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【国際比較】各国の金融所得課税|非課税の国も?税の基礎知識とともに解説

【国際比較】各国の金融所得課税|非課税の国も?税の基礎知識とともに解説

金融所得課税とは、金融商品から得られる利益に対して課される税金です。
各国で税率や課税方法が異なる分、投資家の行動や資産運用の判断に大きな影響を与えます。

この記事では、税の基本を押さえたうえで、日本を含む主要国の金融所得課税を比較します。
税負担の傾向や金融所得課税が低い国についてもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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金融所得課税とは

金融所得課税とは、株式、預金などの金融商品から得られる所得に対して課される税金のことです。
具体的には預金の場合には利子、株式の場合には株式を売却した売却益(キャピタルゲイン)や配当金などが対象となります。

税率は20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)で、所得の金額にかかわらず一律です。
累進制(※)となっている給与所得や事業所得などの所得税とは、仕組みが異なっています。
※所得の金額に応じて税率が高くなる課税制度

ただし、同じ金融所得であっても「NISA」や「iDeCo」による運用益は非課税です。
新NISAによる非課税保有期間や非課税保有限度額について知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

【関連記事】新NISAで上限が見直された4項目|メリットや注意すべき人の特徴も解説

 

【国際比較の前に】金融所得課税に関連する税の基礎知識

各国の金融所得課税について理解を深めるために、基礎知識として税の仕組みについて解説します。
まずは、下記の2つに分けて説明します。

  1. 課税方式
  2. 適用税率

順に見ていきましょう。

 

課税方式

そもそも所得自体は事業所得や不動産所得など10種類に分類されており、それぞれが課税の方式により分けられます。
所得に対する課税方式は、下記の2種類です。

  1. 総合課税
  2. 分離課税

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

課税方式①:総合課税

総合課税とは、各種の所得金額を合計して計算する方式で、主に以下の所得が対象になります。

  • 給与所得
  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 配当所得
  • 一時所得
  • 雑所得
  • 不動産や株式以外の譲渡所得 など

一定の方法により合計した総所得金額から、所得控除の合計額を控除し、残額に税率をかけて税額を計算します。
給与所得と不動産所得は、所得のすべてが総合課税の対象となりますが、それ以外の所得は種類によって分離課税となるため注意が必要です。

 

課税方式②:分離課税

分離課税とは、特定の収益や所得を他の一般的な所得と合計することなく、分離して税額を計算する方式です。
所得税は原則、総合課税により課税されますが、例外的に特定の所得を単独で分離課税する場合があります。
また、分離課税はさらに下記の2つに分類されます。

  • 源泉分離課税
  • 申告分離課税

源泉分離課税とは、個人が給与所得などの所得を受ける際に、支払う側(会社など)が先に所得税を控除したうえで支払う方法です。
源泉徴収により納税が完了するため、確定申告の必要はありません。

一方、申告分離課税とは所得に対して自分で計算し確定申告する方法です。
申告分離課税は個人の状況に応じて税額計算するため、確定申告が必須となる点に注意しましょう。

 

適用税率

適用税率には、下記の2種類があります。

  1. 累進税率
  2. 比例税率

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

適用税率①:累進税率

累進税率とは課税標準(収入)が高くなるにつれて、高い税率を課す課税方式のことです。
代表的なものとしては、下記の税が該当します。

  • 所得税
  • 相続税
  • 贈与税 など

累進課税の対象となる主な所得は、下表の通りです。

 

対象となる所得 ・給与所得
・事業所得
・不動産所得
・譲渡所得(その他の資産)
・一時所得
・雑所得
【金融商品】
・配当所得※
課税方式 総合課税
適用税率 累進課税

※1.上場株式等の配当(大口以外)等は総合課税と分離課税の選択制、2.それ以外の配当は総合課税とされ、比例税率の源泉徴収だけで済ませる申告不要制度のを選択も可能

ほとんどの所得に対して課税方式は総合課税、適用税率は累進課税が課されます。

 

適用税率②:比例税率

比例税率とは、課税標準(収入)の大小に関係なく一定の税率を課す課税方式のことです。
主なものとしては、下記の税が該当します。

  • 消費税
  • 固定資産税
  • 法人税 など

比例税率の対象となる主な所得は下表の通りです。

対象となる所得 ・譲渡所得(土地等)
【金融商品】
利子所得
配当所得※
譲渡所得(上場株式等)
課税方式 分離課税
適用税率 比例税率

※上場株式等の配当(大口以外)等は総合課税と分離課税の選択制、それ以外の配当は総合課税とされ、比例税率の源泉徴収だけで済ませる申告不要制度の選択が可

なお、税について理解することは、効果的な資産形成や運用に必須です。
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資産形成の具体的方法や節税に関する有益な情報を得たい方は、ぜひご覧ください。

引用元:
日本証券業協会|金融所得の実態に関する分析
日本総合研究所|金融所得課税の議論に欠けている視点

 

【国際比較】主要国の金融所得課税

以下に挙げる5か国の金融所得課税について、課税方式や税率などを解説します。

  1. 日本
  2. アメリカ
  3. イギリス
  4. ドイツ
  5. フランス

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

国際比較①:日本

課税方式 税率
キャピタルゲイン 申告分離課税 20%
配当
利子 源泉分離課税

日本の金融所得課税は、以下3つを加えた20.315%の税率が一律で適用されます。

  1. 所得税15%
  2. 住民税5%
  3. 復興特別所得税0.315%

高所得者であっても金融所得に対する税率は一定ですが、給与所得などと合算しないため、所得再分配の観点では公平性に欠けるという考え方もあります。
このような税負担の公平性を踏まえて、負担適正化に向けた措置として金融所得課税を引き上げる「ミニマムタックス」の導入が2025年から予定されています。

金融所得課税の引き上げ時期や今後の動向について知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】金融所得課税の引き上げはいつから?強化の影響や今からできる対策も解説

 

国際比較②:アメリカ

課税方式 税率
キャピタルゲイン 1年以上株式を保有した場合は、分離課税 0%/15%/20%
保有期間が1年以内の場合は、申告分離課税 10%~37%
配当 分離課税 0%/15%/20%
利子 総合課税 10%~37%

アメリカでは以下の所得を順に積み上げ、それぞれの所得ごとに適用税率が決まる方式です。

  • 給与所得
  • 配当所得
  • 長期キャピタルゲイン

キャピタルゲインに関しては、1年以上保有した場合の配当所得に優遇税率が適用され、最大20%に抑えられます。
また、所得が一定額以下の場合は長期キャピタルゲイン税がゼロになる仕組みもあります。

保有状況や所得によって金融所得課税が日本よりも高くなるケースもあれば、低くなるケースもあるといえるでしょう。

 

国際比較③:イギリス

課税方式 税率
キャピタルゲイン 段階的課税、申告分離課税 10%/20%
配当 段階的課税、申告分離課税 7.5%/32.5%/38.1%
利子 段階的課税、申告分離課税 0%/20%/40%/45%

イギリスでは以下の所得を順に積み上げて、それぞれの所得ごとに適⽤税率が決定されます。

  • 給与所得等
  • 利⼦所得
  • 配当所得
  • キャピタルゲイン

株式譲渡益に関しては、全体の所得によって税率が変わります。
全体の所得のうち3万4,500英ポンド以下の部分に対しての税率は10%、3万4,500英ポンドを超える部分に対しての税率は日本と同じ20%です。
配当と利子の税率に関してはアメリカと同様に、日本と比べて低い場合と高い場合があります。

 

国際比較④:ドイツ

課税方式 税率
キャピタルゲイン 分離課税

※総合課税を選択可能

26.4%
配当
利子

ドイツでは、分離課税を採用していますが、総合課税の選択もできます。
申告不要適⽤時よりも納税者にとって有利になる場合には、申告により総合課税の適⽤が可能です。

ただし、申告を⾏った結果、総合課税を選択した⽅が納税者にとってかえって不利になる場合には、税務当局において⾦融所得は申告されなかったものとして取り扱われます。
結果的に26.4%の源泉徴収税のみが課税され、申告不要と同様の扱いになります。

 

国際比較⑤:フランス

課税方式 税率
キャピタルゲイン 申告分離課税

※総合課税を選択可能

12.8%
配当
利子

フランスでは、金融所得に対して分離課税と総合課税を選択できます。
分離課税は一律12.8%ですが、社会保障税が17.2%適用されるため、合計で30%の税率です。
総合課税を選択した場合には、他の所得と合算し最大で税率が45%になります。

 

国際比較⑥:その他

キャピタルゲイン 配当 利子
シンガポール 非課税
香港
中国 非課税 分離課税:20% 非課税
台湾 分離課税:28% 総合課税:5~40%
韓国 分離課税:15.4% 分離課税:15.4%

地政学的に見ると東アジアでは、キャピタルゲインは非課税が一般的です。
税制上の優遇措置を実施する、アジアのタックスヘイブンとして知られています。

特にシンガポールと香港では主な金融所得課税がすべてゼロであり、富裕層や投資家にとって魅力的な税制といえるでしょう。

引用元:
三菱UFJアセットマネジメント|【投信調査コラム】日本版ISAの道 その409
日本証券業協会|金融所得の実態に関する分析

 

個人所得課税の国際比較

個人所得課税の国際比較に関して、下記の2点について解説します。

  1. 税率構造
  2. 個人所得課税負担額

順に見ていきましょう。

 

国際比較①:税率構造

個人所得税に関する各国の税率構造は、所得に応じて3〜7段階に分かれています。

日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス
7段階
5%
10%
20%
23%
33%
40%
45%
7段階
10%
12%
22%
24%
32%
35%
37%
3段階
20%
40%
45%
(方程式)※
0%
14%
24%
42%
45%
5段階
0%
11%
30%
41%
45%

※所得税に加え、所得税額に対して0~5.5%の割合で連帯付加税(連邦税)が課される

日本は、2013年1月から2037年12月まで、基準の所得税額に対して一律2.1%の復興特別所得税が別途課せられます。
また、ドイツに関しては所得税に加え、所得税額に対して0〜5.5%の割合で連帯付加税(連邦税)がある点にも注意しましょう。

 

国際比較②:個人所得課税負担額

下表は、国ごとの給与所得別の個人所得税負担額の比較表です(単身者のケース)。

給与所得
500万円 1,000万円 3,000万円 5,000万円
日本 37.4万円 144.9万円 1,058.2万円 2,107.9万円
アメリカ 59.7万円 172.6万円 829.4万円 1,703.2万円
イギリス 53.2万円 166.2万円 1,093.4万円 1,993.4万円
ドイツ 44.2万円 169.7万円 1,035.7万円 1,929.7万円
フランス 16.2万円 115.9万円 682.7万円 1,416.9万円

※2024年1月現在

年間所得が500万円までの個人所得に対する税負担額は、フランスに次いで日本が低い状況であり、アメリカの負担額が最も高くなっています。

年間所得1,000万円までの所得に関してもおおむね変わらないものの、3,000万円未満の所得者になるとイギリスの負担額が最も多くなり、日本はアメリカを抜いて2番目に負担額が高くなります。

年間所得が5,000万円までになると、イギリスを抜いて最も高い負担額になるのは日本です。
このように、所得に応じた税負担額の度合いは、それぞれの国によって異なります。

引用元:財務省|所得税など(個人所得課税)に関する資料

 

国際比較から分かる所得税の傾向

国別に所得税を比較して分かる傾向について解説します。

  1. アメリカ・イギリスの傾向
  2. ドイツ・フランスの傾向

それぞれ見ていきましょう。

 

アメリカ・イギリスの傾向

アメリカ・イギリスは、分離課税も段階的な税率を採用しています。
キャピタルゲインや配当による所得に対しては、最大20%と比較的税率を抑えています。

一方、利子による所得に対してはアメリカが最大37%、イギリスが最大45%と高い税率です。
キャピタルゲインや配当などのリスク資産による所得よりも、リスクのない利子に対する税率を高くすることで、資産選択のバランスが崩れないよう配慮している傾向にあります。

 

ドイツ・フランスの傾向

ドイツ・フランスは、日本と同様に分離課税を一律の税率としています。
ドイツは26.375%、フランスは12.8%であり、どちらも総合課税の選択が可能です。

また、フランスは高所得者に対して上記の分離課税12.8%に加え、社会保障関連諸税17.2%が課され、最大30%の負担率となります。
両国とも総合課税の税率が分離課税の税率を下回る、いわゆる低所得者層に対する配慮をしています。

引用元:日本証券業協会|金融所得の実態に関する分析

 

金融所得課税の国際比較に関するよくある質問

最期に、金融所得課税の国際比較に関するよくある質問を紹介します。

  1. 日本の金融所得課税は海外よりも高い?
  2. 金融所得課税が低い国はどこ?

順に見ていきましょう。

 

質問①:日本の金融所得課税は海外よりも高い?

日本の金融所得課税は、海外と比べると中程度の水準です。
税率は20%で、一律変わりません。
主要国の負担率は下記の通りで、日本より高い国もあれば低い国もあります。

  • アメリカは最大20%(株式長期保有の場合)だが、高所得者には追加課税あり
  • イギリスは利益額に応じて10%または20%
  • ドイツは約26%
  • フランスは30%

日本の金融所得課税は今後引き上げられるため、資産を守りたい場合はこれまで以上に節税への注力が必要です。
サラリーマンや個人事業主におすすめの税金対策の方法が知りたい方は、下記の記事を参考にして下さい。

【関連記事】税金対策とは?サラリーマンや個人事業主でもできる対策方法を紹介!

 

質問②:金融所得課税が低い国はどこ?

金融所得課税が低い国として代表的なのは、シンガポールや香港です。
シンガポールや香港は、キャピタルゲインや配当などの金融所得に税金がかかりません。
株式や投資による利益に課税されないため、投資家にとって有利な環境です。

一方、日本やアメリカなどの主要国では金融所得課税があります。
国によって税率が変わり、10〜45%の金融所得課税が課せられます。
また、社会保障制度の充実と税収の公平な分配を目的として、金融所得にも一定の負担を求める方針を採っているのがドイツ・フランスです。

海外投資のメリットやリスクについて知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

【関連記事】海外不動産投資とは?メリット・デメリットや注意点を解説

 

まとめ:金融所得課税の国際比較から分かること

各国の金融所得課税を比較すると、その課税方式や税率などに大きな違いがあることが分かります。
各国の税制は経済政策や社会保障制度と深く結びついており、一概に「高い・低い」とは判断できません。
特に、日本では今後の税制改正によって金融所得課税が変わる可能性もあり、最新の動向をチェックすることが重要です。

なお、弊社ゴールドトラストで運営している「100億円資産形成倶楽部」では、日本国内で100億円の資産を築く節税方法を伝授しています。
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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。