法人税率はいつから・どれくらい上がる?増税が進む理由や節税対策も解説
「法人税率はいつから・どれくらい上がる?」と疑問を感じる方も多いでしょう。
税負担をなるべく抑えるには、法人税率が上がる時期や幅を踏まえたうえで、節税対策が欠かせません。
現在、法人を運営している方はもちろん、今後法人化を考えている個人の方も法人税率の動向について理解を深めておくことが重要です。
この記事では、法人税率はいつから・どれくらい上がるかを解説します。
税制改正で法人税率が上がる3つの理由や、法人税の増税に備える節税対策もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
法人税率はいつから上がる?
法人税率が上がる旨は、2024年12月20日に与党から公表された「2025年度(令和7年度)税制改正大綱」に組み込まれており、2026年4月1日から実施されます。
2025年度の税制改正では、他にも下表のような点で法人に関係する見直しが実施されました。
項目 | 見直し例 |
中小企業者等の法人税率の特例 | 適用期限の2年延長 |
中小企業経営強化税制 | |
中小企業投資促進税制 | |
外国子会社合算税制 | 課税対象金額などの益金算入時期を変更 |
特別償却制度の新設 | 再資源化事業等高度化設備を取得した際に取得価額の35%の特別償却が可能 |
グローバル・ミニマム課税 | 各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税の創設 |
リースに関する取引 | リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例を廃止 |
中小企業に関する特例などの適用期限が延長されていますが、2年後には廃止される可能性があるので、廃止後の対策を今のうちに検討しましょう。
引用元:財務省|令和7年度税制改正の大綱
法人税率はどれくらい上がる?
法人税率はどれくらい上がるかについて、以下の2点から解説します。
- 付加税率
- 法人税の計算方法
基本となる付加税率をチェックしてから、具体的な計算方法を確認しましょう。
付加税率
2025年度の税制改正で実施される法人税の付加税率は、4%です。
具体的には、各課税事業年度の課税標準法人税額に4%の税率を乗じて計算した金額が税額となります。
法人の種類や規模によっても異なりますが、法人税を23.2%とした場合には、実質的な増税の幅は以下の通りです。
23.2%×4%≒1%(0.928%) |
上記のように、法人税が23.2%のケースでは所得の1%程度で増税することが分かります。
なお、2025年度の税制改正で設けられた法人税における4%の付加税率は、「防衛特別法人税」と呼ばれています。
引用元:財務省|令和7年度税制改正の大綱
法人税の計算方法
法人税の計算方法を、以下の2点から解説します。
- 基本的な法人税率
- 増税前後の計算シミュレーション
どの程度影響を受けるか把握するためにも、ご自身の法人の状況と照らし合わせながらチェックしましょう。
基本的な法人税率
普通法人の基本的な法人税率は、下表のように資本金など条件によって異なります。
区分 | 所得金額 | 法人の種類 | 税率 |
資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | ||
年800万円超の部分 | 23.2% | ||
上記以外の普通法人 | 23.2% |
適用除外事業者とは、法人の事業年度開始前3年以内に終了した各事業年度の所得の平均金額が15億円を超える法人のことです。
例えば、適用除外事業者以外の法人において課税所得が3,000万円だった場合の法人税を計算してみましょう。
項目 | 計算方法 |
800万円以下の部分 | 800万円×15%=120万円 |
800万円を超えた部分 | (3,000万円-800万円)×23.2%=510.4万円 |
上記のケースでは、「800万円以下の部分」と「800万円を超えた部分」を合計した630.4万円が税額となります。
ご自身の法人の資本金や課税所得を踏まえて税率をチェックし、法人税を計算しましょう。
引用元:
・国税庁|No.5759法人税の税率
・国税庁|No.5432措置法上の中小法人及び中小企業者
増税前後の計算シミュレーション
増税前後の計算シミュレーションをする前に、増税後の付加税率を用いた計算方法を確認しましょう。
(基準法人税額-基礎控除額500万円)×税率4% |
なお、基準法人税額は所得税額や外国税額の控除などを適用しない状態で計算した法人税額を指します。
適用除外事業者以外の法人の課税所得が6,000万円であると想定した場合、増税前後の計算シミュレーションは下表の通りです。
項目 | 計算方法 | |
増税前 | 800万円以下の部分 | 800万円×15%=120万円 |
800万円を超えた部分 | (6,000万円-800万円)×23.2%=1,206.4万円 | |
法人税の合計 | 120万円+1,206.4万円=1,326.4万円 | |
増税後 | 800万円以下の部分 | 800万円×15%=120万円 |
800万円を超えた部分 | (6,000万円-800万円)×23.2%=1,206.4万円 | |
付加税率の部分 | (120万円+1,206.4万円-500万円)×4%=33.056万円 | |
法人税の合計 | 1,326.4万円+33.056万円=1,359.456万円 |
課税所得が6,000万円の場合は、付加税率分によって法人税が約33万円増加しています。
また、基準法人税額が基礎控除額である500万円以下のケースでは、付加税率の部分は発生しません。
ご自身の法人の基準法人税額を算出してから、付加税率の部分が発生するか、どの程度の税額が追加になるかシミュレーションしましょう。
税制改正で法人税率が上がる3つの理由
税制改正で法人税率が上がる理由は、以下の3つです。
- 防衛力強化に向けた財源を確保するため
- 収益が大きいため
- 内部留保が多くなっているため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
理由①:防衛力強化に向けた財源を確保するため
2025年度の税制改正で法人税率が上がるのは、防衛力強化に向けて安定的な財源を確保することが理由の1つです。
法人税における税率4%の新たな付加税は、防衛力強化を目的としている点を踏まえて「防衛特別法人税」と呼ばれています。
2025年3月時点で、国際的な安全保障環境には以下のような背景があり、日本も防衛力の強化が必要な状況です。
- 中国・北朝鮮・ロシアにおける軍事力の強化
- 北朝鮮による弾道ミサイルの発射
- 尖閣諸島や南シナ海をめぐる問題
- ロシアによるウクライナ侵略
上記の事情を含めて安全保障環境は急速かつ複雑に変化しており、対応するためには防衛力強化が欠かせません。
今後の法人税を考えるうえでも、世界情勢や安全保障環境をチェックしましょう。
引用元:
・防衛省・自衛隊|令和6年版防衛白書
・防衛省・自衛隊|なぜ、いま防衛力の抜本的強化が必要なのか
理由②:収益が大きいため
法人税は税収に占める割合が多い税目である「基幹税」の1つであり、税率アップによって大きな税収アップを見込めます。
また、法人税はほかの基幹税である消費税・所得税と比較すると税収が伸び悩んでいることも、税率が上がる要因です。
実際、財務省が発表している「一般会計税収の推移」のデータによると、法人税を含めた基幹税の税収は、下表のように推移しています。
種類 | 2013年度 | 2018年度 | 2023年度 |
法人税 | 10.5兆円 | 12.3兆円 | 15.9兆円 |
消費税 | 10.8兆円 | 17.7兆円 | 23.1兆円 |
所得税 | 15.5兆円 | 19.9兆円 | 22.1兆円 |
2013〜2023年度の10年間で法人税は5兆円程度の増加に留まっている一方で、消費税・所得税の増加幅は6〜12兆円です。
特に消費税は2014年と2019年に税率を上げているため、大きな増収につながりました。
また、財務省の「法人企業統計調査」によると、法人企業の経常利益は2021年度から3年連続で上昇しており、法人税をアップできる余地があると判断されています。
法人税は税収に占める割合が多い重要な税目であるため、今後も動向をチェックしましょう。
引用元:
・財務省|一般会計税収の推移
・財務省|2023年度年次別法人企業統計調査
理由③:内部留保が多くなっているため
2025年度の税制改正まで法人税の税率は下がる傾向にありましたが、減税しても内部留保が多くなっているため、増税に転じたと考えられます。
内部保留とは利益剰余金とも呼ばれ、企業の最終的な利益のうち社内に蓄積される資金のことです。
実際に、財務省の公表している「法人税率の推移」から、法人税における基本税率の推移をチェックしましょう。
年 | 税率 |
1984年 | 43.3% |
1999年 | 30% |
2012年 | 25.5% |
2018年 | 23.2% |
1984年には43.3%であった法人税は、2018年には現行の23.2%にまで減税されています。
また、財務省の「法人企業統計調査」によると、全産業における内部保留の推移は下表の通りです。
年 | 増加率 |
2021年 | 6.6% |
2022年 | 7.4% |
2023年 | 8.3% |
直近3年間で内部保留は増加しており、2023年には12年連続で過去最高を更新して600兆円を超えました。
法人税が減税されても企業の資金が設備投資などに回らず、効果が出ていないため、2025年度の税制改正によって増税となっています。
中小企業の法人税率は優遇措置が延長?増税以外の動き
2025年度の税制改正によって、中小企業者における法人税率の優遇措置は適用期限の2年延長が決定しました。
中小企業における法人税率の優遇措置とは、所得の年800万円以下について税率15%を適用する制度で、資本金1億円以下の法人などが対象です。
ただし、2025年度の税制改正では、所得が年10億円を超える場合、年800万円以下の金額に適用される税率は17%に引き上げられることが決まっています。
また、中小企業は下表の2点についても適用期限が2年延長されています。
種類 | 内容 |
中小企業経営強化税制 | 経営力向上計画に基づいて対象設備を取得した場合に、即時償却または取得価額の10%の税額控除が選択適用できる |
中小企業投資促進税制 | 機械装置などの対象設備を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除が選択適用できる |
適用期限の延長を上手に活用して、期間内に設備投資などを進めましょう。
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【法人税以外も】防衛財源を確保するために上がる税金
防衛財源を確保するために上がる税金は、法人税以外に以下の2つがあります。
- 防衛特別所得税
- たばこ税
それぞれの税目について、付加税率や適用時期などをチェックしましょう。
税金①:防衛特別所得税
防衛特別所得税とは、防衛財源を確保するために設けられた付加税です。
通常の所得税額に対し、1%の付加税を課税します。
防衛財源の確保を目的とした所得税の増税は、令和5年度税制改正の大綱に盛り込まれていました。
適用時期を2024年以降としていましたが、2027年1月以降に実施するとして検討が進められています。
なお、家計の負担を考慮して、復興特別所得税の税率を1%引き下げる予定です。
復興特別所得税とは、復興に必要な財源確保を目的として徴収する税金で所得税に上乗せされており、税率は2.1%となっています。
防衛特別所得税の実施時期は法人税の増税よりも先ですが、早期のうちに節税対策を検討しましょう。
引用元:
・財務省|令和5年度税制改正の大綱の概要
・国税庁|個人の方に係る復興特別所得税のあらまし
税金②:たばこ税
2025年度の税制改正により、防衛財源の確保を目的として「たばこ税」の増税も決定しています。
具体的には、加熱式たばこの税率を引き上げて、紙巻きたばこと同水準にする予定です。
たばこ税の増税は法人税と同様に2026年4月から適用し、4月と10月の2回に分けて実施されます。
なお、加熱式たばこの銘柄によって税額が異なるものの、値上げの目安は1箱を20本とした場合40円以上です。
最大で100円の値上げも想定されており、加熱式たばこの利用者にとっては影響が大きいといえます。
引用元:財務省|令和7年度税制改正の大綱
法人税の増税に備える節税対策
法人税の増税に備える節税対策は、下表の通りです。
種類 | 対策内容 |
経費計上 | ・役員報酬を増やす ・経営者の旅費日当を支給する ・接待交際費を支給する ・不良在庫を処分する ・福利厚生を充実させる ・経営者の自家用車を社用車に転用する ・中小企業倒産防止共済制度に加入する |
決算 | ・未払金・買掛金の計上漏れを防ぐ ・貸倒処理を行う ・繰越欠損金を利用する |
どの対策が効果的かは財務状況によって異なるため、まずは法人の財務状況を精査する必要があります。
また、法人税の対策について判断に迷う場合は、税理士など専門家へ相談することが大切です。
法人税の増税は2026年4月1日から実施されるので、余裕を持って対策を進めましょう。
法人税が上がる前にできる不動産を活用した節税対策
法人税が上がる前にできる不動産を活用した節税対策を、以下の2点から解説します。
- 基本的な節税対策
- 物件売却時の節税対策
それぞれの対策を実践して、税負担を軽くしましょう。
基本的な節税対策
不動産を活用する基本的な節税対策は、以下の通りです。
- 経営者や従業員の自宅を社宅扱いにする
- 不動産投資を始める
- 建物の購入は借入金で対応する
- 資産計上を細分化する
- 売却損は繰越控除を適用する
例えば、経営者や従業員の自宅を社宅扱いにすると、企業が支払う家賃と入居者から集めた賃料の差額を経費として扱えます。
不動産に特化した法人の節税対策について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】【不動産特化】法人の節税対策5選!法人化すべき人の特徴や相談先も解説
物件売却時の節税対策
法人が物件売却時にできる節税対策は、以下の通りです。
- 減価償却できる物件を新たに購入する
- 不動産売却で得た利益を分散させる
- 自社事業へ再投資する
- 特例を有効活用する
物件売却時の特例は、下表のような種類があります。
種類 | 控除額 |
収用等の場合の特別控除 | 5,000万円~ |
特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除 | 2,000万円 |
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除 | 1,500万円 |
2009年及び2010年に土地等を取得した場合の特例制度 | 1,000万円 |
上記に該当する場合は大きな節税となるので、積極的に活用しましょう。
不動産を売却したときにかかる税金や節税対策が気になる方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】【法人向け】不動産を売却したときにかかる税金とは?計算方法や節税対策も
法人税の節税対策には不動産投資もおすすめ
法人税の節税対策には、効果を得やすい不動産投資もおすすめです。
不動産投資に取り組むと、以下のような費用を経費として計上することで節税効果を得られます。
- 保険料
- 固定資産税
- 管理会社への業務委託料
- 減価償却費
- 修繕費
- ローン金利
- 司法書士への報酬
特に経費の大部分を占める建物の購入費用を、長期的に減価償却できるのが大きなメリットです。
また、不動産の種類によっては、社会貢献をしながら投資に取り組めます。
法人として社会貢献しながら不動産投資を進めたい場合は、ゴールドトラストの「サービス付き高齢者向け住宅:ゴールドエイジ」をチェックしましょう。
そのほかにも、早期から不動産投資で収益を上げたい場合は、「賃貸マンションアパート(一棟買い):トチプラス」を、分譲型マンション・アパート投資に興味がある場合は「分譲型マンション・アパート投資(一棟買い):エステシア」をご覧ください。
※不動産投資による節税は物件などの条件により効果が異なります。節税を目的とした投資をする際は専門家のサポートを受けながら行いましょう。
まとめ:法人税率は2026年4月から上がる
防衛力強化に向けた安定的な財源確保を目的として、法人税率は2026年4月1日から上がる予定です。
中小企業の法人税率は優遇措置が延長されていますが、見直しされている部分もあるため、税制改正の内容についてあらかじめチェックしましょう。
なお、弊社ゴールドトラストでは、資産を築いた経験から開発した100億円資産形成のメソッドを提供しています。
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