家賃の値上げ相場はどれくらい?調査方法や条件を解説|交渉の流れやコツも

家賃の値上げ相場はどれくらい?調査方法や条件を解説|交渉の流れやコツも

近年、物価や土地・建物の評価額が上昇しています。
そのため、「家賃を値上げして少しでも負担を減らしたい」と考えている方も多いでしょう。
入居者に家賃の値上げを伝える際は、事前に周辺の家賃相場を把握したうえで交渉を進めるとスムーズです。

この記事では家賃の値上げ相場や、値上げ相場を調べる方法について解説します。
値上げが認められる条件や家賃交渉の全体的な流れもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。

57c8166fb052ac107fd26b58a5e5c618.png

 

家賃の値上げにも影響する物価上昇の現状

家賃の値上げにも影響する物価上昇は、主に以下に挙げる2つの要因によって引き起こされています。

  1. 生活全体の物価状況
  2. 不動産関連の物価状況

それぞれの状況を確認していきましょう。

 

生活全体の物価状況

総務省が公表している「消費者物価指数」によると、生鮮食品やエネルギーも含んだ総合指数は、前年同月比より2.7%上昇しました(2024年3月時点)。
2年前の2022年3月と比較しても、約6%の上昇となっています。

このような物価高に比例して、家賃相場も着実に上昇しているのが現状です。
時間的なズレはあるものの、物価上昇後は家賃相場も高騰する傾向にあるため、早めに対策したほうが良いでしょう。

引用元:総務省|2020年基準消費者物価指数

 

不動産関連の物価状況

不動産関連の物価も上昇傾向にあるため、必然的に家賃の価格にも影響します。
ウクライナ情勢による建築資材の供給不足や、円安による建築資材の高騰などの要因が重なり、新築マンションの価格は毎年上昇しています。

実際、2023年の首都圏における新築分譲マンションの平均価格は8,101万円でした。
前年の6,288万円よりも約2,000万円も大幅に上昇しており、5年連続で価格が高騰し続けています。
世界情勢や経済状況が落ち着かない限りは、今後も家賃の上昇を抑えるのは難しいでしょう。

建築資材の具体的な高騰理由について知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。

【関連記事】建築資材の高騰はいつまで?原因や不動産投資家ができる対策も解説

引用元:株式会社不動産経済研究所|全国新築分譲マンション市場動向2023年

 

家賃の値上げ相場はどれくらい?

家賃の値上げ相場は下表のように、3,000円未満が半数以上を占めています。

値上された金額 割合
1,000~2,999円 63.6%
3,000~4,999円 28.6%

また、値上げ率は下表のとおりです。

値上げ率 割合
家賃の3%未満 35.1%
家賃の3~5%未満 33.8%

家賃改定した主な理由としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 運営コストの上昇
  2. 家賃相場の高騰
  3. 資産価値の上昇

運営コストは、管理物件を維持するために必要な人件費や水道光熱費の上昇に伴って増加しがちです。
近隣物件の家賃相場に合わせて値上げしたという理由については、中古物件ではなく新築物件の相場が高騰していることが主な原因といえます。

 

家賃の値上げ相場を調べる方法

家賃の値上げ相場は、以下から情報収集できます。

  • 賃貸物件サイト
  • 不動産ポータルサイト
  • 不動産会社

家賃相場を調べる際は、所有している物件の間取りや築年数などの条件がなるべく近い建物と比較するようにしましょう。

また、賃貸物件を多く取り扱っている不動産会社であれば、適正な相場を把握しているので聞いてみるのもおすすめです。
同じような物件の家賃相場を確認したら、所有物件の家賃と比べながら値上げ額を検討しましょう。

なお、家賃を決める際は、政府統計を参考にしてみるのもおすすめです。
全国賃貸管理ビジネス協会でも定期的に全国の家賃動向を調査して公表しているため、あわせてチェックしてみましょう。

引用元:
政府統計の総合窓口(e-Stat)|平成30年住宅・土地統計調査 県別・年県別の家賃状況等
全国賃貸管理ビジネス協会|全国家賃動向

 

家賃の値上げが認められる3つの条件

家賃の値上げを行うことは、オーナーの権利として認められている行為です。
ただし、値上げによって入居者を経済的に不安定にさせてしまう可能性があるため、借地借家法32条に基づいた対応が必要になります。

家賃の値上げが正当なものとして認められる条件は、以下の3つです。

  1. 物価上昇で賃貸経営が圧迫されている
  2. 土地や建物の評価価格が上がって税負担額が増えた
  3. 近隣にある賃貸物件の家賃相場よりも安い

それぞれ確認していきましょう。

引用元:e-Gov法令検索|借地借家法

 

条件①:物価上昇で賃貸経営が圧迫されている

物価上昇で賃貸経営が圧迫されている状況であれば、家賃の値上げは正当な理由と認められます。
物件を維持するための支払いが増加することで、安定的に賃貸経営できなくなっている場合は、値上げは必要不可欠です。

また、賃貸物件の資産価値を向上させる目的で、設備投資やリノベーションする場合も同様です。
必要な費用を確保するための値上げも、正当な理由と認められます。

物件を維持するための具体的な費用が知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

【関連記事】マンション経営にかかる8つの初期費用と5つの維持費を徹底解説

 

条件②:土地や建物の評価価格が上がって税負担額が増えた

土地や建物の評価価格が上がって税負担額が増えたことも、値上げの正式な理由と判断されます。
税金が上がり支出が増える分、安定経営するために多くの収入が必要になるためです。

例えば、周辺地域の開発が進むと利便性が高まり、物件の資産価値が上昇します。
すると、固定資産税や都市計画税の納税額が増加しがちです。
このように社会情勢の変化によってもオーナーの経済的負担は増えるので、価格の変動は仕方がないと判断されます。

なお、納税額を抑えながら節税対策に取り組みたい方は、弊社の「中古再生:ズバッと節税ズバッと償却」をご覧ください。

また、毎年かかる固定資産税の支払いを少しでも軽減したい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみましょう。

【関連記事】固定資産税を減税!知っておきたい申請方法や基本知識を解説

 

条件③:近隣にある賃貸物件の家賃相場よりも安い

近隣にある賃貸物件の家賃相場よりも安い場合も、家賃の値上げが認められる理由の1つです。

借地借家法32条では土地もしくは建物の価格が変動し、家賃と比較して釣り合わないのであれば、契約条件にかかわらず増減できると記載されています。
実際、再開発や新駅設置が行われた場合は利便性が向上し、入居需要が高まるにつれて家賃相場も上がります。

周辺物件の家賃相場が上昇しているのであれば、なるべく早めに家賃を値上げする旨を入居者へ伝えて手続きを進めましょう。

 

家賃の値上げができないケース

家賃の値上げができないケースは、主に以下の3つです。

  1. 家賃収入を増やすためだけの値上げ
  2. 契約書に記載した内容と異なる値上げ
  3. 家賃相場を大幅に上回る値上げ

トラブルを回避するためにも、事前に内容を把握しておきましょう。

 

ケース①:家賃収入を増やすためだけの値上げ

家賃収入を増やすためだけの値上げは、原則不当な値上げと判断されます。
オーナーの個人的な値上げの増額は、入居者にとって不公平なためです。

正当な理由なく家賃の上昇を通告した場合、法的な問題に発展するケースがあります。
家賃を値上げしたければ、合理的な理由が必要です。

 

ケース②:契約書に記載した内容と異なる値上げ

契約書に記載した内容と異なる値上げである場合も、家賃の値上げは認められません。
例えば、オーナーと入居者との間で結んだ賃貸借契約書に「3年間は家賃を固定する」などの条件が設定されていたとします。

定められた期間内は、社会情勢の変化や周辺物件における家賃相場の上昇があったとしても、契約に基づいて家賃の値上げは許可されません。
契約書の信頼性を確保し、入居者との公平な関係を築くためにも、契約書の記載内容と異なる値上げは行わないようにしましょう。

 

ケース③:家賃相場を大幅に上回る値上げ

周辺の家賃相場に合わせて価格を変更することは可能ですが、大幅に上回る値上げは許可されません。
家賃を大幅に値上げすると、入居者の経済状況に大きく影響を与えて、生活に支障をきたす可能性があるからです。

また、値上げを拒否して退去するにも時間や費用がかかるため、入居者は簡単に値上げを断れない立場にあります。
対等な関係を維持してトラブルを回避するためにも、家賃相場を大幅に上回る値上げは避けましょう。

 

家賃を値上げする際に押さえたい流れ

家賃を値上げする際の全体的な流れは、以下の5つです。

  1. 家賃の値上げ金額と値上げする時期を決める
  2. 入居者に家賃を値上げしたい旨を伝える
  3. 入居者と家賃値上げについて交渉する
  4. 入居者との話し合いがまとまれば合意書を作成する
  5. 万が一、話し合いがまとまらなければ法的手段をとる

まずは、家賃相場との差異を確認しつつ、メンテナンスにかかる費用などを算出して、値上げ額を検討します。
入居者に値上げを告知した際は入居継続や退去を検討できるよう、十分な時間を与えることも必要になります。

値上げ交渉のコツについて知りたい方は、後述の「リスクを回避して家賃の値上げを成功させるコツ」もぜひ参考にしてください。

 

家賃の値上げによって起こりうるリスク

家賃の値上げによって起こりうるリスクは、以下の2つです。

  1. 退去者が増える
  2. 入居者との関係性が悪くなる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

リスク①:退去者が増える

家賃の値上げを入居者に伝えると、退去者が増えて家賃収入が減少するリスクがあります。
値上げに不満な入居者は金銭的負担を回避するために、同条件で家賃が安い物件に引っ越しする可能性があります。

また、大幅な値上げが行われると、家賃の滞納や最悪の場合として夜逃げされるケースも発生するでしょう。
夜逃げが起こると、前入居者との契約を法的に解除してから新たに住人を探す必要があり、手間や時間がかかります。

家賃を値上げする際は退去者が増えて家賃収入が減るリスクがあるため、入居者の反応を伺いながら慎重に交渉することが大切です。

 

リスク②:入居者との関係性が悪くなる

家賃の値上げ交渉が決裂して拒否されてしまうと、入居者との関係性が悪くなる可能性があります。
家賃の値上げはオーナーの権利ですが、入居者にも値上げを断れる権利があります。
そのため、値上げの正当な理由を提示したとしても、入居者が納得しないのであれば値上げすることは困難です。

また、強引に値上げを行った場合は、訴訟を起こされるリスクもあります。
訴訟に発展してしまうと、時間がかかるだけでなく弁護士費用などの追加費用が発生します。

関係性悪化を最小限に抑えることを意識しながら、値上げ交渉を行いましょう。

 

リスクを回避して家賃の値上げを成功させるコツ

リスクを回避して家賃の値上げを成功させるコツは、以下の3つです。

  1. 入居者へ丁寧に説明する
  2. 空室から値上げする
  3. 不動産管理会社と連携する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

コツ①:入居者へ丁寧に説明する

家賃の値上げに合意してもらうには、入居者に「なぜこのタイミングで値上げが必要なのか」という正当な理由を丁寧に説明する必要があります。
納得してもらえるような判断材料になる資料やデータを用意することで、スムーズに値上げに合意してもらいやすくなるでしょう。

また、家賃の値上げに伴って、入居者にメリットのある条件を提示することも大切です。
例えば、以下のような別条件を提案することで交渉を円滑に進めやすくなります。

  • 無料で宅配ボックスを設置する
  • 無料で使えるWi-Fiを導入する
  • 次回分の更新料を無料にする

家賃の値上げは入居者にとって、経済的な負荷が高まります。
そのため、負担を少しでも減らしてあげたいという意志を伝えることで交渉が円滑に進むでしょう。

 

コツ②:空室から値上げする

家賃の値上げ交渉が思うように進まない場合は、入居者のいない空室から値上げすることも有効です。
値上げした家賃で募集した際に、応募人数が多ければ値上げ後の家賃が適切であると判断できます。

一方で、値上げ後の家賃で募集が極端に少ないのであれば、値段を再検討する必要があります。
このように、空室から値上げすると値上げ後の家賃が妥当であるか確認できるので、まずは空室から値上げしてみるのも効果的です。

なお、空室が長期間続いており悩んでいる方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】空室問題に悩まない!成功するための7つのアイデアとポイント解説

 

コツ③:不動産管理会社と連携する

家賃の値上げを検討しているのであれば、不動産管理会社と連携して交渉することもおすすめです。
周辺物件の家賃相場をよく知っている分、入居者に家賃を値上げする場合の根拠となるデータを提示しながら交渉を進めてくれるでしょう。

また、値上げ交渉の経験が豊富な会社であれば、以下のようなサポートも受けられます。

  • 入居者が納得できるような条件やアドバイスの提案
  • 家賃の値上げを通知する書類の作成
  • 交渉窓口としての対応 など

なるべく負担を減らしながら家賃の値上げを実施したいのであれば、不動産管理会社と連携して手続きを進めてみましょう。

なお、弊社ゴールドトラストでは、物件や入居者など種々の管理業務をプロがサポートしております。
不動産投資を成功させたい方は、「賃貸マンションアパート(一棟買い):トチプラス」もあわせてチェックしてみてください。

 

家賃の値上げでトラブルが起きたときに取れる法的手段

入居者と家賃の値上げでトラブルが起きた際は、以下の法的手段を検討する必要があります。

  • 簡易裁判所での調停
  • 裁判所での正式な訴訟

簡易裁判所での調停は、公正な立場である調停委員会が仲介し、当事者同士の意見を成立させるための手続きです。
訴訟と比較して、経済的にも時間的にも最小限の労力で解決できるうえに、当事者同士の関係を保ちながら穏便に済ませられる傾向にあります。

調停を行ってもトラブルが解決しない場合は、裁判所で正式に訴訟を起こすことが必要です。
裁判官による公正な判断を求める手段であり、法的拘束力の強い判決が下されます。

しかし、訴訟には多額の費用が必要なうえに、解決するまでに時間がかかるケースがあります。
そのため、訴訟を起こす前にできる限り平和的に解決できる手段を模索することがおすすめです。

 

まとめ:家賃相場を把握して値上げ交渉を進めよう

周辺物件の家賃相場を把握してから値上げ交渉を進めることで、入居者とのトラブルを回避しやすくなります。
値上げの根拠を説明できる資料や、不動産管理会社による適切なアドバイスが加われば、納得感が増してスムーズに交渉できるでしょう。

なお、アパート・マンション経営を効率的に進めたい方は、専門家から具体的なアドバイスを受けながら資産運用に取り組める100億円資産形成倶楽部への入会もおすすめです。

「将来のために資産形成したい」と考えている方は、オンラインセミナーもあわせてチェックしましょう!

57c8166fb052ac107fd26b58a5e5c618.png

【関連記事】賃貸収入に直結!入居率を上げるコツや計算方法・地域別の平均一覧を解説
【関連記事】マンション経営で赤字?対処法や赤字にならない対策も徹底解説
【関連記事】マンション経営で節税する仕組みは?対象となる税金をわかりやすく解説

この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。