【2024年から】相続税・贈与税の改正内容|節税のポイントも解説
相続税や贈与税の対策を考えて、「2024年から適用される改正内容を知りたい」と考える方も多いでしょう。
相続時精算課税や暦年課税などに大きな変更があったため、正しく理解しておく必要があります。
古い知識のまま相続税・贈与税の対策を考えていると、いざという時に「節税できなかった」と後悔する可能性もあるので注意が必要です。
この記事では、2024年1月1日から適用される相続税・贈与税の改正内容を解説します。
相続税・贈与税の基礎知識や節税を考えるうえで注意したいポイントも紹介するので、参考にしてください。
目次
相続税・贈与税の基礎知識
相続税・贈与税の基礎知識として、以下の2つを紹介します。
- 相続税・贈与税とは
- 相続税・贈与税の計算方法
改正内容を確認する前に、改めて基礎知識をチェックしましょう。
相続税・贈与税とは
相続税とは、相続・遺贈された財産の取得時における時価に課される税のことで、死亡時点に所有するすべての財産に対して課税されます。
一方、贈与税とは生前などに贈与された財産の取得時における時価に課される税であり、贈与分にのみ課税されるのが特徴です。
相続税・贈与税の特徴をまとめると、下表の通りとなります。
種類 | 相続税 | 贈与税 |
特徴 | 死亡時点に所有するすべての財産に対して課税 | 贈与分にのみ課税 |
対象物 | ・被相続人が所有していた財産 ・生命保険金などのみなし相続財産 |
原則として贈与を受けたすべての財産 |
性質・機能 | ・所得税の補完 ・富の集中を抑制 |
相続税の補完 |
課税方法 | 法定相続分課税方式 | ・暦年課税 ・相続時精算課税 |
相続税には故人が生前に支払っていなかった所得税を相続時に精算する、贈与税には生前に財産を分配して相続税を回避するのを防ぐ役割があるのがポイントです。
相続税・贈与税の計算方法については、次の章で詳しく解説します。
引用元:
・国税庁|2023年相続税・贈与税のあらまし
・国税庁|No.4405贈与税がかからない場合
相続税・贈与税の計算方法
相続税は合計額から控除した残額を法定相続分で分配した金額に対して、累進税率をかけて計算する方法であり、法定相続分課税方式と呼びます。
基礎控除と税率は、下表の通りです。
基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人数 |
税率 | 10〜55%の累進税率(8段階) |
なお、基礎控除以下であれば申告は不要です。
逆に、申告が必要な場合は以下の通りとなります。
- 相続により取得した財産の合計額が基礎控除額を超える
- 相続時精算課税の贈与で取得した財産の合計額が基礎控除額を超える
また、生前に贈与を受ける場合は贈与税が発生するので、計算方法を確認しましょう。
贈与税の計算方法は、以下の2つです。
- 相続時精算課税
- 暦年課税
それぞれについて、次の章で解説します。
マンション相続税が気になる方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】相続税が気になる方必見!マンション相続税の評価額の計算方法や節税方法を解説
相続時精算課税
相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子どもや孫に対して、財産を贈与した場合に選択できる制度です。
相続時精算課税は1年間に贈与を受けた財産の合計額をもとに算出し、以下のように計算します。
{(贈与額-基礎控除額110万円)-特別控除額2,500万円※}×20% |
※累計額
例えば、父親から子どもに4,000万円を2年かけて贈与した場合の計算は、下表の通りです。
贈与額 | 税額 | |
1年目 | 2,000万円 | 非課税 (2,000万円-110万円)-2,500万円 |
2年目 | 2,000万円 | 課税 {(2,000万円-110万円)-610万円}×20%=256万円 |
累計贈与額が2,500万円を超えるまでは何回でも控除可能で、分割して贈与できたり限度額までは課税されなかったりするのがメリットだといえます。
なお、相続時精算課税制度を選択するには、「相続時精算課税選択届出書」の提出が必須です。
また、贈与者が死亡した場合には、贈与財産と相続財産の合計金額をもとに計算した相続税額から、納めた贈与税相当額を控除して計算するので注意しましょう。
先ほどと同じ条件で父親の死亡時に5,000万円を相続した場合は、下表のように計算します。
相続税の基礎控除 | 3,000万円+600万円×1名=3,600万円 |
贈与財産と相続財産を合計した相続額 | (4,000万円-110万円×2年)+5,000万円-3,600万円=5,180万円 |
贈与税控除前の相続税額 | 5,180万円×30%-700万円=854万円 |
相続税額 | 854万円-256万円=598万円 |
贈与額は贈与されたそのままの額ではなく、基礎控除額である110万円を差し引いて計算するため気をつけてください。
引用元:
・国税庁|No.4301相続時精算課税の選択と相続税の申告義務
・国税庁|No.4155相続税の税率
・国税庁|令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
暦年課税
暦年課税とは1年間に贈与された財産の合計額に累進税率を適用する方式のことで、相続時精算課税同様に年間110万円の基礎控除額があります。
暦年課税の計算方法は、以下の通りです。
(贈与額-基礎控除110万円)×税率-控除額 |
税率は10〜55%で8段階の累進税率ですが、贈与財産の区分によって異なります。
贈与財産の区分は、下表の通りです。
区分 | 内容 |
特例贈与財産 | 父母や祖父母などの直系尊属から18歳以上の子どもや孫への贈与 |
一般贈与財産 | ・父母や祖父母などから18歳未満の子ども・孫への贈与 ・夫婦間・兄弟姉妹間での贈与 ・他人への贈与など |
例えば、1,000万円の贈与を受け取った場合には、下表の贈与税が発生します。
特例贈与財産の場合 | (1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円 |
一般贈与財産の場合 | (1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円 |
直系尊属から18歳以上の子どもや孫へ贈与する「特例贈与財産」のほうが、他人などへ贈与する「一般贈与財産」よりも税額を軽減できるのが特徴です。
また、贈与者が死亡した場合には、相続前7年以内に受けた贈与財産を相続財産に加算されるので注意しましょう。
具体的には、相続前7年のうち直近3年以内は全額、4〜7年前の贈与した総額から100万円を控除した額が加算されます。
例えば、毎年100万円贈与していた場合に相続額に加算される金額は、以下の通りです。
100万円×3年分+(100万円×4年分-100万円)=600万円 |
贈与税を支払っていた場合には相続税から控除されるので、二重課税される心配はありません。
子どもや孫などにお金を残すため資産運用を検討している方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】資産運用11種類のメリットやリスクを比較!初心者向けのコツも解説
引用元:
・国税庁|No.4408贈与税の計算と税率(暦年課税)
・国税庁|令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
相続税・贈与税の改正内容【2024年1月1日から適用】
2024年1月1日から適用されている相続税・贈与税の改正内容について、以下の3つを解説します。
- 相続時精算課税の改正
- 暦年課税の改正
- 一括贈与に関する改正
相続税や贈与税の節税に取り組むためには、改正内容を正しく理解しておくことが重要です。
相続時精算課税の改正
相続時精算課税の改正が実施された内容は、以下の2つです。
- 基礎控除を創設
- 被災時における土地・建物価額の特例を創設
それぞれについて解説します。
改正内容①:基礎控除を創設
暦年課税の基礎控除とは別に、2024年1月1日以降は相続時精算課税で贈与を受けた場合にも基礎控除額110万円が適用されるように改正されました。
基礎控除額の110万円は贈与税の課税対象外なのはもちろん、相続税の計算時にも加算されないため、贈与税・相続税の両方が発生しないのがメリットです。
なお、基礎控除は「贈与を受ける者1人につき年間110万円」と計算するので注意しましょう。
例えば父親と母親の2人からそれぞれ相続時精算課税で受け取っても、基礎控除は合計110万円となります。
ただし、暦年課税の基礎控除とは別なので、暦年課税と相続時精算課税を組み合わせて基礎控除を合計220万円とすることは可能です。
改正内容②:被災時における土地・建物価額の特例を創設
2024年1月1日以後に、相続時精算課税適用者が災害によって贈与された土地や建物に一定の被害を受けた場合には、被災価額を控除する制度が創設されました。
具体的には、相続時に加算される贈与財産の額から、被災価額を控除することが可能です。
例えば、贈与された2,000万円の建物が相続前に自然災害により300万円の被害を受けた場合には、相続時に加算される額は1,700万円となります。
なお、災害に該当するケースは下表の通りです。
種類 | 内容 |
自然現象の異変による災害 | 震災・風水害・冷害・雪害・干害・落雷・噴火など |
人為による異常な災害 | 火災・鉱害・火薬類の爆発など |
生物による異常な災害 | 害虫・害獣など |
上記のような災害を受けた際に、被災価額が土地や建物の贈与価格の10%以上を占めると、「一定の被害」として認められます。
ただし、被害を受けた土地や建物が災害減免法によって贈与税の軽減などの適用を受けた場合は、本特例は適用できないので注意しましょう。
引用元:国税庁|令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
暦年課税の改正
暦年課税において改正された内容は、以下の2つです。
- 相続財産の加算期間を延長
- 延長された期間の財産価額を加算から除外
それぞれについて解説します。
改正内容①:相続財産の加算期間を延長
贈与により取得した財産を相続税の課税価格に加算する期間は相続開始3年前でしたが、本改正によって7年へ延長されました。
本改正は2024年1月1日以後の贈与に適用され、加算対象期間は下表の通りです。
贈与者の相続開始日 | 加算対象期間 |
2024年1月1日~2026年12月31日 | 相続開始前3年間 |
2027年1月1日~2030年12月31日 | 2024年1月1日~相続開始日 |
2031年1月1日~ | 相続開始前7年間 |
段階的に加算対象期間が延長し、2031年以降に相続した財産については相続前7年分が加算されるので、念頭に置いて贈与時期を検討しましょう。
加算対象期間は7年となりますが、一部は控除されるように定められています。
詳細について知りたい方は、次項もご確認ください。
改正内容②:延長された期間の財産価額を加算から除外
相続開始前7年分が加算対象になるものの、延長された4年分については合計額から100万円が控除されます。
例えば、毎年200万円ずつ母親が子どもに贈与していた場合、相続額に加算される金額は以下の通りです。
200万円×3年分+(200万円×4年分-100万円)=1,300万円 |
改正前であれば3年分の600万円を加算すればよかったものが、改正後は控除があるものの総額1,300万円プラスとなり、税金も増加します。
また、相続時精算課税では相続時に毎年の基礎控除分すべてが差し引かれますが、暦年課税では延長分の4年間における合計100万円しか控除されません。
引用元:国税庁|令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
一括贈与に関する改正
一括贈与に関する改正内容は、以下の2つです。
- 教育資金と結婚・子育て資金の非課税期間を延長
- 住宅取得等資金の非課税期間が終了
それぞれについて解説します。
改正内容①:教育資金と結婚・子育て資金の非課税期間を延長
教育資金と結婚・子育て資金の非課税期間がそれぞれ延長され、条件を満たすと引き続き一定額が非課税になります。
2023年に終了予定だった「教育資金の一括贈与」は3年間期間を延長し、2026年3月31日までとなりました。
教育資金の一括贈与に関する非課税措置の内容は、下表の通りです。
使途 | 教育資金 |
非課税額 | 1,500万円まで |
贈与を受ける人の条件 | 30歳未満の子どもや孫 |
また、「結婚・子育て資金の一括贈与」は2年延長されて、非課税措置が2025年3月31日までとなっています。
結婚・子育て資金の一括贈に関する非課税措置の内容は、下表の通りです。
使途 | 結婚・子育て資金 |
非課税額 | 1,000万円まで |
贈与を受ける人の条件 | 18歳以上50歳未満の子どもや孫 |
教育資金や結婚・子育て資金の非課税措置を受けるためには、上記の条件以外にも非課税申告書の提出などがあります。
引用元:
・国税庁|祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
・国税庁|父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
・総務省|令和5年度税制改正の大綱
改正内容②:住宅取得等資金の非課税期間が終了
父母・祖父母などから子どもや孫への贈与が住宅取得などを目的とする場合は一定額が非課税でしたが、2023年12月31日で終了となっています。
終了前の非課税額は、下表の通りでした。
住宅の種類 | 非課税額 |
省エネ等住宅 | 1,000万円まで |
それ以外の住宅 | 500万円まで |
教育資金や結婚・子育て資金の非課税措置と同様に延長されたと思い違いをしていると、贈与税が発生する場合があるため注意が必要です。
2024年以降に贈与する場合には、贈与の方式を踏まえながら金額を検討しましょう。
引用元:国税庁|No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
相続税・贈与税の節税を考えるうえで注意したい2つのこと
相続税・贈与税の節税を考えるうえで注意したいポイントは、以下の2つです。
- 相続時精算課税を選ぶと暦年課税に戻せない
- 節税につながらないケースもある
相続時に後悔しないためにも、注意点を踏まえて贈与や相続を進めましょう。
注意点①:相続時精算課税を選ぶと暦年課税に戻せない
相続時精算課税を選ぶと、選択をした年分以降すべてに相続時精算課税が適用され、暦年課税には戻せないので注意してください。
暦年課税に戻せない最大のデメリットは、小規模宅地等の特例が適用されないことです。
小規模宅地等の特例を利用すると、宅地などの評価額を最大80%減額できるので相続税を減らせます。
ただし、被相続人である故人と同じ家に住んでいたなどの要件もあり、暦年課税を利用している人すべてが適用される訳ではありません。
相続時精算課税を選ぶ前には、デメリットも考慮してから決定することが重要です。
相続税の評価額が気になる方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】【相続税の評価額】調べ方と計算方法を解説
引用元:
・国税庁|No.4103相続時精算課税の選択
・国税庁|No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
注意点②:節税につながらないケースもある
以下のように、節税につながらないケースもあります。
- 駆け込みで生前贈与を実施した
- 2024年以降に住宅取得目的で贈与した
- 生前に土地を贈与した
特に暦年課税の場合には駆け込みで生前贈与を実施すると、相続開始前7年分は相続税の加算対象期間となるため、直近の贈与は節税にはつながりません。
2023年末で住宅取得等資金の非課税措置が終了しており、住宅の取得目的で贈与しても贈与税の課税対象になるので注意してください。
土地を生前贈与するよりも、宅地などの評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」を相続時に利用したほうが節税効果を得られる場合もあります。
不動産相続を検討している方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】相続税で損をしないための不動産相続の基礎知識とは?評価額の計算方法も解説
改正後の相続税・贈与税ではどちらの計算方法がお得になる?
改正後の相続税・贈与税について、以下に挙げる2つのパターンに分けて紹介します。
- 相続時精算課税がおすすめの人
- 暦年課税がおすすめの人
課税方式に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
相続時精算課税がおすすめの人
相続時精算課税がおすすめの人は、以下の通りです。
- 短期間でしか贈与を受けられない人
- 年間で110万円以下の贈与を受け取る人
- 小規模宅地等の特例を受ける予定のない人
余命が少ない人から贈与を受けるなど贈与期間が短い人は、基礎控除である110万円分は相続税の計算時に加算されないので税金を軽減できます。
年間110万円以下の贈与の場合は基礎控除の範囲内で贈与税が発生せず、相続時にも基礎控除の累積額は差し引かれるため相続税もかかりません。
小規模宅地等の特例を受ける予定のない人は、暦年課税を選ぶ必要性は少ないため相続時精算課税がおすすめです。
暦年課税がおすすめの人
暦年課税がおすすめの人は、以下の通りです。
- 他人同士など相続時精算課税を利用できない人
- 相続開始7年よりも前に相続を終了できる人
- 小規模宅地等の特例を利用したい人
暦年課税は他人同士や兄弟間などの贈与で、相続時精算課税を利用できない人に向いています。
相続開始の7年よりも前に相続を終了できる人は、相続税の計算時に贈与分が加算されないので暦年課税がおすすめです。
相続時精算課税の場合は小規模宅地等の特例が適用されないことから、利用したい場合には暦年課税を選びましょう。
相続税・贈与税の節税対策なら不動産投資も1つの方法
相続税・贈与税の節税対策を検討しているのであれば、不動産投資も1つの方法です。
例えば、値上がりが見込まれる不動産を評価が低いうちに贈与すると、将来の相続税を節税できる場合があります。
収益物件を早い段階で贈与する場合は、贈与を受けた側は長期的に収益を得られるのもメリットです。
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収益確保とともに節税も進めたい方は、「賃貸マンションアパート(一棟買い):トチプラス」をご覧ください。
※不動産投資による節税は物件などの条件により効果が異なります。節税を目的とした投資をする際は専門家のサポートを受けながら行いましょう。
まとめ:相続税・贈与税の改正内容は要チェック
2024年1月1日から適用される相続税・贈与税の改正では、暦年課税における加算期間の変更などがありました。
住宅取得等資金の非課税期間が終了したので、2024年以降の贈与には注意が必要です。
効果的に節税するためにも、税制改正時には変更内容を細かくチェックしましょう。
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