マンションの減価償却とは?必ず知っておくべき計算方法と確定申告の変更点

マンションの減価償却とは何か、どのように計算するのか悩んでいませんか。

減価償却と言うと難しい言葉なので、敬遠する方もいることでしょう。

しかし減価償却を十分理解していないと、不要な所得税を払ってしまうことにもなりかねません。

したがってマンション経営では、減価償却や計算方法を十分理解しておくことは重要なことです。

そこでこの記事では減価償却の内容、マンションの耐用年数・減価償却の計算方法・ 2024年変更の確定申告ルールが減価償却に与える影響などについて解説します。



 

マンションの減価償却とは?

減価償却は、マンションを購入した場合利用される考え方で、資産の耐用年数にしたがって分割で経費計上する会計処理のことです。

資産の耐用年数は「法定耐用年数」と言い、法律により定められています。

不動産所得は、収入から経費を引いて計算するため経費が多いと、不動産所得が減少するため税金を少なくできる可能性があります。

マンションの購入費用で減価償却ができるのは、建物および設備についてだけで、土地の部分は年数が経っても価値は減らないため減価償却はできません。

したがって減価償却費の計算にあたっては、マンションの購入の際に建物部分の価格がいくらかかったのか、売買契約書等でしっかり確認しておくことが必要です。

また、マンションの減価償却費は、一括計上しないことで購入時だけでなく、翌年以降も利益を抑え節税できるメリットがあります。

高額なマンションを一括償却すると、翌年以降は経費計上する部分が少なくなるため、利益を上げることは難しくなります。

そのため耐用年数に応じて経費計上することにより、実際の経営に沿ったマンションの経営が可能です。

 

マンションの減価償却の耐用年数は何年?

減価償却の法定耐用年数とは、建物や設備などの資産が経済的に耐用できる期間のことで法律で定められています。

法定耐用年数は資産の種類によって異なりますが、マンションの法定耐用年数は「47年」です。

なお、建物の寿命を意味する言葉としては物や資産が技術的に耐用できる期間を示す耐久年数というものもあります。これは、一般的にメーカーや専門家の評価に基づいて決められます。

建物の構造別の法定耐用年数は次表の通りです。

 

建物の構造 法定耐用年数
鉄筋コンクリート造 47年
鉄骨鉄筋コンクリート
レンガ・ブロック造 38年
鉄骨造(重量鉄骨)4㎜超 34年
鉄骨造(軽量鉄骨) 3㎜超4㎜以下 27年
鉄骨造(軽量鉄骨) 3㎜以下 19年
木・合成樹脂 22年
木骨モルタル造 20年

引用元:大蔵省│昭和40年減価償却資産の耐用年数等に関する省令

 

マンションの減価償却の計算方法

減価償却の方法には、「定額法」と「定率法」の2つがあります。

  1. 定額法
  2. 定率法

それぞれについて解説します。

①定額法

定額法は、不動産の法定耐用年数の期間中、同じ金額を減価償却費として計上する方法です。

毎年同じ金額を償却するため、計算は容易といえるでしょう。

②定率法

一方、定率法は不動産の前年の減価償却費を引いた金額に償却率を乗じて計算する方法です。

年を経るにつれて償却できる金額は少なくなっていくため、経営の現状に即した償却法といえるでしょう。

1998年4月1日以降に取得した建物は定額法のみで、また2016年4月1日以降に取得した設備等の減価償却は定額法のみの計算になります。

したがって本稿では、定額法による計算方法について説明しましょう。

マンションの減価償却費は、物件の購入価格から減価償却の対象外となる土地部分を引いて計算します。

減価償却費の計算は次の式によって算出します。

定額法の減価償却費=取得価格×定額法の償却率

それでは次に具体的な計算方法について、新築マンションと中古マンションを分けて説明していきます。

 

 計算方法①:新築マンション

まずは、6,000万円の新築マンションを購入し、土地の価格が3,500万円・建物価格が2,000万円・設備の取得額が500万円とした時の償却費はいくらか計算します。

国税庁の減価償却資産の償却率等表によると、マンションの法定耐用年数は47年のため償却率は2.2%です。

また国税庁の主な減価償却資産の耐用年数表によると、一般的な設備の耐用年数は15年です。

従って償却率等表に当てはめると、償却率は6.7%であることがわかります。

定額法の減価償却費=取得価格×定額法の償却率のため、建物と設備を分けて計算します。

【建物の償却費の計算】

2,000万円×2.2%=44万円

【設備の減価償却費の計算】

500万円×6.7%=33.5万円

したがってマンション取得の1年目から15年目までは、

44万円+33.5万円=77.5万円

マンション取得の16年目から47年目までは、建物のみの価格になるため、償却費は44万円です。

引用元:国税庁|減価償却資産の償却率等表

引用元:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表

 

計算方法②:中古マンション

中古マンションの減価償却費は、まず耐用年数を次の式により算出する必要があります。

中古マンション購入時の耐用年数=(新築マンションの耐用年数-経過年数)+経過年数×20%

築15年の中古マンションを、建物価格1,500万円・設備価格100万円で取得したときの減価償却費を計算してみましょう。

【建物の耐用年数】

上の計算式に当てはめて計算すると建物の耐用年数は、

(47年-15年)+15年×20%=35年

【設備の耐用年数】

(15年-15年)+15年×20%=3年

これにより建物の耐用年数は35年、設備の耐用年数は3年であることがわかります。

次に前述の減価償却資産の償却率表から、耐用年数に対応する償却率をピックアップし、取得価格×償却率の式に当てはめて償却費を算出します。

【建物の償却費の計算】

1,500万円×2.9%(耐用年数35年の償却率)=43.5万円

【設備の減価償却費の計算】

100万円×33.4%(耐用年数3年の償却率)=33.4万円

したがってマンション取得の1年目から3年目までは、

43.5万円+33.4万円=76.9万円

マンション取得の4年目から34年目までは、建物価格のみ43.5万円が償却費です。

引用元:国税庁|償却率表

 

マンションの減価償却の対象について

減価償却は、建物だけでなく付帯設備等も対象になります。

付帯設備は、建物に含めて減価償却できますが、分けて計算することも可能です。

また、建物に含めて計算しても分けて計算しても、計上可能な金額は変わりません。

分けて計算すれば、年間に多額の償却費と計上できますが、償却期間は短くなります。

逆に建物に含めて計算すれば、年間で計上できる金額は少なくなりますが、長期間減価償却が可能になります。

減価償却の対象になる主な設備については以下の通りです。

 

構造・用途 細目 耐用年数
電気設備 蓄電池電源設備
その他
6年
15年
給排水・衛生設備、ガス設備 15年

引用元:国税庁│主な減価償却資産の耐用年数表より抜粋

 

【関連記事】不動産投資で経費に計上できる12項目 | 経費にできない3項目も紹介

 

マンションの減価償却にどう影響する?2024年変更の確定申告ルール

確定申告は、所得税や法人税などの税金を納付するために、所得や財産・経費などの情報を提出する手続きです。

確定申告の方法は、2022年の税制改正で「電子帳簿保存法」の見直しが行われました。

電子帳簿保存法とは、納税者の事務負担軽減の観点から、帳簿や取引先との書類・決算に関わる書類等をデータ保存するために定めた法律です。

2024年の確定申告からは、電子取引のデータ保存が義務づけられますが、2023年12月末日までは猶予期間です。

保存期間や保存形式・保存方法・保存場所などについては、法律等により規定される場合もあるため、的確に対応できるように準備しておく必要があります。

引用元:国税庁|電子帳簿保存法

 

まとめ:マンションの減価償却について

減価償却は、マンションの取得費を複数年に分割配分し、経費として計上します。

使用する資産の価値減少を長期にわたって経費計上できるため、マンションの経営状態を正確に把握し、管理する上で重要です。

2024年の確定申告からは、電子取引のデータ保存が義務づけられるため、あらかじめ電子帳簿法について学び準備しておきましょう。

オンラインセミナーも随時開催しておりますので、スケジュールについては弊社ホームページ
セミナー情報」よりご確認ください。


【関連記事】マンション経営のメリット・デメリットや失敗しないポイントを解説
【関連記事】マンション経営で節税する仕組みは?対象となる税金をわかりやすく解説
【関連記事】アパート経営の成功率を上げるコツや失敗しない方法などを解説

この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。