不動産特定共同事業法とは?基礎知識と改正ポイントを徹底解説!
不動産特定共同事業法は、複数人に投資を募って行う不動産投資に対する規制として制定された法律で、これまで数回の法改正が行われています。
購入に資金のかかる不動産を複数人で分割する事業方式は、手軽に始められて初心者にも人気がある反面、リスクも存在しており、投資家を守るため、こうした法律が作られました。
今回は、不動産投資を行う上で知っておきたい不動産特定共同事業法の基礎知識と法改正のポイントを解説していきます。
目次
不動産特定共同事業法とは
はじめに、この法律が制定されることになった背景や目的、効果をご説明します。
施行された背景と目的
通称「不特法」とも呼ばれ、小口の出資額で投資を募り、不動産の購入・運用を行って収益を還元する方式の不動産投資事業において、運営の適正化や投資家の保護、健全な発展に寄与することを目的として1995年4月に施行されました。
高額の元手が必要な不動産投資ですが、多くの投資家から出資を募る方法は、誰でも手を出しやすく、人気がありました。
1980年代の法律制定以前には、不動産を小口化した商品の販売が盛んでした。しかし、1991年バブル崩壊が起こると経営破綻する事業者が続出し、倒産ラッシュが起きてしまいます。
その結果、投資家が大きな損失を蒙ったことを受けて、不動産小口化商品の出資者を守ることを目的に、この法律が作られました。
不動産特定共同事業法の効果
制定後、不動産特定共同事業を運営するためには、原則として金融庁長官・国土交通大臣、都道府県知事のいずれかの許可が必要になりました。
この法律によって参入障壁は高くなりましたが、健全な経営状態の事業者のみが事業を運営できるようになり、投資家はより安全な出資が可能になったといえます。
不動産特定共同事業者とは
不動産特定共同事業法では、規制対象と定められている事業者を不動産特定共同事業者といいます。続いては、不特法における事業および事業者の種類・要件を解説します。
不動産特定共同事業の契約類型
不動産特定共同事業は契約類型によって「任意組合型」「匿名組合型」「賃貸委任契約型」の3種類に分かれます。
任意組合型 | 投資家と事業者の間で任意組合契約を結ぶ方式です。 事業者は組合の代表となって不動産の運用・管理を行い、投資家は出資額に応じた共有持分を購入し、それを組合に現物出資する形になります。 |
匿名組合型 | 投資家と事業者の間で匿名組合契約を結ぶ方式です。 事業者は不動産を運用し、投資家は匿名組合員として事業者に出資し、出資額に応じて収益の分配を受けます。 任意組合型と異なり、投資家には不動産の所有権がありません。 不動産クラウドファンディングの多くは、この形式に属しています。 |
賃貸委任契約型 | 投資家が事業者に不動産を賃貸または賃貸委任する契約を結び、事業者は不動産を運用した収益を分配する方式です。 |
不動産特定共同事業者は事業や出資額に応じて4つに分類されます。
事業者の種類 | 出資額 | 事業内容 |
第1号事業者 | 1億円 | 不動産特定共同事業契約を締結し、不動産取引や収益の配分を行う事業者。 |
第2号事業者 | 1,000万円 | 不動産特定共同事業契約の締結の代理または媒介を行う事業者。 |
第3号事業者 | 5,000万円 | 特例事業者から委託され、不動産特定共同事業契約により、不動産取引業務を行う事業者。 |
第4号事業者 | 1,000万円 | 特例事業者に代わって不動産特定共同事業契約の締結の代理または媒介を行う事業者。また、事業者の許可を受けるには、以下の5つの要件を満たす必要があります。 |
① 投資家からの出資額が、事業者の種類に応じた出資額以上である。
② 事業を運営できる財産的基盤と遂行できる人的構成がある。
③ 不特事業における契約約款の基準を満たしている。
④ 宅地建物取引業者免許を取得している。
⑤ 事務所ごとの業務管理者を配置している。
(業務管理者になれるのは、不動産特定共同事業で3年以上の実務経験を有する者やビル経営管理士などの資格をもつ者)
不動産特定共同事業法における改正のポイント
1995年の制定後も、主に投資の活性化を目的として2013年、2017年、2019年の3回にわたる法改正が行われています。
それぞれの改正内容とポイントをみていきましょう。
ポイント①:2013年に改正された内容
2013年の改正で導入されたのが、「特別目的会社(SPC)」の活用による「特例事業」の導入です。
SPCは資金調達や利益の分配など目的とする会社です。
この改正で不特事業のためにSPCを設立し、ほかの事業への影響を最小限にする倒産隔離型により、特例として第1号事業の許可なしで参入可能になりました。
しかし、税制面や中小の事業者が参入しにくいなどの問題があり、投資促進の効果は限定的でした。
ポイント②:2017年に改正された内容
2017年の改正では新たに「小規模不動産特定共同事業」が導入され、中小企業など幅広く、特例事業への参入を可能にしました。
また、インターネット上での出資手続きやオンライン取引の許可によるクラウドファンディングへの対応や特例投資家のみが出資する場合の約款規定撤廃など、多角的な改正で2013年には不十分に終わった規制緩和のさらなる促進を目指しています。
ポイント③:2019年に改正された内容
2019年の改正では、2017年に導入された不動産クラウドファンディングのさらなる活性化が図られました。
ホームページでの表示適正化や情報漏洩への対応などを盛り込んだ電子取引に関するガイドラインの策定や不動産特定共同事業法施行規則など関係法令の改正により、クラウドファンディングへの投資促進を目指しています。
不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングとは
不動産クラウドファンディングは、2017年の改正以降導入された仕組みで、インターネットを通じて不特定多数の投資家から出資を募り、不動産の購入や運用を行い、利益を配分する投資方法です。
運用する不動産の紹介や出資者の募集を主にオンラインで行うのが特徴で、投資期間や運用利率などがオープンにされているため、投資家は自分に合った投資を選べます。
以前は取引には書面の交付が必要でしたが、2017年改正により、手続きが簡略化されており、すべてパソコン操作のみで済ませられるようになりました。
不動産投資のなかでも、投資家にとって最も参入の簡単な方法の1つで、不動産業界では、今後もさらなる発展が期待されています。
【関連記事】不動産クラウドファンディングとは?利用するメリットやデメリットを徹底解説
まとめ
複数人に小口の出資を募って行う不動産投資商品で、投資家の保護を目的として制定された不動産特定共同事業法は、投資家が安定して長期に不動産投資を行える環境を守りながら、不特業を活性化するため、これまで3回の改正が実施されてきました。
2017年、2019年の改正では新しい仕組みへの対応も図られており、不動産投資を行う際には大切な法律といえます。
ぜひ、本記事を参考にして法律への理解を深めてみてください。
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