不動産投資を始める方へ!地震が与える影響と安定経営に必須の対策を解説
不動産投資の準備をしながら、「購入後に地震被害にあったらどうしよう」と不安を感じる方も多いでしょう。
2016年の熊本地震や2024年の能登半島地震など、過去に発生した地震では不動産が甚大な損害を受けています。
最悪の場合、所有している不動産が倒壊する危険性もあるため、物件に与える地震の影響や対策を把握しておくことが重要です。
この記事では、不動産投資を始める方向けに地震が与える影響と安定経営に必須の対策を解説します。
地震の被害が出た場合に不動産投資家が負う責任なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産投資を始める方が知っておきたい地震の被害
不動産投資を始める方が知っておきたい地震の被害は、以下の3つです。
- 倒壊
- 一部破損
- 周辺環境の変化
過去に発生した地震のデータも踏まえながら見ていきましょう。
被害①:倒壊
2016年に発生した熊本地震では、益城町中心部で震度7が2回観測されています。
同地震で木造建物が倒壊・崩壊した件数や割合は、下表の通りです。
建築年数 | 倒壊・崩壊した件数 | 全体に占める割合 |
---|---|---|
~1981年5月 | 214件 | 28.2% |
1981年6月~2000年5月 | 76件 | 8.7% |
2000年6月~ | 7件 | 2.2% |
1981年(昭和56年)5月に建てられた旧耐震基準の木造建物は倒壊率が28.2%で、新耐震基準の木造建築物よりも割合は高めとなっています。
また、無被害の件数や割合についても、下表のように旧耐震基準と新耐震基準では明らかな差が発生しました。
建築年数 | 無被害の件数 | 全体に占める割合 |
---|---|---|
~1981年5月 | 39件 | 5.1% |
1981年6月~2000年5月 | 179件 | 20.4% |
2000年6月~ | 196件 | 61.4% |
倒壊率とは逆転して新耐震基準のほうが旧耐震基準よりも無被害の割合が高く、建築年数が浅いほど被害が少ないことが分かります。
ここで、新耐震基準と旧耐震基準の違いを整理しましょう。
種類 | 中規模地震(震度5強程度) | 大規模地震(震度6〜7程度) |
新耐震基準 | 軽微なひび割れ程度に留める | 倒壊はしない |
旧耐震基準 | 倒壊はしない | 規定なし |
旧耐震基準が大規模地震を想定していないのに対して、新耐震基準は震度6〜7程度も想定しており、震度5強程度では軽微なひび割れ程度に留められます。
引用元:国土交通省|「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント
被害②:一部破損
地震が起きた場合に不動産が倒壊しなくても、建物内外の一部が破損する可能性があります。
一部破損とは以下のように、全壊や半壊に該当しないものの補修を必要とする程度の破損です。
- 基礎のひび割れ
- 外壁のひび割れ
- 屋根の破損
2016年の熊本地震における一部破損(一部損壊)の件数と割合をチェックしてみましょう。
種類 | 件数 | 割合 |
全壊 | 8,273件 | 4.6% |
半壊 | 3万1,052件 | 17.2% |
一部損壊 | 14万1,162件 | 78.2% |
未確定 | 2件 | 0% |
約80%の住宅が一部破損の被害を受けており、大規模地震があった場合にはほとんどの住宅が補修を必要とするレベルの被害を受ける可能性があります。
ただし、ガラスが数枚割れたなどのごく軽微なケースは一部破損に含まれません。
引用元:国土交通省|「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント
被害③:周辺環境の変化
地震で物件に被害がない場合でも、周辺環境の変化によって不動産投資にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
周辺環境の変化例は、以下の通りです。
- 建物周辺や道路に地割れが発生する
- 近隣の商業施設や駅などが被害を受ける
- 電気・ガス・水道が使用できなくなる
- 建物周辺が液状化する
- 火災で周辺一帯が被害を受ける
地震前には利便性の高いエリアであったとしても、地震によって商業施設や公共施設などが大きなダメージを受けて、条件が一変する可能性があります。
電気・ガス・水道が使用できなくなると、不動産が無事でも入居者は生活するのが難しくなることから退去者が増加するケースもあるでしょう。
また、地震の被害によっては、周辺環境が震災前の状態に戻るには数年・数十年単位で時間がかかる分、入居者募集にマイナスの影響を及ぼす場合があります。
不動産投資に与える地震の影響
不動産投資に与える地震の影響は、以下の3つです。
- 修繕費がかさむ
- 入居率が回復しにくい
- キャッシュフローが悪化する
事前に影響を把握しておけば、リスクヘッジに役立つでしょう。
影響①:修繕費がかさむ
地震によって不動産が破損すると、建物を補修するための修繕費がかさみます。
特に全壊した場合には多くの費用が必要となり、実際、東日本大震災では住宅の新築費用に平均2,500万円程度かかりました。
これは住宅の数値となり、マンションが地震で甚大な被害を受けた場合にはさらなる費用が必要です。
民法第606条「賃貸人による修繕等」には、以下のように修繕費は原則オーナー持ちであることが定められています。
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。 |
また、地震保険に加入していても「建物は5,000万円以内」など補償限度額が決まっており、損害額が全額補償される訳ではない点に注意しましょう。
引用元:
・内閣府防災情報|住宅・生活再建にはこんなにお金がかかる
・e-Gov法令検索|民法 第606条1項
影響②:入居率が回復しにくい
地震による建物がダメージを受けたり、周辺環境に変化があったりした場合には、入居率が回復しにくくなります。
地震発生後に入居率が回復しにくい理由は、以下の通りです。
- 建物に安全面で不安がある
- 余震のない地域で暮らしたいという方が増える
- 物件周辺の利便性が低下する
基礎や外壁にひび割れが発生するなど、入居者にとって不安に感じる要素があれば、退去者が増加する可能性があります。
また、大規模地震の発生後は余震の頻発も考えられ、回避するために地域から転居する場合もあるでしょう。
震災後は工事業者を手配するのが難しく修繕に時間がかかると、なかなか入居率も回復しづらくなります。
不動産の修繕以上に時間がかかるのが周辺環境の改善であり、10年など長い期間が必要です。
建物やエリアの復興とともに入居率は回復する可能性がありますが、時間との戦いになるといえます。
影響③:キャッシュフローが悪化する
地震によってキャッシュフローが悪化し、手元の資金が不足する危険性があります。
キャッシュフローが悪化する要因は、以下の通りです。
- 修繕費がかさんで、予想外の出費が増加する
- 入居率が低下して、収入が減少する
- ローンなどの支出は継続的に発生する
入居率が低下して収入が減少する一方で、多額の修繕費が発生することからキャッシュフローが著しく悪化するリスクがあります。
ローン返済をはじめとして固定費も継続的に発生するため、注意が必要です。
不動産投資ローンの返済を滞納し続けると、金融機関から督促・催告を受けたり、担保不動産を売却したりする場合もあります。
特に同じエリアに複数の不動産を所有しているケースでは、すべての物件でキャッシュフローが悪化する可能性があるため、あらかじめ地域を分散しておくことが大切です。
投資用マンションの一棟買いにおける注意点を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】投資用マンションの一棟買いでよくある失敗5選!原因や成功するコツも解説
地震の被害が出た場合に不動産投資家が負う責任
地震の被害が出た際に不動産投資家が負う責任について、以下のケースに沿って説明します。
- 建物に瑕疵(かし)があった場合
- 老朽化への対応が不十分だった場合
なお、本章での被害とは入居者や通行人などの第三者が傷を負ったり死亡したりすることです。
地震発生後に大きな責任で悩まないためにも、しっかりチェックしましょう。
ケース①:建物に瑕疵(かし)があった場合
建物に瑕疵(かし)があって入居者や通行人がケガなどをした場合には、不動産投資家が責任を負います。
瑕疵とは、土地・建物に何らかの欠陥があり、通常あるべき品質・性能を持っていない状態のことです。
建物に瑕疵があった場合の損害賠償については、民法第717条「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」に以下のように定められています。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。 |
占有者は必要な注意をしていれば責任を免れますが、所有者は基本的に損害賠償の責任を回避できません。
ただし、地震の規模が予想できないほど大きかった場合には、建物に瑕疵がないと判断される場合もあります。
ケース②:老朽化への対応が不十分だった場合
必要な修繕を実施せず老朽化への対応が不十分だった場合にも、民法第717条に該当して不動産投資家が責任を負う可能性があります。
不動産投資家が責任を負う理由は、老朽化した建物には本来持っているべき安全性がないと判断されるためです。
また、前述した民法第606条においても「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定められています。
阪神・淡路大震災では、旧耐震基準の建物が一部倒壊して入居者4名が死亡し、安全性が確保されていなかったとして裁判所はオーナーの責任を認めました。
このケースでは、オーナーは1億3,000万円の支払いを命じられており、大きな賠償責任を負う結果となっています。
瑕疵や老朽化によって第三者に被害を与えないためにも、定期的に建物の点検や修繕を実施することが重要です。
不動産投資を始める方ができる地震への備え
不動産投資を始める方ができる地震への備えは、以下の4つです。
- 地震に強い物件を選ぶ
- 投資エリアを分散する
- 保険に加入する
- 相談先を確保しておく
事前準備をしっかりしておけば、地震被害を最小限に留められるでしょう。
備え①:地震に強い物件を選ぶ
建物への被害を抑えるためには、地震に強い物件を選ぶ必要があります。
不動産を選ぶ際は資料上のデータだけではなく、現地視察で建物の状態や周辺の環境を把握しておくことも大切です。
物件を選ぶ上で重視したいポイントは、以下の3つとなります。
- 地盤は硬いか
- 災害リスクは低いか
- 新耐震基準を満たしているか
それぞれのポイントを押さえて、効率よく地震に強い物件を探しましょう。
その他の基本的な物件の選び方について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】中古マンション投資とは?物件の選び方や融資を成功させるコツを解説
チェックポイント①:地盤は硬いか
硬い地盤は、地震をはじめとして水害にも強いのが特徴です。
固い岩盤や砂礫(されき)を豊富に含む硬い地盤は安定しており、地震の揺れにも崩れにくい傾向にあります。
また、硬い地盤は液状化を招きにくい点もメリットです。
液状化とは、地震の発生によって地盤が液体状になる現象で、地中にある砂粒同士の摩擦で安定していた地盤が振動で崩れることにより発生します。
液状化が与える影響は、以下の通りです。
- 不動産が傾く
- 地盤に亀裂が入る
- マンホールが浮き上がる
- 地面から噴水が発生する
- 水道・ガスなどが利用できなくなる
軟らかい地盤では上記の影響を受けやすくなるため、注意しましょう。
不動産を購入する前には、「地質調査技士」や「地盤品質判定士」などの有資格者が在籍するプロの業者に依頼してください。
チェックポイント②:災害リスクは低いか
地震によって津波やがけ崩れなどの二次災害に遭う可能性があるため、災害リスクにも配慮して物件選びをしましょう。
災害リスクを判断するには、自治体が公開しているハザードマップを参考にするのがおすすめです。
ハザードマップとは被災想定区域や避難場所・経路を表示した地図のことで、地震はもちろん洪水や津波などいくつか種類があります。
例えば、愛知県で公開している地震のハザードマップは、以下の通りです。
- 地震
- 液状化
- 津波到達時間
- 津波波高
- 浸水深
- 浸水深が30cmに到達する時間
より細かく被害想定を知りたい場合には、市町村が公開するハザードマップも一緒にチェックしてください。
チェックポイント③:新耐震基準を満たしているか
建物の耐震基準には、下表の3つがあります。
種類 | 時期 | 特徴 |
旧耐震基準 | 1981年5月31日以前 | 中規模地震で倒壊はしない |
新耐震基準 | 1981年6月1日以降 | 大規模地震で倒壊はしない |
2000年基準 | 2000年6月1日以降 | 新耐震基準に「地盤に応じた基礎設計」などを加えて強化している |
中古物件を購入する際は、新耐震基準以上を満たしている物件を選びましょう。
新耐震基準で建てられた建物は震度6〜7程度でも倒壊はしないため、大規模地震の場合にも被害を軽減できます。
2000年基準では新耐震基準をさらに強化しており、それ以前の建物よりも安全性が向上しています。
また、建物の耐震性能を表す指標である「耐震等級」も耐震基準と一緒にチェックしておきたいポイントです。
耐震等級 | 耐震性 | 具体例 |
等級1 | 数百年に1度程度で発生する地震でも倒壊しないレベル | 一般の戸建て住宅 |
等級2 | 等級1の1.25倍 | 学校・病院 |
等級3 | 等級1の1.5倍 | 消防署・警察署 |
マンションの場合は等級1〜2が多いですが、等級1を満たさない場合には「0」と表記されるのでよく確認しましょう。
なお、弊社ゴールドトラストでは、震度7でもびくともしない強固な耐震性を実現した不動産を提供しています。
耐震性に優れた物件で投資をスタートさせたい方は、「賃貸マンションアパート(一棟買い):トチプラス」をご覧ください。
備え②:投資エリアを分散する
同じ地域の不動産に投資するとリスクが高いため、投資エリアを分散しましょう。
同じ市内や同じ県内などに全ての不動産を所有していると、地震によって全物件が影響を受けて収入が著しく低下する可能性があります。
ただし、異なるエリアに不動産投資していても安心とは限りません。
大地震は広域なエリアにダメージを与える可能性があり、「隣の県に2棟目を持っているから安心」とはいえないでしょう。
実際、2011年に発生した東日本大震災では、以下のように被害を受けた地域は広くなっています。
- 青森県
- 岩手県
- 宮城県
- 福島県
- 茨城県
- 千葉県
ハザードマップなどを参考にしながら、なるべくさまざまなエリアに投資して、地震発生時のリスクを分散しましょう。
備え③:保険に加入する
不動産の倒壊や一部破損など万が一の事態に備えて、保険に加入するのも1つの方法です。
地震対策に有効な保険は、下表の通りです。
種類 | 内容 |
地震保険 | 地震や地震によって発生した火災・津波などによる損害を補償する |
施設賠償責任保険 | 第三者に損害を与えた際に補償を受けられる |
不動産投資においてメジャーな保険は火災保険ですが、火災保険は地震によって発生した火災は対象外となります。
また、地震保険は火災保険とセットで加入するのが基本です。
地震保険に加入すれば安心ですが、上限金額が決まっているため、超える部分はオーナーが負担する必要があります。
地震に関する保険について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】不動産投資に地震保険が必要な理由とは?加入状況やメリット・注意点も解説
備え④:相談先を確保しておく
地震をはじめとしたさまざまなトラブルに備えるためにも、不動産投資を始める際は相談先を確保しましょう。
主な相談先は、以下の通りです。
- 不動産投資会社
- ファイナンシャルプランナー
- 金融機関
- 税理士
- 不動産投資経験者
強い地盤の物件を探したり、安全性の高い地域を選定したりするには、地域情報に精通した業者を選ぶ必要があります。
また、「アフターフォローが充実しているか」「リスクを説明してくれるか」などをチェックすることも重要です。
不動産投資の相談窓口についてもっと知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】不動産投資の相談窓口どこがいい?見極めポイントやすべき質問も紹介
まとめ:不動産投資を始めるなら地震対策も必須
不動産投資で家賃収入を安定的に確保するためには、地震への備えも必須です。
地盤の硬さや災害リスクなどをチェックして、地震に強い物件を選びましょう。
なお、弊社ゴールドトラストでは、100億円資産形成の独自メソッドを提供しています。
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