障がい者グループホームにおける建築基準法の用途とは?手続きの流れも解説

障がい者グループホームにおける建築基準法の用途とは?手続きの流れも解説

障がい者グループホームを建設する際には、通常の住宅やアパートと異なり、さまざまな法令を遵守する必要があります。
建築基準法もその1つで、障がい者グループホームの運営にあたり必要となる知識です。

既存の建物を障がい者グループホームとして利用する場合と新築で建設する場合、どちらも建築基準法や法令を遵守しなければなりません。
そのため、建築基準法の用途や申請の仕方など手続きの流れも知っておく必要があります。

本記事では、障がい者グループホームにおける建築基準法の用途や手続きの流れを解説します。
障がい者グループホームの建築や運営を検討している方は、今後にお役立てください。

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障がい者グループホームの物件タイプ

障がい者グループホームには、下記に挙げる3つの物件タイプがあります。

  1. 戸建て型
  2. アパート型
  3. サテライト型

それぞれの住居形態やメリット・デメリットを見ていきましょう。
運営にあたり、それぞれの物件の設備基準を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】障がい者グループホームの設備基準とは?物件は購入と賃貸どちらが良い?

 

物件タイプ①:戸建て型

戸建て型の障がい者グループホームは、一戸建ての建物を利用します。
一般的なシェアハウスと近いタイプで個人の部屋はありますが、以下は共用です。

  • リビング
  • トイレ
  • キッチン
  • お風呂場 など

就寝時は各個室で過ごしますが、日中はリビングや交流室などで過ごします。
戸建て型のメリット・デメリットは、下表のとおりです。

メリット デメリット
利用者 365日24時間の密着型の支援が受けられる
・孤独を感じにくい
・プライベート空間が少ない
・自由度が低い
事業者 ・重度障がい者の支援ができる
・些細な事故や事件にすぐ気づける
・業務量が多い
・必要な職員の数が増える

利用者にとって、密着したサポートを受けられる点が最大のメリットといえるでしょう。

 

物件タイプ②:アパート型

アパート型グループホームは、マンションやアパートの個室を利用します。
居室には以下が備え付けられており、一人暮らしに近い生活を送れます。

  • お風呂場
  • トイレ
  • キッチン など

そのため、比較的障がいが軽く必要な支援が少ない方向けのグループホームです。
メリット・デメリットは、下表の通りです。

メリット デメリット
利用者 ・プライベートな空間がある
・希望すれば自炊など、一人暮らしの練習ができる
・密着型の支援は受けられない
・個室内での事故は自己責任となる
事業者 ・業務量が抑えられる
・利用者のニーズに応えやすい
・緊急時の対応が遅れやすい
・重度障がい者の受け入れは難しい

戸建て型と異なり、水道光熱費は基本的には利用者が個別で契約します。
基本的には居室内で過ごすため、ヘルパーやスタッフの業務量は戸建て型よりは少ないでしょう。

なお、弊社ゴールドトラスト株式会社では、建物型投資商品としてサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を展開しております。

投資を通じて社会福祉に貢献したい方は、「サービス付き高齢者向け住宅:ゴールドエイジ」のページをご覧ください。

サ高住の建設費用が気になる方は、こちらの記事もあわせてチェックしましょう。

【関連記事】サ高住の建設費用はいくら?コスト削減のコツや業者の選定ポイントを解説

 

物件タイプ③:サテライト型

サテライト型とは、アパートの1室を利用する障がい者グループホームです。
本体住居(アパート型・戸建て型)に付随するため、より一人暮らしに近い形で生活できます。

利用者は基本的に居室であるサテライト型で過ごし、食事や交流の際に本体住居へ移動します。
メリット・デメリットは、下表の通りです。

メリット デメリット
利用者 ・支援が必要なときだけ受けられる
・日中の通所なのでお手軽
・支援員やヘルパーとの関わりが浅くなる
事業者 ・居住エリアが不要なため、面積が小さくてもできる
・業務量が少ない
・サテライト型住居まで通う必要がある
・利用者との関わりが浅くなる

利用者の中には、単身での生活をしたい方もいます。
同時に事業者には、大規模な改修工事を省きたいというニーズもあります。
利用者と事業者双方のニーズに応えた形がサテライト型なのです。

 

障がい者グループホームにおける建築基準法上の用途

障がい者グループホームは建物を新築するときだけではなく、改築する際にも建築基準法を守っているか確認することが必要です。
そこでキーワードになってくるのが、建築基準法上の「用途」となります。

ここでは障がい者グループホームに関連する建築基準法の基礎知識として、以下の2つを解説します。

  1. そもそも用途とは
  2. 物件タイプ別の用途一覧

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

そもそも用途とは

建築基準法における用途とは、「どのような目的で建てるか」を分類したものです。

地域によって、その建物を建てて良いか決めているのが用途地域です。
用途地域は快適な住環境を守るために必要であり、そのために建築物の用途を決めることが必須なのです。

建物を新築する際には、用途を決めて建築申請をします。
一方で既存の建物を改築する場合には、200㎡を超える際に用途変更の手続きが必要です。

障がい者グループホームは物件タイプにより用途が異なるため、次項で詳しく見ていきましょう。

 

物件タイプ別の用途一覧

障がい者グループホームの用途は、下表の通りです。

物件タイプ 用途分類
戸建て型 寄宿舎
アパート型 ファミリータイプ:寄宿舎
ワンルームタイプ:共同住宅
サテライト型 共同住宅

アパート型は3LDKなどのファミリータイプと、1Kや1LDKなどのワンルームタイプで用途が異なります。
ここでは、障がい者グループホームの用途に関する基礎知識として、以下の2つを見ていきましょう。

  1. 寄宿舎
  2. 共同住宅

それぞれ詳しい基準や建築できる地域が異なるため、注意が必要です。

引用元:国土交通省|平成26年寄宿舎に係る基準の合理化(建築基準法)

 

寄宿舎とは

寄宿舎とは一般的に事業者が設置する居住施設で、複数の寝室と共同のお風呂場などを設けた施設を指します。

労働基準法によると、複数人が共同空間において寝食を共にするのが寄宿舎であると定められているので、プライベートな空間が確保されている場合には該当しません。
そのため、プライベート空間があるアパート型の障がい者グループホームは寄宿舎には該当しないのです。

寄宿舎に該当するのは、戸建て型とファミリータイプのアパート型と覚えておきましょう。

引用元:安心衛生情報センター|労働基準法第10章 寄宿舎

 

共同住宅とは

共同住宅とは、1つの建築物の中に2つ以上の住宅があり、エントランスや階段など共用部分がある建築物を指します。
建築基準法では、共同住宅または長屋と表記されるので注意しましょう。

障がい者グループホームのサテライト型、ワンルームタイプのアパート型はマンションと同様の共同住宅に分類されます。

 

【パターン別】障がい者グループホームにおける用途変更の要否

障がい者グループホームを新築、もしくは改築して利用する場合、建築基準法に適しているかの確認が必要です。
この確認が建築確認申請と呼ばれるもので、専門的な知識が必要になるため、建築士へ相談しましょう。

下記の表は新築する場合は建築確認申請、既築物件の場合は用途変更のための建築確認申請の要否を示したものです。

グループホームの用途面積 都市計画区域内※ 都市計画区域外
新築する場合 200㎡以内 不要 必要
200㎡越え 必要 必要
既築物件を用途変更する場合 200㎡以内 不要 不要
200㎡越え 必要 必要

※都市計画法によって定められた地域(市街化区域と市街化調整区域を合わせた区域)

障がい者グループホームの用途面積200㎡をラインとし、都市計画区域内外であるかにより建築確認申請の要否が決まります。
建築確認申請をせずに着手してしまうと、完成後に解体という最悪な事態に陥る可能性もあります。
ここでは2つのパターンに分けて、用途変更など必要な手続きを解説します。

  1. 新築する場合
  2. 既存の物件を利用する場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

引用元:新潟県|令和2年「障害者グループホーム」を新設等する場合は、建築基準法の手続きにご注意ください!

 

パターン①:新築する場合

障がい者グループホームを新築する場合、まずは用途地域を調べます。
寄宿舎もしくは共同住宅が建築可能な地域かを調べ、工事着手の前に建築確認申請を行います。

新築の場合、都市計画区域内、200㎡以内のグループホームであれば建築確認申請は不要です。
ただし、建築基準法を遵守することは所有者の義務にあたるため、不要な場合でも必ず建築士に確認してもらいましょう。

なお、弊社ゴールドトラスト株式会社では、障がい者グループホームの新築をサポートする事業も展開しております。
自社運営の経験を活かした効率的なプランに興味のある方は、「障がい者福祉施設の運営支援・建設ページ」もぜひご覧ください。

 

パターン②:既存の物件を利用する場合

既存の物件を利用する場合、まずは完了検査済証(※)を確認します。
※建築時の建築基準法に適合している証
完了検査を受けていない場合、当時の施工業者や施主に確認する必要があるので注意しましょう。

既存の物件は、グループホームとして利用する用途面積200㎡をラインとして対応が異なります。
200㎡を超えた物件の場合は、都市計画区域内外どちらも建築確認申請後の用途変更が必要です。

なお、建築確認が必要な基準である200㎡は2019年に100㎡から引き上げられています。
建築確認が不要でも、建築基準法に適合するよう維持管理に努めましょう。

また、既存物件は障がい者グループホームだけではなく、リノベーションをすればさまざまな用途で使用できます。
リノベーションのコツや成功事例について知りたい方は、下記の記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】【事例付き】空き家のリノベ需要が増加中?使える補助金や成功のコツも解説

引用元:国土交通省|2019年建築基準法改正リーフレット

 

【3ステップ】建築基準法に沿った用途変更の手続き

用途変更の手続きは、以下の3ステップで完了します。

  1. 確認申請書を作成する
  2. 審査後に確認済証が交付される
  3. 工事後に完了検査を依頼する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

ステップ①:確認申請書を作成する

まずは希望の用途に変更するために、どのような設計が必要かを建築士と相談します。
その際に建築基準法などの法令を遵守する必要があるかどうかも含め、調査が必要です。
建築会社や建築士に相談しながら進めましょう。

同時に、関連法令もチェックが必要です。
建設当時の建築基準法と現行の法令を照合し適合しているか、防火設備なども含めた確認があります。

確認申請書は、希望の用途に変更する計画が建築基準法に適合しているかを述べた書類です。
申請書と同時に下記の書類も必要になるので、準備しておくと良いでしょう。

  • 基本図面(平面図、配置図、求積図など)
  • 地盤調査報告書
  • 構造計算書
  • 電気設備図
  • 建築基準法許可書類など

なお、市街化調整区域での用途変更は建築許可や開発許可が必要となるケースもあるので、注意が必要です。

引用元

株式会社J建築検査センター|2020年確認申請 必要書類チェックシート
福岡市|2024年よくある質問

 

ステップ②:審査後に確認済証が交付される

確認申請後は、申請書類をもとに所轄の建築行政部門で審査されます。
審査の過程で修正や指摘が入ることもありますが、その際は建築士と相談しながら対応します。

このような事態に備えるためにも、相談する建築士や建築会社は幅広い用途の建築物の実績があるかどうか、着目して選びましょう。
申請の承認後は確認済証が交付され、いよいよ建築工事に着手できます。

 

ステップ③:工事後に完了検査を依頼する

着手後は、中間と最後で検査が実施されます。
検査は一定規模以上の建築物に限るため、対象かどうかを確認しましょう。

工事完了後は、自治体に検査を依頼します。
完成した建築物が建築基準法に適合している場合は、建築主事から検査済証が交付されます。
消防法に適合しているかなど、関連法令も今一度確認しましょう。

検査済証の交付がないと建物は使用できないため、注意が必要です。
建物の売却時にも必要となるので、大切に保管してください。

 

障がい者グループホームとして用途変更する際の注意点

障がい者グループホームとして用途変更する際は、下記の2つに注意が必要です。

  1. 適用される規定が厳しくなる場合がある
  2. 構造計算において危険性が増大しないか検証が必要になる

現在の法令だけでなく、過去の法令も視野に入れることが大切です。
障がい福祉サービスに適用される建築基準法の規定についてさらに理解を深めたい方は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。

【関連記事】障がい福祉サービスと建築基準法|法的位置づけや適合が必要な規定など

 

注意点①:適用される規定が厳しくなる場合がある

用途変更後、以前よりも適用される規定が厳しくなる場合があります。
例えば、下表に挙げる2つのケースでは、それぞれ適用される規定が異なります。

規定 2階以下かつ200㎡未満の戸建住宅等を活用する場合 共同住宅の住戸(床面積200㎡以下)を活用する場合
2方向避難の確保
階段昇降の安全性確保
内装の不燃化
煙排出のための窓設置
避難経路の安全性確保
屋外避難通路の確保
寝室と避難経路の防火区域
火気使用室の防火区域

戸建て住宅を活用する場合、用途は寄宿舎に分類されるため、通常の住宅よりも規定が厳しくなっています。
一部条件を満たせば適用外となる規定もあるものの、適用される規定が全体的に厳しくなる分、改修工事などもより多く必要になる点に注意しましょう。

引用元:e-Gov|建築基準法施行令

 

注意点②:構造計算において危険性が増大しないか検証が必要になる

建築基準法は数年ごとに見直しがあり、改正されることもあります。
そのため、既存物件は現行の建築基準法に適合していない可能性がありますが、その場合さかのぼって適合させる必要はありません。

しかし、用途に応じて構造計算を再度行うなどの対応で、危険性が増大しないかの検証が必要となります。
例えば、床の構造計算をするうえで共同住宅の積載荷重は1,800N/㎡、事務所の積載荷重は2,900N/㎡となります。
用途変更をすると検討荷重が増加するため、危険でないことの証明が必要です。

構造計算だけでなく、消防法の観点からなど現行の建築基準法を踏まえ、検討しましょう。

 

まとめ:障がい者グループホーム新設時は建築基準法の用途を確認しよう

障がい者グループホーム新設時には、建築基準法の用途確認が最重要項目の1つとなります。

新築する場合と既存の物件を利用する場合で、用途変更の可否も変わります。
既存の物件を利用する場合は、建築時の検査済証が必要です。

また用途だけではなく、変更手続きの要否や流れも把握し、スムーズに障がい者グループホームを開設できるようにしましょう。

なお、弊社ゴールドトラストでは障がい者に優しい住まいを提供するゴールドテラスを提案しております。
障がい者グループホームの運営や新設に興味のある方は「障がい者福祉施設の運営支援・建設ページ」をご覧ください。

さらに、障がい者グループホーム特別セミナーや資産運用セミナーを常時開催中です。
詳しくはセミナー情報ページをぜひご覧ください。

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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。