ノンリコースローンとは?不動産取引をするなら知っておきたい特徴やメリットを解説
不動産投資のローンの仕組みについて勉強していると、ノンリコースローンという言葉をよく見聞きします。しかし、ノンリコースローンがリコースローンと比べてどのような特徴があり、不動産取引においてメリットがあるのかについて、その多くは知られていません。
今回は、不動産投資においてノンリコースローンの利用を検討している方に向けて、具体的な特徴やメリット、どのような人におすすめなのかをわかりやすく解説していきます。
目次
ノンリコースローンの概要
まずは、ノンリコースローンの意味についてご説明します。
ノンリコースローンは「遡及しない融資」のこと
ノンリコースローンは、非遡及型融資と呼ばれており、ローン返済の責任範囲を限定できる遡及しないローン形式のことです。たとえば、その時点で5,000万円の評価額の不動産を担保として借り入れを行った場合、何らかのトラブルで返済不能になったとき、差額があったとしても不動産だけを担保にするだけで差額分を支払う義務がありません。
そのため、担保となった不動産を売却したら、そのあとの残債はゼロとなり、借金を少しずつ返済する必要はありません。
ノンリコースローンがリーマンショックの引き金になった過去
ノンリコースローンの仕組みは、非常に魅力的ですが、リーマンショックの引き金になった過去があります。不動産投資家なら低所得者用住宅ローンのサブプライムローンのことをご存じでしょう。
サブプライムローンは、担保となった土地の価格が上がれば債権がしっかりと返済可能と判断されて、資産担保証券(CMBS)が売りに出されました。しかし、実際はサブプライムローンの担保となった不動産に新たなCMBSを作成し、債務関係が復元不可となり、リーマンショックが起こってしまいます。
このような事態にならないようにするためには、正しく仕組みを理解し、運用していく必要があります。
ノンリコースローンとリコースローンの違いとは
次に、リコースローンとの違いについてご説明します。そもそも、リコースには、償還や遡及という意味があります。償還とは、債務を返済することです。一方で、遡及とは特定の時点まで遡ることをいいます。つまり、リコースローンは、債務を返済するために特定の時点まで遡るローン形式ということです。
一方で、ノンリコースローンは、債務者に対して責任の範囲を限定し、遡らないローン形式です。債務を返済するためにある時点まで遡るのか、遡らないかの違いなので、わかってしまうと簡単です。
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ノンリコースローンが持つ2つのメリット
ノンリコースローンは、責任範囲と他の資産への影響において、大きく2つのメリットがあります。
メリット①:ローン返済の責任範囲を限定できる
ノンリコースローンの最大のメリットは、ローン返済の責任の範囲を限定できることです。そのため、不動産を売ってしまえば、それ以上の返済義務が発生しません。
メリット②:返済不能時に、他の資産へ影響しない
会社経営者の方が不動産投資をする場合、借金が他の事業に影響することを気にして投資を始められないというケースは意外と多いです。
ノンリコースローンなら万が一返済が困難な状態に陥ってしまったとしても、金融機関に物件を渡してしまえば、返済の必要はないため、他の資産への影響はありません。
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ノンリコースローンが持つ3つのデメリット
ノンリコースローンは、メリットばかりではありません。大きく次の3つのデメリットがあります。
デメリット①:不動産担保ローンとして利用できる金融機関が限定される
一般的にノンリコースローンは、世界で知名度のあるローン形式です。そのため、世界では取り扱いが多くても日本では知名度が低く利用者が少ないため、不動産担保ローンとして利用できる金融機関が限定されています。
しかし、少しずつ知名度を高めつつありますので、不動産はもちろん、他のサービスでもノンリコースローンが採用されていくでしょう。
デメリット②:金利が高い
ノンリコースローンは、一般的なローンと比べて金利が高く設定されているケースが多いです。なぜなら、不動産投資家が返済不能となった場合、そのほとんどのリスクを金融機関が追うことになるからです。
デメリット③:審査が厳しい
ノンリコースローンの審査は、非常に厳しく、金融機関を納得させられなければ利用は難しいです。たとえば、対象物件の収益性が低い場合、審査は通りません。一般的には、物流施設や商業施設・店舗、ヘルスケア施設などが審査対象となります。
また、日本でも一部の金融機関では、賃貸物件のうち戸建てや事務所、アパート・マンションでノンリコースローンが利用可能なことがあります。しかし、それは非常に珍しいケースだと思っておきましょう。
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ノンリコースローンを利用するなら知っておきたい2つの契約
不動産投資の際、今後ノンリコースローンの利用を検討しているのなら、次の制約条項(コベナンツ)と責任財産限定特約の2つの契約について知っておきましょう。この2つの契約は、返済時の責任の所在や融資条件と密接に関係している契約のため、しっかりと調べてから契約しないと不利な条件での契約締結となってしまうことがあります。
不利な条件での契約締結とならないようにするためにも、どのようなことが目的で行われる契約なのかチェックポイントをご説明します。
契約①:制約条項(コベナンツ)
制約条項は、コベナンツとも呼ばれる契約で、金融機関が融資の際、顧客に求める条件が記された契約のことです。この契約により、金融機関は債権者として資金回収に伴うリスクを軽減しています。実際には、次のようなことが記されているケースが多いです。
・対象の不動産を他の融資担保に利用してはいけない
・純資産やキャッシュフローを一定水準維持すること
融資に向けて金融機関からの要求が記されているため、しっかりチェックしておきましょう。
契約②:責任財産限定特約
責任財産限定特約とは、ノンリコース条項とも呼ばれる契約で、融資の責任の具体的な範囲が記されています。具体的には、次のようなものです。
・債権者は、責任対象となる財産以外に強制執行を実行しない
・返済の原資となるものは、責任財産に限定される
・責任財産を処分しても残債がある場合、債権者は債権放棄した状態となる
ローンの返済が滞った時、責任や権利がどのような状態になるのかが明記されているため、不明確なまま契約しないようにしましょう。
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ノンリコースローンは不動産投資をしている人におすすめ
ノンリコースローンは、借主の信用度が関係なく、不動産物件の収益性に限定した審査を実施しているため、不動産投資をする人に向いています。
ノンリコースローンの場合、自己都合によって返済不可な状態に陥ったとしても、担保となった不動産以外の資産に影響がないため、副業で収益を大きく伸ばしたい方や、複数の不動産を所有されている方におすすめです。
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まとめ
ノンリコースローンは、万が一返済できない状態になった場合、担保の不動産を渡してしまえば、残債の返済義務を負わないローン形式であると解説しました。そのため、不動産投資に失敗しても残債がゼロになるまで返済しなければいけないということにはなりません。
現在、世界ではスタンダードなローン形式ですが、日本ではまだまだ取り扱いのある金融機関は少ない状況です。しかし、知名度の上昇とともに利用できる機会が増えているため、不動産投資を始めようと思っている方はぜひ検討してみてはどうでしょうか。
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