュレーションは専門家に相談してください。

 

法人の節税対策は税理士への相談がおすすめ

法人の節税対策は税金のプロである税理士へ相談すると、スムーズに解決できます。

税理士へ相談するメリット・デメリットは、下表の通りです。

メリット デメリット
・売却や相続について相談できる
・確定申告などの手続きをサポートしてもらえる
・税務調査に強くなる
・丸投げすると知識は身につけられない
・相談料がかかる

業界独自の課税・非課税制度が設けられている可能性があり、不動産投資の企業について精通している税理士を見つけましょう。

税理士の費用相場や選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】不動産投資の専門税理士へ依頼するメリットとは?費用相場や選び方も解説

 

まとめ:法人の節税対策は多種多様

法人税とは、企業活動によって得られた所得に課税される税金で、税率は15〜23.4%です。

手元に資金を残して事業に活用していくためにも、法人の節税対策は欠かせません。

さまざまな節税方法がありますが、経営者や従業員の自宅を社宅扱いにしたり、不動産投資を始めたりするなど、不動産を活用するのがおすすめです。

また、個人事業主では所得税の税率が大幅に変化する課税所得800万〜1,000万円のタイミングで、法人化を検討してみましょう。

有利な節税方法を知りたい方は、不動産運用のノウハウが学べる100億円資産形成倶楽部をご覧ください。

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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。