不動産の譲渡所得税とは?計算方法や特例を解説!シミュレーション例も

不動産の譲渡所得税とは?計算方法や特例を解説!シミュレーション例も

不動産は、売却時に譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は売却した価格・条件によって変動があり、不動産を売買する予定がある方は知っておくべき税金の1つです。

この記事では不動産の譲渡所得税とは何か、計算方法やシミュレーションとともに解説します。
控除の特例が適用されるケースや、譲渡時にかかる他の税金もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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不動産の譲渡所得税とは

譲渡所得税は、不動産売却時に発生した利益にかかる税金です。
不動産だけでなく、株式やゴルフ会員権といった資産を譲渡する際にもかかります。

基本的には、収入金額から取得費用・譲渡費用を引いた金額が課税対象の金額になります。
しかし、場合によっては特別控除が適用されるため注意が必要です。

次項で解説する計算方法をチェックし、大まかにでも自分で計算できるようにしておくと良いでしょう。

 

【5ステップ】不動産譲渡時にかかる所得税の計算方法

不動産譲渡時にかかる所得税の計算式は、下記の通りです。

課税譲渡所得金額
=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

課税譲渡所得金額が出たら、税率をかけて所得税を算出します。

譲渡所得税額
=課税譲渡所得金額×税率

ここでは、以下に挙げる5つのステップに分けて計算式を詳しく解説します。

  1. 収入金額の計算
  2. 取得費の算出
  3. 譲渡費用の計算
  4. 特別控除額の適用
  5. 譲渡所得税の算出

1つずつ確認し、適用される控除などを見落とさないようにしましょう。

引用:国税庁|令和5年No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

 

ステップ①:収入金額の計算

収入金額とは、売却の際に買主から受け取る金額(売却価格)です。

金や株式といった物や権利を譲渡する場合は、時価が収入金額となります。
受け取った際に経済的な利益が生じた場合には、その利益も収入金額に含まれるため注意が必要です。

譲渡する対象により計算方法が異なるため、本記事での計算は対象物を不動産とした場合で算出します。

 

ステップ②:取得費の算出

取得費のなかで大きな割合を占めるのが、売却する不動産の購入価格です。
その他で以下のような金額が取得費に含まれます。

  • 購入時に支払った仲介手数料
  • 購入時に収めた税金(印紙税・登録免許税・不動産取得税)
  • エアコンなど建物の設備として設置したものの費用
  • 増改築費用 など

計算式は、下記の通りです。

取得費
=購入価格-減価償却費

取得費の算出は土地と建物に分けて計算しますが、建物は減価償却分(経年劣化によって下がった価値)を差し引いて算出します。
減価償却費の計算式は、以下の通りです。

減価償却費
=購入価格×0.9×償却率×経過年数

減価償却は、事業用と非事業用とで償却率が異なるので注意してください。
例えば、非事業用の償却率は下表の通りです。

木造 木造モルタル RC造 軽量鉄骨造※
償却率 0.031 0.034 0.015 0.036/0.025

※軽量鉄骨造は骨格材の肉厚により償却率が異なります。

例として、以下のような条件で取得費を計算してみましょう。

  • 築年数30年
  • RC造
  • 購入価格5,000万円
5,000万円-(5,000万円×0.9×0.015×30)
=2,975万円

ご自身で保有している資産の減価償却について知見を深めたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】マンションの減価償却とは?必ず知っておくべき計算方法と確定申告の変更点

引用元:国税庁|令和5年No.3261 建物の取得費の計算

 

ステップ③:譲渡費用の計算

取得費が購入時にかかる費用に対し、譲渡費は売却時にかかる費用です。
主に下記にかかる料金が、譲渡費用に含まれます。

  • 売却時にかかる仲介手数料
  • 測量費や印紙代
  • 借家人に支払った立退料
  • 建物の取り壊し費用 など

取得費用と同様、売却時にかかった費用をきちんと把握しておきましょう。

 

ステップ④:特別控除額の適用

一定の条件を満たせば、特別控除が適用され納める税金が軽減されます。
譲渡所得税における主な特別控除は、下表の通りです。

特別控除の種類 控除金額
収用等により土地建物を譲渡した場合 5,000万円
マイホームを譲渡した場合 3,000万円
被相続人の空き家を譲渡した場合 3,000万円
平成21年~22年に取得した土地等を譲渡した場合 1,000万円
農地保有の合理化のために土地を売却した場合 800万円
低未利用土地等を譲渡した場合 100万円

なお、特別控除は特例ごとの譲渡利益が限度となり、譲渡利益の全体を通じて5,000万円が最大となります。
特別控除にもそれぞれ細かい条件があるため、注意が必要です。

特別控除の詳しい内容を知りたい方は、後述の「不動産の譲渡所得税で適用されうる主な特例」をご覧ください。

引用元:国税庁|令和5年No.3223 譲渡所得の特別控除の種類

 

ステップ⑤:譲渡所得税の算出

譲渡所得税は、譲渡所得課税金額に税率をかけて算出します。

税率は不動産の所有期間によって異なり、5年以内は短期譲渡所得として30%となります。
5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税率は15%です。
所有期間は、その年の1月1日時点での年数で算出します。

また、2037年までは所得税に対し2.1%の復興特別所得税がかかります。
不動産の譲渡所得税は、給与などの他の所得とは別で課税される分離課税制度が適用されているため、同じ税率で算出しないよう注意しましょう。

なお、日本では税金が高く、高所得者ほど多くの税金を納めています。
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引用元:
国税庁|令和5年No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
国税庁|令和5年No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

 

不動産を譲渡する際にかかる所得税の計算シミュレーション

不動産譲渡の際にかかる譲渡所得税について、以下の条件でシミュレーションしてみましょう。

譲渡価格 5,000万円
住宅の種類 RC造戸建て、マイホーム
譲渡費用 150万円(仲介手数料149万円、印紙税1万円)
購入価格 4,000万円
経過年数 3年

なお、譲渡対象の不動産によって算出方法がやや異なりますが、本記事では長期譲渡所得・短期譲渡所得に焦点をあてて算出します。
まずは、減価償却費の算出です。

減価償却費
=購入価格×0.9×償却率×経過年数
=5,000万円×0.9×0.015×3
=202.5万円

次に、取得費を求めます。

取得費
=購入価格-減価償却費
=4,000万円-202.5万円
=3797.5万円

続いて、課税譲渡所得金額の算出です。
なお、控除については後述しているため、ここでは省きます。

課税譲渡所得金額
=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
=5,000万円-(3797.5万円+150万円)
=1052.5万円

所有期間が3年であり、短期譲渡所得が適用されるため、税率は30%です。

譲渡所得税額
=課税譲渡所得金額×税率
=1052.5万円×30%
=315万7,500円

なお、同条件で所有年数が10年の場合、長期譲渡所得になり税率は15%になります。

譲渡所得税額=課税譲渡所得金額×税率
=1052.5万円×15%
=157万8,750円

所有期間が7年違うだけで、157万円の差がつきます。
長期譲渡所得は税率が低くなっているため、売却を検討している方は所有期間にも着目しましょう。

 

不動産の譲渡所得税で適用されうる主な特例

譲渡所得税で重要なのが、以下5つの特例控除です。

  1. 収用等により土地建物を譲渡した場合(5,000万円)
  2. マイホームを譲渡した場合(3,000万円)
  3. 被相続人の空き家を譲渡した場合(3,000万円)
  4. 平成21年~22年に取得した土地等を譲渡した場合(1,000万円)
  5. 低未利用土地等を譲渡した場合(100万円)

それぞれ条件に合致すれば、譲渡所得税の負担軽減になります。
しっかりと条件を理解し、ご自身に当てはまる特例があるか確認しましょう。

 

特例①:収用等により土地建物を譲渡した場合(5,000万円)

公共事業のために土地建物を譲渡した場合、5,000万円の控除が受けられます。
ただし、下記の要件をすべて満たす場合に限ります。

  • 売却した不動産が固定資産であること
  • 売却した資産と同じ種類の資産を買い替えること
  • 収用のあった前1年、後2年の間に買い替えること

この特例が適用された場合、「売却金額<買い替えた金額」のときは所得税の課税が次年度に繰り越され、売却した年は譲渡所得税が0になるのです。
「売却金額>買い替えた金額」の場合は、その差額を収入金額として譲渡所得税の金額を算出します。

引用元:国税庁|令和5年No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例

 

特例②:マイホームを譲渡した場合(3,000万円)

居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合は、最高3,000万円まで譲渡所得税の控除がされます。
要件はいくつかありますが、特に注意が必要なものは以下の3つです。

  1. 自分が住んでいた家屋、敷地や借地権なども売却すること
  2. 収用等の特例など、他の特例を受けていないこと
  3. 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと

また、マイホームに関する特例を受けていた場合、こちらの特例控除が適用できないこともあります。
ご自身が受けている控除の内容も把握しながら適用の可否を見極めましょう。

引用元:国税庁|令和5年No.3302 マイホームを売ったときの特例

 

特例③:被相続人の空き家を譲渡した場合(3,000万円)

相続によって取得した空き家を売却した場合、要件を満たせば3,000万円の控除がされる特例です。
対象となる空き家は、以下の要件を満たすものです。

  • 昭和56年5月1日以前に建築されたもの
  • 区分所有登記がされていない建物
  • 相続の開始直前に被相続人以外居住していない建物

なお、この特例は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売却することが条件となります。
空き家をリノベーションするメリット・デメリットについて知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】【事例付き】空き家のリノベ需要が増加中?使える補助金や成功のコツも解説

引用元:国税庁|令和5年No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

 

特例④:平成21年~22年に取得した土地等を譲渡した場合(1,000万円)

一定期間内に取得した土地を譲渡した場合、1,000万円の控除を受けられます。
土地だけではなく、借地権や区分所有マンションの敷地権も含まれます。
特例の適用を受ける要件は、以下の5つです。

  1. 平成21年1月1日から平成22年12月31日の間に土地を取得している
  2. 平成21年(22年)に取得した土地は平成27年(28年)以降に譲渡する
  3. 親子・夫婦など、特別な関係のものから取得した土地でない
  4. 相続や遺贈、リース取引などにより取得した土地でない
  5. 譲渡した土地に関して他の特例の適用を受けていない

なお、譲渡所得税の金額が1,000万円に満たない場合は、その譲渡所得税が控除金額になるので注意しましょう。

引用元:国税庁|令和5年No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除

 

特例⑤:低未利用土地等を譲渡した場合(100万円)

都市計画区域内にある低未利用土地を500万円もしくは800万円以下で売却した場合、譲渡所得税から100万円が控除されます。

低未利用土地とは居住用や事業用で利用しておらず、なおかつ近傍の土地に比べ利用価値が著しく劣っている土地です。

この特例は土地の所有が5年を超えることが必須要件であるため、特例を利用するための購入では適用されません。
また、市街化区域内であれば要件の金額も異なるため注意しましょう。

引用元:国税庁|令和5年No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除

 

不動産の譲渡時に売却損が生じると適用される特例

不動産の譲渡時に売却損が生じた場合、下記2つの特例が適用されます。

  1. 損益通算
  2. 繰越控除

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

特例①:損益通算

損益通算とは、所得の赤字をほかの所得の黒字から差し引ける特例です。
例えば、サラリーマンが開業し、事業で赤字が出た場合、損益通算により事業所得の赤字を給与所得の黒字でまかなえます。

損益通算を利用すると課税対象の利益が減るため、納める税金の負担が軽減されるのです。
ただし、損失が出て他の所得と損益通算できるのは、以下4つの所得になります。

  1. 譲渡所得
  2. 不動産所得
  3. 事業所得
  4. 山林所得

なお、生活に必須でない資産の所得は損益通算が適用されないなど、一部対象外の所得もあるため注意が必要です。

引用元:国税庁|令和5年No.2250 損益通算

 

特例②:繰越控除

繰越控除とは、上場株式等を譲渡した際に生じた売却損に関し、その年の譲渡利益から控除しきれずあぶれてしまった損失金額を、最大3年に渡り繰り越せる特例です。
損益通算しても控除しきれなかった損失も、対象になります。

この特例では、繰り越した年の譲渡利益も控除できます。
ただし、確定申告しないと繰越控除が適用されない点に注意しましょう。

引用元:国税庁|令和5年No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

 

【所得税以外も】不動産の譲渡時にかかる税金

不動産の譲渡時には、譲渡所得税以外に以下3つの税金がかかります。

  1. 印紙税
  2. 登録免許税
  3. 消費税

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

税金①:印紙税

印紙税は、不動産売買契約書に印紙を貼り納税するものです。
不動産の取引価額により、印紙の金額は異なります。
なお、不動産契約書が以下の要件を満たすと、印紙税の軽減措置が適用されます。

  • 取引価額が10万円以上
  • 平成26年4月1日から令和9年3月31日に作成

具体的な金額は、下表の通りです。

契約金額 印紙税 印紙税(軽減措置後)
10万円を超え50万円以下 400円 200円
50万円を超え100万円以下 1千円 500円
100万円を超え500万円以下 2千円 1千円
500万円を超え1千万円以下 1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下 2万円 1万円
5千万円を超え1億円以下 6万円 3万円
1億円を超え5億円以下 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

印紙を貼り忘れると納税していないとみなされ、ペナルティが発生する場合もあるため、注意しましょう。

引用元:国税庁|不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

 

税金②:登録免許税

登録免許税は、不動産売買が成立し登記簿上の名義が変わる際に発生する税金です。
不動産売買において必須の登記ですが、必要な費用としては以下の2つが挙げられます。

  1. 抵当権抹消の登記費用(売主負担)
  2. 所有権移転登記(買主負担)

所有権移転登記は基本的には買主が費用を負担し、登記します。
土地と建物は別で登記するため、それぞれの登録免許税が必要です。

なお、登録免許税は「土地・建物の固定資産税×2.0%」です。
印紙税と同様に軽減措置があるため、国税庁のページを参考に、ご自身のケースに当てはまるか確認しましょう。

引用元:国税庁|令和5年No.7191 登録免許税の税額表

 

税金③:消費税

不動産売買では不動産会社に支払う仲介手数料が発生し、仲介手数料には消費税がかかります。
仲介手数料は売却価格が400万円以上であれば、下記の金額を上限として不動産会社に支払います。

仲介手数料
={(売却価額×3%)+6万円}×消費税

例えば、5,000万円の土地を売却した場合、仲介手数料は消費税を含め156万円です。

不動産売買において、不動産会社選びは非常に大切です。
不動産会社の選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】土地売却を依頼する不動産会社の選び方!失敗しないための留意点も解説

 

不動産の譲渡が発生したら確定申告を

不動産の売却や譲渡をした場合、確定申告によって納税額が決定されます。
損益通算や繰越控除も確定申告の際に申請するため、不動産の譲渡が発生したら必ず確定申告をしましょう。
確定申告しない場合、無申告となりペナルティが課される可能性もあります。

確定申告は、対象となる年の翌年2月16日から3月15日までの1か月間で申請します。
申請に必要な書類は、下表の通りです。

書類 入手場所
確定申告書B 税務署
分離課税用の申告書 税務署
譲渡所得の内訳 税務署
不動産売買契約書 コピー
登記事項証明書 登記所
領収書 コピー

不動産売買契約書は、売買契約時の控えを保管しておきましょう。

領収書は、仲介手数料や固定資産税の清算で発行されたものです。
確定申告で必要となるため、なくさないよう注意してください。

引用元:国税庁|令和5年〔令和5年分 所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き〕
申告書に添付・提示する書類

 

まとめ:不動産の譲渡所得税は所有期間によって変わる

不動産の譲渡所得税は、所有期間によって変わります。
譲渡する場合、譲渡所得税がいくらかかるのか具体的に算出し、シミュレーションしておくことが大切です。
特例控除の内容も把握し、ご自身に特例が適用されるかもあわせて確認しましょう。

なお、弊社ゴールドトラスト株式会社では、不動産投資を用いてお客様の資産形成をサポートしています。
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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。