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IRRとは?計算方法や不動産投資で役立つシーンをわかりやすく解説

IRRとは?計算方法や不動産投資で役立つシーンをわかりやすく解説

「IRR(Internal Rate of Return)」は収益指標の1つで、時間の経過を考慮して投資の効率性を測定できます。

IRRに理解を深めておけば、キャッシュフローを踏まえた収益率を把握できるため、投資判断の精度を上げることが可能です。

この記事ではIRR(内部収益率)の基礎知識として、意味や利回りとの違いなどを解説します。

不動産投資で役立つシーンや活用する際の注意点のほか、覚えておきたい投資の評価基準もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。


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IRR(内部収益率)とは

IRR(内部収益率)とは、簡単にいうと時間的な価値を踏まえて測定する収益率であり、収益指標の1つです。

ここではIRRについて、以下の3つを解説します。

  1. 意味
  2. 割引率との関係性
  3. 利回りとの違い

IRRを活用する前に、基礎知識を確認しましょう。

 

意味

IRRの正確な意味は、「投資によって将来得られるお金を、現在の価値に換算した金額と等しくなる割引率」です。

全投資期間を通じた収益性を現在価値の基準で測定でき、複数の投資候補がある場合の比較にも効果的です。

なお、IRRを算出する際には、以下の要素を考慮します。

  • 初期投資額
  • 保有期間中の収益
  • 売却価格

保有期間中のキャッシュフローを踏まえたうえで計算する分、精度が高く、物件の収益性を判断する際に役立ちます。

IRRが高い物件は早期に利益を上げられる不動産のため、スムーズな運用が見込めるでしょう。

 

割引率との関係性

割引率は、お金の将来価値を現在価値に換算(割引)するために使用する利率を意味します。

IRRに置き換えると、下表の通りです。

意味
将来価値 投資により得られるキャッシュフローの累計額
現在価値 投資額

つまり、「投資により得られるキャッシュフローの累計額」を「投資額」に換算できます。

お金の価値は時間とともに変化することから現在と将来では異なり、時間が経過するほど価値が低くなるのが一般的です。

ただし、お金は不動産投資などの投資によって時間的価値を発生させて収益を得られるので、価値が下がるとは限りません。

例えば、100万円を年利3%で運用した場合、下表のように将来価値が上がるケースもあります。

分類 経過年数 合計(元本+運用収益)
現在価値 0年 100万円
将来価値 1年 103万円

上記のケースでは、1年後の103万円を現在の100万円に換算するため、割引率(IRR)は3%となります。

 

利回りとの違い

利回りとIRRとの違いは、時間を考慮しているかという点です。

利回りには1年度や3年度などの時間軸が存在しませんが、IRRはキャッシュフローの累計額を用いて計算するため、投資期間を踏まえます。

利回りとIRRの特徴は、下表の通りです。

利回り IRR
共通点 投資金額に対して得られる収益性の高さを測定する指標
特徴 時間経過は考慮しない1年間の収益率 時間的な価値を踏まえて測定する収益率
割引率 なし あり
複利効果 含まない 含む
売却益 含める 含む
キャッシュフロー 一部考慮している 考慮して計算している

IRRはキャッシュフローを考慮して計算するので、キャッシュフローが不安定な不動産を含めて比較検討できます。

不動産の収益性をチェックする際には利回りも目安にできますが、IRRも踏まえて比較検討すると精度が上がるでしょう。

高い利回りでの不動産を運用したいという方は、独自の画期的な仕組みで高利回りを実現できる賃貸マンションアパート(一棟買い):トチプラスをご覧ください。

利回りについてもっと知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしましょう。

【関連記事】マンション経営の利回りとは?計算方法や利回りの最低ラインなどを解説

 

IRRの計算方法

IRRの計算方法について、以下の3つを解説します。

  1. 基本の計算式
  2. エクセルを使った計算方法
  3. シミュレーション例

実際にIRRを計算して収益性を確かめたいという方は、ぜひ参考にしてください。

 

基本の計算式

IRRの基本的な計算式は、以下の通りです。

C1/(1+r)+ C2/(1+r)2+ C3/(1+r)3+…+ Cn/(1+r)n-C0=0

計算式に用いる項目は、下表の通りとなります。

項目 内容
C0 初期投資額
Cn n年目のキャッシュフロー
r IRR

最終年の売却益を含んで計算するのも特徴で、売却益を想定しない場合には計算できません。

数学が得意な方なら計算することも可能ですが、計算式が複雑なため、次章で紹介するエクセルを使った方法を参考にしてください。

なお、不動産におけるキャッシュフローの計算方法は以下の通りです。

キャッシュフロー=収入(家賃収入)-(経費+ローン返済額+税金)

各内訳は、下表の通りとなります。

種類 内容
収入 ・家賃収入
・礼金など
経費 ・管理費
・修繕積立金
・固定資産税
・保険料など
ローン返済額 ・ローン元金
・ローン金利(帳簿上は経費に含まれる)
税金 ・所得税(法人税)
・住民税など

なるべく正確な数値を算出して、精度の高いシミュレーションを実施しましょう。

不動産投資の経費について知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】不動産投資で経費に計上できる12項目|経費にできない3項目も紹介

 

エクセルを使った計算方法

エクセルのIRR関数を使えば、簡単に計算できます。

具体的な計算手順は、以下の通りです。

  1. 初期投資額と各年のキャッシュフローを記入する
  2. 「IRR(範囲,[推定値])を使用する、もしくは「関数の挿入」から「財務」を選んで「IRR」を呼び出す
  3. エンターキーを押すとIRRが表示される

例えば、エクセルでは下表のように記入します。

行数 A列 B列
1 収益
2 0 -500,000円
3 1 100,000円
4 2 100,000円
5 3 300,000円
6 IRR =IRR(B2:B5)

B列2列目に初期投資額、B列2〜5列目に各年のキャッシュフローが記入されている場合には、セルには「=IRR(B2:C5)」と設定します。

また、初期投資には「-」のマイナス表記を記入しましょう。

手動で計算式するとミスによって正確性を欠いたり、時間がかかったりするので、なるべくエクセルを活用してください。

 

シミュレーション例

IRRのシミュレーションを、下表の条件で実施してみましょう。

項目 金額・内容など
物件価格 2,900万円
購入時の自己資金① 290万円
購入時の諸経費② 200万円
家賃 225万円/年
運営費 45万円/年
返済 114.15万円/年
手取 65.85万円/年
売却価格③ 2,700万円
5年後の残債④ 2,271万円

上記の条件で、物件を5年運用すると、キャッシュフローは下表の通りです。

収益
初期投資額(①+②) 490万円
1年目 65.85万円/年
2年目 65.85万円/年
3年目 65.85万円/年
4年目 65.85万円/年
5年目 65.85万円/年
売却時(③-④) 429万円
IRR(5年目) 10%

また、同様の条件における表面利回りは、以下のように算出できます。

(年間家賃収入÷物件価格)×100
=(225万円÷2,900万円)×100
=7.7%

表利回りは7.7%ですが、売却益を考慮したIRRは10%で大きな差が発生するため、両方を比較することが重要です。

 

不動産投資のIRR活用シーン3選

不動産投資のIRR活用シーンは、以下の3つです。

  1. 物件の選定
  2. 回収期間の設定
  3. 他の投資先との比較

IRRを効果的に利用したいという方は、チェックしてみてください。

 

シーン①:物件の選定

時間経過を考慮した収益指標であるIRRは、物件の選定時に活用できます。

IRRが高い物件は早期に収益を上げられることを示しており、最終利益が同額な物件が複数あったとして、IRRの高いほうがスピーディーに回収可能です。

しかし、すべて計算するのは難しいため、IRRが高い物件の特徴を把握しておくと効率よく物件探しができます。

IRRの数値が高い傾向にある物件は、主に以下の2つです。

  1. 利益を早期に得られる物件
  2. 資産価値が下がりにくい物件

それぞれの特徴について、解説します。

 

利益を早期に得られる物件

利益を早期に得られる物件の特徴は、以下の通りです。

  • 法定耐用年数が過ぎている物件
  • 高利回り物件

法定耐用年数を超えている物件は、短期間で減価償却費を計上できることからキャッシュフローが良好になりやすいのでIRRが高くなります。

例えば、木造物件を新築で減価償却すると22年かかりますが、法定耐用年数を過ぎていれば、4年で償却可能です。

管理コストが低いなどで高利回りを期待できる物件も、IRRが高くなる傾向にあるため、覚えておくと良いでしょう。

 

資産価値が下がりにくい物件

資産価値が下がりにくい物件の特徴は、以下の通りです。

  • 立地の良い物件
  • 利便性の高い物件
  • 人口減少の少ないエリアの物件
  • 人気エリアの物件

上記の条件を満たす物件は高値での売却を期待できるので、最終利益を大幅にプラスにしやすく、IRRが高くなります。

逆に毎年のキャッシュフローを良好に保てる物件でも、最終的な売却価格が低いとIRRは低くなるため気をつけてください。

 

シーン②:回収期間の設定

毎年のキャッシュフローを含んで計算するIRRは以下が想定しやすくなる分、回収期間の設定にも有効です。

  • 初期投資額
  • 毎年のキャッシュフロー
  • 最終利益

また、投資の目標期間があれば、「期間内にどれくらいのキャッシュフローを達成すればいいのか」「初期投資はどの程度抑えるべきか」なども確認可能です。

エクセルを使えば簡単にシミュレーションできるので、ある程度は自力で試算できるのも嬉しいポイントだといえます。

利回りも収益性は確認できますが、売却益などを考慮していないため、回収期間を設定をするならIRRを役立てましょう。

回収期間を短くする方法について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】アパート経営の回収期間は?目安や回収期間を短くする方法を解説

 

シーン③:他の投資先との比較

現在価値と将来価値を考慮して収益性をチェックできるIRRは、他の投資先と比較する際にも便利です。

例えば「不動産と株式」「不動産と債券」といった異分野の組み合わせについて収益性を比べられるため、投資の種類に迷う場合に参考できます。

投資先に迷う場合には、投資にかけられる資金を明確にしてIRRを比較してみるのも1つの方法です。

なお、IRRには下表のように「EIRR」と「PIRR」があります。

種類 内容
EIRR(エクイティIRR) 自己資金のみを初期投資額とする
PIRR(プロジェクトIRR) 借入金と自己資金の合計を初期投資額とする

不動産投資においては「EIRR」を利用するのが一般的です。

不動産以外の資産運用方法について振り返りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】資産運用11種類のメリットやリスクを比較!初心者向けのコツも解説

 

不動産投資でIRRを活用する際の注意点

不動産投資でIRRを活用する際の注意点は、以下の3つです。

  • 単独では投資規模を見誤る可能性がある
  • 収益がマイナスの期間があるときは算出できない
  • 長期投資の評価が低くなる

IRRを正しく活用するためにも、しっかりと注意点も踏まえましょう。

 

注意点①:単独では投資規模を見誤る可能性がある

IRRの数値のみで判断すると、投資規模を見誤る可能性があるので注意が必要です。

IRRのパーセンテージだけを確認している場合、収益額を見落としがちになり、小規模の案件を選ぶ可能性があります。

不動産投資と株式投資を比較した例を確認してみましょう。

投資の種類 IRR 投資額 収益額
不動産投資 5% 2,000万円 100万円
株式投資 10% 200万円 20万円

IRRは株式投資のほうが有利ですが、収益額は不動産投資のほうが高くなります。

IRRが重要指標になるのはもちろんですが、投資額と収益額も確認して、どれくらいのリターンを得られるのかチェックしてください。

 

注意点②:収益がマイナスの期間があるときは算出できない

IRRは収益がマイナスの期間があるときは算出できない可能性があるので、計算する際は気をつけましょう。

計算ができない場合には、マイナス期間がないか見直してください。

また、計算ができてIRRの数値が高かったとしても、ハイリスクなケースがあるため十分な検討が必要です。

IRRは初期投資額が少ないと数値が上がるので、失敗した場合の損出も大きくなります。

高いパーセンテージを出したいからといって、無理な金額を設定して運用するのは避けましょう。

 

注意点③:長期投資の評価が低くなる

IRRは短期間で利益が出やすい不動産ほどパーセンテージが高くなり、長期投資の評価が低くなるのが難点です。

つまり、長期的な運用にIRRを用いるのは向いていない場合があり、IRRだけで長期運用をあきらめるのはもったいないといえます。

また、IRRは期間設定が必要であるため、運用期間を定めてなかったり、売却予定がなかったりするケースでも有効な指標にならないでしょう。

中短期の不動産投資を前提にしている場合にIRRを用いると、効果的な物件選びが可能です。

 

IRRとあわせて覚えておきたい投資の評価基準

IRRとあわせて覚えておきたい投資の評価基準は、以下の3つです。

  1. NPV(正味現在価値)
  2. ハードルレート(必要利回り)
  3. キャップレート(還元利回り)

さまざまな評価基準を参考にしながら、高収益を生み出せる不動産を見つけましょう。

 

評価基準①:NPV(正味現在価値)

NPV(Net Present Value)とは、トータルで得られる価値を示す指標の1つです。

物件の将来的なキャッシュフローを現在価値に割り戻し、初期投資を差し引くことで算出します。

具体的な計算式は、以下の通りです。

n年目のキャッシュフロー÷(1+割引率)×n乗-投資額

NPVの数値が低ければ投資価値も低く、高ければ高い収益を得られます。

また、NPVは最終的に金額で評価できるので理解しやすく、規模を見誤る心配がありません。

ただし、割引率の設定が難しいのがネックです。

割引率は一般的に4〜7%が相場とされていますが、数値によって額が大きく左右されるので気をつけましょう。

 

評価基準②:ハードルレート(必要利回り)

ハードルレートとは、投資判断における必要最低限の収益率を示します。

算出したハードルレートよりも低ければ、収益率が低く投資に向かない不動産です。

不動産投資におけるハードルレートはおよそ5%が相場ですが、条件や投資目的によっても変化するので注意してください。

なお、ハードルレートは下表のように、IRRと比べながら用いるケースが多くあります。

判断
ハードルレート > IRR 収益率が低く投資には不向きな物件
ハードルレート < IRR 収益率が高く投資に向いている物件

ハードルレートもIRRも単独で利用するのではなく、両方を踏まえて投資の判断をしましょう。

 

評価基準③:キャップレート(還元利回り)

キャップレートとは不動産の収益性を表した指標の1つで、「還元利回り」「NOI利回り」とも呼ばれます。

キャップレートの計算方法は、以下の通りです。

1年間の利益(家賃収入-経費)÷ 不動産価格×100

上記で算出したキャップレートは、以下のように不動産価格を算出する際に利用します。

1年間の利益(家賃収入-経費)÷キャップレート

つまり、キャップレートが高ければ高いほど、不動産価格は上昇するのが特徴です。

不動産鑑定士に不動産価格の評価を依頼すると、キャップレートを利用して算出するため、依頼側も覚えておくと良いでしょう。

 

まとめ:IRRの算出で投資判断の精度を上げよう

IRRとは、「投資によって将来得られるお金を、現在の価値に換算した金額と等しくなる割引率」のことです。

物件の選定や回収期間を設定する際にIRRは便利ですが、単独では投資規模を見誤る可能性があるので注意が必要です。

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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。