【早見表付き】不動産投資で法人化すべきタイミング!判断基準や設立方法も

【早見表付き】不動産投資で法人化すべきタイミング!判断基準や設立方法も

不動産投資の法人化とは、資産の管理を個人から法人に切り替えることです。

不動産投資で所得が増えてくると、「そろそろ法人化した方が良い?」と疑問を持つ方も多いでしょう。

この記事では不動産投資で法人化すべきベストなタイミングについて、早見表付きで解説します。

法人化のメリット・デメリットや損得を判断する方法のほか、具体的な設立手順もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

※不動産投資による節税は、物件などの条件により効果が異なります。節税を目的とした投資をする際は、専門家のサポートを受けながら行いましょう。

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不動産投資の法人化とは

不動産投資の法人化とは、個人で管理していた資産を法人に切り替えることです。

具体的には、個人が代表としてプライベートカンパニーを設立し、不動産投資事業で得た利益を法人として管理する形になります。

一般的に法人は営利を目的としますが、不動産投資における法人化では状況が異なります。

不動産投資における法人化の目的は新たな事業を行うのではなく、あくまで個人の資産管理です。

これまでは、富裕層の節税対策として一般的だった資産管理会社ですが、近年では副業で不動産投資を行う会社員の税金対策としても広く浸透してきています。

税金対策のやり方やコツについて知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。

【関連記事】税金対策とは?サラリーマンや個人事業主でもできる対策方法を紹介!

 

不動産投資で法人化するメリット・デメリット

不動産投資で法人化する際に押さえたい基礎知識として、以下の2つを解説します。

  1. メリット
  2. デメリット

内容を把握して、法人化するかどうかの判断材料にしましょう。

なお、メリット・デメリットの詳細を知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】資産管理会社とは?運営するメリット・デメリットから設立方法まで解説

 

メリット

不動産投資で法人化するメリットは、以下の3つです。

  1. 節税効果がある
  2. 社会保険に加入できる
  3. 相続後も安定的な経営が期待できる

個人で資産を管理し続けるよりも、会社を設立して法人化した方が、不動産投資で得た収益で節税が行えたり、相続税の負担を軽減できたりする利点があります。

何より、個人の所得税率よりも法人の税率の方が低いため、資産管理会社を設立するだけでも一定の節税効果が期待できます。

また、設立した会社の役員になり給与を得ることで、厚生年金や健康保険などの社会保険に加入できる点もメリットです。

元々会社員として社会保険に加入している場合は関係ありませんが、個人事業主の方にとっては大きな魅力といえるでしょう。

なお、相続時に株式を分割する場合、相続人が複数人に増えることで経営権の確保が難しくなる場合があります。

しかし、設立した会社に自社株を移動しておけば、親族であっても換金に制限がかかるので、相続後も事業の経営を安定的に継続できるようになるでしょう。

マンション経営が相続税対策になる理由について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。

【関連記事】マンション経営は相続税対策になる?2つの節税方法や相続時の準備を解説

 

デメリット

不動産投資で法人化するデメリットは、以下の2つです。

  1. 金銭的・人的コストが増える
  2. 資産運用の自由度が下がる

会社を設立する際は、株式会社なら22万円程度、合同会社なら8万円程度の費用がかかります。

他にも、会社を維持するための法人所得税や税理士への報酬などの費用も加算されます。

経営していくためのランニングコストだけでなく、廃業時にもコストがかかる点を把握したうえで資産管理会社を設立することが重要です。

また、資産家個人と資産管理会社は資産管理の扱い方が異なり、個人が会社の資産を自由に運用することは通常許可されていません。

資産を移動する場合は、役員報酬や配当金を通じて行う必要があり、個人で管理するよりも自由度が下がります。

配当金や役員報酬として移動する際には、税金がかかる点にも気をつけましょう。

 

【早見表】不動産投資で法人化すべきタイミング

不動産投資で法人化すべきタイミングは、以下のとおりです。

不動産投資の取り組み方 法人化すべきタイミング
サラリーマン大家 年間給与所得:900万円超
専業大家 年間不動産所得:330万円超

サラリーマン大家では、年間給与所得が900万円を超えると所得税率が33%、住民税率を加えると43%になります。

同水準における法人税率23.2%を、約20%も上回ることになるため、節税するなら法人化した方が得策です。

また、専業大家で年間不動産所得が330万円を超える場合は、所得税と住民税の合計が30%になります。

こちらも、法人であれば15%〜23.2%のため、法人化した方が納税額を軽減できます。

上記のように、個人と法人の税率差に応じて法人化の要否を判断するようにしましょう。

 

不動産投資の法人化による損得を判断する方法

会社を設立する最大のメリットは節税のため、簡単に言えば「所得税額が法人税額を上回るとき」を目安に法人化を考えると良いでしょう。

ここでは、不動産投資の法人化による損得を判断する方法として、以下の2つを解説します。

  1. 簡単に判断する方法
  2. より詳細に計算したうえで判断する方法

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

簡単に判断する方法

簡単に判断する方法として、所得税と法人税を比較する方法があります。

【所得税の早見表(平成27年以後分)】

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

【普通法人の場合の法人税率(平成31年以後分)】

区分 適用関係(開始事業年度)
平28.4.1以後 平30.4.1以後 平31.4.1以後 令4.4.1以後
普通法人 資本金1億円以下の法人など 年800万円以下の部分 下記以外の法人 15% 15% 15% 15%
適用除外事業者 19% 19%
年800万円超の部分 23.40% 23.20% 23.20% 23.20%
上記以外の普通法人 23.40% 23.20% 23.20% 23.20%

上表から、法人税率よりも所得税率が上回る箇所を見つけましょう。

表を確認すると、課税される所得金額が900万円を超えたあたりから、23%から33%と大きく税率が上がります。

特にサラリーマン大家であれば、課税所得が900万円を超えたあたりから法人化することで税負担を減らせるでしょう。

引用元:
国税庁|No.2260所得税の税率
国税庁|No.5759法人税の税率

 

より詳細に計算したうえで判断する方法

より詳細に計算したうえで判断するには、以下の税金を加味する必要があります。

区分 税金
個人 ・所得税
・個人住民税
・個人事業税
法人 ・法人税
・法人事業税
・法人住民税

個人所得にかかる税金の税率は、下表の通りです。

【個人所得にかかる税金】

課税所得 所得税の計算 控除額 個人住民税率※ 個人事業税率
195万円未満 5% 10%
195万円~290万円未満 10% 9万7,500円
290万円~330万円未満
330万円~695万円未満 20% 42万7,500円 5%
695万円~900万円未満 23% 63万6,000円
900万円~1,800万円未満 33% 153万6,000円
1,800万円~4,000万円未満 40% 279万6,000円
1,800万円~4,000万円以上 45% 479万6,000円

※前年の所得によって課税される「所得割」のみで、定額で課税される「均等割」は考慮していません

不動産貸付業は、部屋数が10室を超えるなど規模が大きくなる場合、個人事業税が課されます。

なお、法人の総合的な税率は、実効税率から簡単に把握できます。

【中小法人の実効税率】

課税所得金額 実効税率
400万円以下 約21.36%
400万円〜800万円以下 約23.17%
800万円以上 約33.58%

では、課税所得が1,000万円の場合をシミュレーションしてみましょう。

個人所得にかかる税金は、以下の通りです。

【個人所得にかかる税金】

個人所得税額=(1,000万円×33%)−153万6,000円=176万4,000円
個人住民税=1,000万円×10%=100万円
個人事業税率=(1,000万円−290万円※)×5%=35万5,000円
合計=176万4,000円+100万円+35万5,000円=311万9,000円

※事業主控除

一方、法人になった場合にかかる税金は、以下のように算出できます。

【法人所得にかかる税金】

1,000万円×33.58%=335万8,000円

一見すると個人よりも税金が多く見えますが、法人所得は税額控除額を考慮していません。

より正確に計算して判断したい場合は、専門税理士へ相談すると良いでしょう。

不動産投資の相談先について知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】不動産投資の専門税理士へ依頼するメリットとは?費用相場や選び方も解説

 

不動産投資の法人化を急がくても良い2つのケース

不動産投資の法人化を急がなくても良いケースは、以下の2つです。

  1. 赤字経営かつ給与所得が年900万円超
  2. 専業かつ不動産所得が年330万円以下

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

ケース①:赤字経営かつ給与所得が年900万円超

赤字経営かつ給与所得が年900万円超の場合、損益通算によって所得と赤字を相殺して節税できるため、法人化を急ぐ必要はありません。

損益通算とは、赤字分を黒字分の所得から差し引ける仕組みのことを指します。

例えば、価格が5,000万円で耐用年数が5年の不動産を購入した場合、減価償却によって年1,000万円ずつ費用として計上することが可能です。

ここでは、以下の条件を想定して計算してみます。

  • 家賃収入600万円
  • 必要経費200万円
  • 減価償却1,000万円
年間赤字=家賃収入-必要経費-減価償却費
=600万円−200万円−1,000万円
=−600万円

つまり、給与所得が600万円であれば、赤字分で相殺すると課税所得は0円になります。

不動産の価格や耐用年数によって相殺額は変動しますが、損益通算によって譲渡所得を圧縮できるようになるので、法人化しない方が得策でしょう。

不動産の減価償却で給与所得を抑えたい方は、弊社の「中古再生:ズバッと節税ズバッと償却」をご覧ください。

マンションの減価償却について知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしましょう。

【関連記事】マンションの減価償却とは?必ず知っておくべき計算方法と確定申告の変更点

 

ケース②:専業かつ不動産所得が年330万円以下

専業かつ不動産所得が年330万円以下の場合も、法人化を急ぐ必要はありません。

不動産所得が330万円以下の場合、所得税率は20%、法人税率が15%と法人化する方が税率は低い傾向にあります。

しかし、法人化は以下のような追加コストがかかる分、税金以外の支出が増え、逆に手元に残るお金が減る可能性があります。

  • 司法書士費用
  • 税理士費用
  • 法人住民税

所得が330万円以下であれば法人化は不要であり、また、所得が195万円以下の場合は個人と法人の税率が同等となるため、法人化の検討は必要ないといえるでしょう。

 

【3ステップ】不動産投資で法人化する方法

不動産投資で法人化する方法は、以下の3ステップです。

  1. 設立準備を進める
  2. 定款(ていかん)の認証を受ける
  3. 記申請書類を法務局へ提出する

法人化する方がメリットが大きい場合は、流れに沿って手続きを進めてください。

 

ステップ①:設立準備を進める

会社設立時に決めておくべきことは、主に以下の事項です。

  • 社名
  • 事業目的
  • 資本金金額
  • 本店所在地
  • 発起人(出資者)
  • 各発起人の出資額
  • 発行可能株式総数
  • 設立時に発行する株式の数
  • 株式譲渡制限の有無
  • 公告方法
  • 事業年度
  • 設立時の取締役・代表取締役

また、契約書の押印として使用する代表者印や、領収書や請求書に押印する社印なども準備する必要があります。

印鑑の作成には、3日程度かかるため期間に余裕を持って作成しましょう。

 

ステップ②:定款(ていかん)の認証を受ける

ステップ①で取り決めた内容は、「定款(ていかん)」という文書にまとめます。

定款とは、会社の基本情報や規則などを記載した「会社のルールブック」です。

株式会社の場合、定款の作成後は、法令にのっとって作成された書類である旨を公証役場で証明を受けます。

一方、持分会社である合同会社や合資会社などの場合は、定款認証は不要です。

また、設立する法人種別によっては資本金が必要ですが、定款の認証前に払い込みしても問題ありません。

 

ステップ③:登記申請書類を法務局へ提出する

最後に、以下の書類をまとめて法務局へ提出します。

  • 登記申請書
  • 登録免許税の収入印紙を貼り付けた納付用台紙
  • 定款(紙または電子データ)
  • 発起人の決定書
  • 設立時取締役の就任承諾書
  • 設立時代表取締役の就任承諾書
  • 設立時取締役の印鑑証明書
  • 監査役の就任承諾書
  • 資本金の支払い証明書
  • 印鑑届出書
  • 「登記すべき事項」を記載した書類または保存したCD-R

印鑑届出書には、個人印と法人印の2種類の押印が必要です。

印鑑作成には3日程度の期間がかかるため、登記申請書類を準備する前に会社の印鑑を作成しておくとスムーズに手続きが進められます。

なお、登記申請は内容に不備がなければ、10日程度で完了します。

書類に不備があった場合のみ役所から連絡が届くため、上記日数が過ぎたら「無事に書類が通った」という認識で問題ありません。

 

不動産投資で法人化したあとに必要な手続き

不動産投資で法人化したあとに必要な手続きは、以下の2つです。

  1. 会社の口座開設
  2. 法人設立届出書の提出

それぞれ確認していきましょう。

 

手続き①:会社の口座開設

法人の設立後は、会社の口座を開設します。

個人の口座を開設する場合よりも審査基準が厳しく、完了するまでに時間がかかることも多いので、会社を設立したら早めに手続きを進めましょう。

口座開設に必要な書類は以下のとおりです。

  • 定款
  • 会社印
  • 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  • 代表者の印鑑証明書
  • 代表者の身分証明書
  • 会社概要がわかる書類

なお、口座開設に必要な書類などは金融機関によって異なる場合があるため、事前に金融機関のホームページで確認しておいてください。

 

手続き②:法人設立届出書の提出

会社設立後は、法人設立届出書を下表の機関に提出します。

機関名 期限
税務署 法人設立日から2か月以内
都道府県税事務所 各都道府県による
市区町村役場 各市区町村による

また、青色申告の承認申請書も忘れずに提出しましょう。

青色申告の承認申請書を提出するかどうかで、会社経営が大きく左右されるため、法人設立届出書と同時に手続きを進めてください。

 

まとめ:不動産投資で安定経営できているなら法人化の検討を

サラリーマン大家であれば、安定経営ができており、年間給与所得が900万円を超える場合に法人化を検討するのがおすすめです。

専業大家の場合は、年間不動産所得が330万円を超える場合であれば、法人化した方が税負担を軽減できます。

一方で、赤字経営かつ給与所得が900万円を超える場合や、専業かつ不動産所得が年330万円以下の方は法人化を急がなくても良いでしょう。

なお、効率良く不動産投資を進めたい方は、専門家から具体的なアドバイスを受けながら資産運用に取り組める100億円資産形成倶楽部のページをご覧ください。

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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。