アパート経営を法人化するメリット・デメリットやタイミングを解説

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アパート経営の家賃収入が一定値を超える場合、個人よりも法人のメリットが上回ります。

法人化することで様々な権利が付与され、法律を活用した運用が行えるため、アパート経営が有利に働くケースも珍しくありません。

本記事では、アパート経営を法人化するメリット・デメリットを紹介しています。

個人から法人に切り替える目安として活用してください。

 


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アパート経営における法人化とは?

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不動産の法人化とは、最初に法人会社を設立し、物件の所有権を個人から会社に移すことを指します。

アパート経営で得た収益は会社の収入となり、給与という形で収益を得る部分が特徴です。

税率が有利になるケースも多く、おもに3つのメリットが生まれます。

① 節税効果
② 財産の分散化
③ 経費項目の増加

個人の所得税は収入額によって増加するため、法人化することで節税効果を生み出すことが可能です。

アパート経営で法人化するタイミング

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個人の総所得が900万円を超える場合、約8%ほどの節税に繋がります。

国税庁が公表している所得税率を参考にすると、総所得900万円以上の税率は最低でも33%。さらに、収入が増えるごとに税率も上昇します。

※課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 194万9,000円まで 5% 0円
195万円 から 329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円 から 6,94万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円 から 8,99万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円 から 17,99万9,000円まで 33% 1,53万6,000円
1,800万円 から 39,99万9,000円まで 40% 2,79万6,000円
4,000万円 以上 45% 4,79万6,000円

引用元:国税庁 所得税の税率

※1,000円未満の端数金額は切り捨て

個人でアパート経営を行う場合、所得に関わらず住民税として10%加算され、合計43%が税金として支払われる計算です。

法人の場合、資本金(会社設立時の出資費用)が1億円以下ならば、税率は約35%前後になります。

事業所となる場所や売上によって税率は変動するため、詳しい税区分は行政HPを参考にしてください。

法人税→国税庁

法人事業税・法人都民税→東京都主税局

アパート経営における法人化のメリット

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アパート経営を法人化するメリットは3つです。

① 税区分の変更による節税効果
② 資産価値の分散化
③ 社会的信用による経費区分の増加

具体的な例を交えながら、それぞれのメリットを解説します。

メリット①:相続税の節税

通常、資産を親族に渡す場合、贈与税もしくは相続税が発生します。

税の名称 課税条件
贈与税 生前に財産が授与される
相続税 持ち主が亡くなって相続される

しかし、法人会社を通して給与を支払うことで、課税対象から除外しつつ財産授与が可能です。

あらかじめ資産を分散化し、非課税で給与させることで、相続税の節税に繋がります。

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メリット②:相続がしやすい

アパート経営は長期的に安定した収入が見込めるため、非相続人の負担も少なくなります。

負荷の高いアパート管理作業を業務委託することで、実務経験が乏しい状態からでも経験を積みながら経営できるといえるでしょう。

メリット③:所得税の節税

アパート経営を法人化した場合、総所得が増えるほど節税効果が高くなります。

物件の所持数や利回りが高くなり収益が4,000万円を超えると、税率が約20%前後低くなるケースも。

また、赤字の繰り越し年数が、個人に比べて7年長い部分も魅力といえます。損失を黒字相殺すると節税効果が生まれるため、アパート経営の強い味方になってくれるでしょう。

メリット④:所得を移転できる

法人会社を設立した後、親族を会社役員に任命することで所得の移転が可能となります。

役員報酬として給与を支払えるため、税率を引き下げながら財産を分配できるのがメリットです。

親族への贈与は毎年110万円まで非課税ですが、超えてしまうと課税対象となるので注意しましょう。

メリット⑤:経費を増やしやすい

法人化することで社会的信用を得られるため、個人に比べて経費計上の項目が増加します。

・アパートの修繕費
・各種保険料
・業務委託などの外注費

経費は会社の支出とみなされ、黒字部分と相殺させることで税率の引き下げが可能です。

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アパート経営における法人化のデメリット

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アパート経営の売上減少によって、個人経営よりも多く課税してしまうリスクも存在します。

法人化することで発生する税金も存在するため、経営の安定性と資金力に応じて検討しなければなりません。

本記事では、アパート経営における法人化のデメリットを3つ解説します。

デメリット①:相続税対策にならない場合がある

税率は総所得によって変動するため、収益によっては法人化が逆効果になる可能性も。

物件が時間経過によって経年劣化を繰り返すたび、収益性が低下することも考慮しなければなりません。

相続税を回避することはできても、結果的に負債を背負うリスクも含んでいることを考慮しましょう。

デメリット②:初期費用がかかる

法人会社を設立する際に初期費用がかかるため、まとまった資金が必要です。

・法人会社への出資金
・登記登録の手数料
・不動産取得税を始めとする税金

とくに出資金は法人会社の資本金であり、100万円前後が相場となっています。

資本金を抑えることも可能ですが、低資金だと判断されれば社会的な信用を落としかねません。

金融機関からの融資にも影響を与えるため、資金から惜しまずに捻出しましょう。

デメリット③:さまざまな手続きが必要となる

個人事業主は開業届を提出するだけで手続きが完了しますが、法人化の場合はそう上手くいきません。

法人化の手続きは必要書類が多く、公証役場で定款(会社のルール)の認証も必要です。

専門家によるサポートが必要不可欠になるため、税理士や司法書士に依頼しましょう。

アパート経営における法人化の手順

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アパート経営の法人化の手順はおもに4つです。

① 所有方式の決定
② 定款の作成
③ 登記登録
④ 書類提出

ここでは、それぞれの手順を解説します。

手順①:所有方式の決定

所有方式とは、不動産としての収入を得る方式です。本来、土地と建物のいずれかを選択しますが、アパート経営の場合は建物で確定となります。

手順②:定款の作成

定款(ていかん)とは、会社の規則です。

会社設立の基盤となる書類であり、記載項目は法律によって決められています。必ず必要となる記載事項が存在するため、忘れずに覚えておきましょう。

・商号
・本社所在地
・代表者の名前
・事業所の所在地
・会社の事業目的
・資本金額

書類フォーマットは決まっていますが、行政書士に依頼する形が一般的といえます。

手順③:登記

登記とは、法務省に対し会社概要を提示し、法人として認証をもらうことです。

法人登記することで会社として情報開示できるため、社会的な信頼につながります。

定款の書類と同様に、行政書士や司法書士に依頼しましょう。

手順④:書類提出・手続き

各種保険や法人口座の開設など、登記作業後にも手続きは残っています。

・法人用の印鑑作成
・資本金の払い込み
・社会保険への加入
・給与支払事務所の開設

個人事業主としてアパート経営していた場合、廃業届の提出も忘れてはいけません。

必要書類や手続き項目が複雑なため、会計士や税理士に相談しながら進めましょう。

アパート経営を法人化する際の注意点

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法人化は初期費用として100万円前後の資金が必要となるため、節税効果だけで判断してはいけません。

また、契約書の作成や認証の待機期間など、法人化するまでに時間がかかることも覚えておきましょう。

まとめ

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法人化は税金や経費面で有利になり、総所得が900万円を超えると節税効果が生まれます。

・税区分が変更され節税効果を生む
・経費計上できる項目が増える
・財産の生前分与が可能となる

売上に応じて節税効果が高まるため、アパート経営が安定したタイミングで税理士に相談しましょう。

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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。