不動産投資は節税にならないと言われる理由とは?失敗例や成功のコツも解説

不動産投資は節税にならないと言われる理由とは?失敗例や成功のコツも解説

投資を検討するなかで、「不動産投資は節税にならないと言われる理由とは?」と疑問に思う方も多いでしょう。
不動産投資は、年間の課税所得を減らせるなどの魅力がある一方で、場合によっては節税効果を得られないケースもあるので注意が必要です。

この記事では、「不動産投資は節税にならない」と言われる理由を解説します。
不動産投資で節税効果が出る仕組みや、節税できる税金の種類についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

※不動産投資による節税は物件などの条件により効果が異なります。節税を目的とした投資をする際は専門家のサポートを受けながら行いましょう。

 

不動産投資で節税効果が出る仕組み

不動産投資で節税効果が出る仕組みは、以下の2つです。

  1. 年間の課税所得を減らせる
  2. 相続税評価額が現金相続よりも圧縮される

節税できる税金の種類については、後述する「不動産投資で節税できる5つの税金」で解説します。

 

仕組み①:年間の課税所得を減らせる

不動産投資で赤字となった部分はほかの所得と合算できるため、トータルで年間の課税所得が減り、所得税などを抑えられる可能性があります。
年間の損失と利益を相殺することを「損益通算」と呼び、不動産所得もその対象です。

不動産投資の損益通算においては、資産の取得費用を一定期間にわたり分割して経費計上する「減価償却」が重要なポイントとなります。
減価償却を活用すると、不動産を購入した年以降、実際の出費をともなわず継続的に経費を計上できるのがメリットです。

例えば、5,000万円の建物を4年で減価償却した場合は、年間1,250万円の経費を4年間にわたって計上できます。
ただし、不動産の購入では「建物」と「建物付属設備」などは減価償却できますが、「土地」については減価償却できないので注意しましょう。

 

仕組み②:相続税評価額が現金相続よりも圧縮される

相続する現金と不動産が同じ金額であると仮定した場合、現金は額面がそのまま相続税評価額となりますが、不動産は市場価格よりも相続税評価額が低くなります。
不動産における相続税評価額の基準は、下表の通りです。

種類 評価基準 評価相場
土地 路線価 市場価格のおよそ80%
建物 固定資産税評価額 市場価格のおよそ70%

路線価とは路線に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額であり、固定資産税とは各市町村の固定資産課税台帳に記載された土地・建物の評価額を指します。

例えば、現金で8,000万円を相続するケースと、不動産で8,000万円(土地4,000万円・建物4,000万円)を相続するケースをシミュレーションしてみましょう。

現金の相続税評価額は、8,000万円です。
一方で、不動産の相続税評価額は6,000万円(土地3,200万円・建物2,800万円)となり、不動産のほうが現金よりも2,000万円も評価額が低くなります。
相続税を圧縮したいときも、不動産投資は有効な手段の1つといえるでしょう。

 

「不動産投資は節税にならない」と言われる理由

「不動産投資は節税にならない」と言われる理由は、以下の2つです。

  1. 節税効果を得られる収支の維持が難しいため
  2. 節税効果が徐々に薄れるため

不動産投資で後悔しないためにも、それぞれの理由をあらかじめチェックしましょう。
なお、弊社ゴールドトラストでは、マンションやアパートの賃貸経営に関するノウハウ・実績を持っています。
プロのサポートを受けながら不動産投資を成功させたい方は、「賃貸マンションアパート(一棟買い):トチプラス」をご覧ください。

 

理由①:節税効果を得られる収支の維持が難しいため

不動産投資で節税効果を得るには、建物などの減価償却費を計上して赤字にし、不動産投資の損失を給与所得と損益通算することが大前提です。

ただし、不動産経営が大幅に黒字になったり、ご自身の給与が変化したりするなど、全体の収支を長期的に維持するのが難しい場合もあります。
例えば、不動産経営が想定以上に黒字に転じた場合には、給与所得が圧縮できないため、節税効果は限定的です。

一方で節税効果を得るために経費を増やしすぎると、思ったような利益が残せず、投資の本来の目的から外れる結果となります。
不動産投資における収支の悪化は、ローン返済の遅延や金融機関の信用低下を招くおそれもあるので、注意が必要です。

 

理由②:節税効果が徐々に薄れるため

不動産投資は時間の経過とともに節税効果が薄れる可能性があるので、「節税にならない」と言われるケースがあります。
不動産投資の節税効果が徐々に薄れる要因は、以下の3つです。

  1. 物件取得時の経費は初年度のみ計上できる
  2. 減価償却期間が終了する
  3. 不動産投資ローンの利息が減る

それぞれについて解説します。

 

物件取得時の経費は初年度のみ計上できる

減価償却費できる「建物」と「建物付属設備」を除いた物件取得時の経費を計上できるのは初年度のみなので、次年度以降の節税効果が薄れる場合があります。
物件取得時に計上できる経費は、以下の通りです。

  • 土地代金
  • 不動産仲介手数料
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 印紙税など

特に、不動産取得費用における土地費用の割合が大きい場合初年度は高い節税効果を得られますが、次年度以降の収支に注意する必要があります。
例えば、8,000万円の不動産を4年で減価償却するケースを想定して、シミュレーションしてみましょう。

項目 ケースA ケースB
土地費用 2,000万円 5,000万円
建物費用 6,000万円 3,000万円
1年間の減価償却費 6,000万円÷4年=1,500万円 3,000万円÷4年=750万円

同じ8,000万円の不動産であっても、土地と建物の比率によって次年度以降の減価償却費が大きく異なることが分かります。

 

減価償却期間が終了する

「建物」と「建物付属設備」の減価償却期間が終了すると計上できる経費が減少するため、不動産投資による節税効果が低下します。
減価償却期間は法定耐用年数によって定められており、住宅用建物の場合は下表の通りです。

構造 法定耐用年数
木造・合成樹脂造 22年
木骨モルタル造 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 47年
れんが造・石造・ブロック造 38年
金属造 19〜34年

上記は新築の不動産に用いる法定耐用年数で、中古の場合は期間がより短くなるため気をつけましょう。
中古不動産の耐用年数は、下表のように計算します(小数点以下は切り捨て)。

経過年数 計算方法
法対耐用年数を超えていない (法定耐用年数−築年数)+築年数×20%
法対耐用年数を超えている 法定耐用年数×20%

例えば、法対耐用年数を超えている木造物件のケースでは、22年×20%=4.4年の小数点以下を切り捨てて、減価償却期間は4年です。

引用元:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表

 

不動産投資ローンの利息が減る

不動産投資ローンはどの返済方式を採用しても、時間の経過とともに経費計上できる利息が減るため、節税効果を得にくくなります。
なお、ローン元金は経費計上できないため、元金の支払いは節税にはつながりません。

不動産投資ローンにおける返済方式の種類は、下表の通りです。

種類 特徴
元利均等返済 元金と利息を合計した毎月の返済額が一定になる。内訳としては、時間が経つと利息の割合が減り、元金の割合が増える
元金均等返済 毎月の元金返済額が一定になる。元金の減少とともに、利息も減る

減価償却の終了などによって、ローンの元金返済額が減価償却費を上回ることを「デッドクロス」と呼び、継続するとキャッシュフローの悪化を招く可能性があります。
不動産投資におけるデッドクロスの基礎知識や注意点について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】不動産投資のデッドクロスとは?原因や予防策を解説|購入後の対策も

 

不動産投資で節税できる5つの税金

不動産投資で節税できる税金は、以下の5つです。

  1. 所得税
  2. 住民税
  3. 法人税
  4. 贈与税
  5. 相続税

それぞれについて解説します。

 

節税できる税金①:所得税

所得税とは、1年間の個人の所得に対して課される税金のことで、所得から所得控除を差し引いた額に税率をかけて税額を算出します。
所得税の税率は5〜45%で、所得の額に応じて7段階に分かれており、所得が多いほど税率が高くなるのが特徴です。

不動産投資においては、減価償却費などを含めて事業で発生した損失をほかの所得と損益通算し、課税所得を圧縮できます。
ただし、不動産所得であっても別荘の貸付けなど損益通算できないケースもあるので、注意しましょう。

所得税を節税できるタイミングは、確定申告時です。
サラリーマンの場合、所得税は毎月の給与などから源泉徴収されていますが、不動産所得を含めて確定申告すると払い過ぎた部分の所得税が還付されます。

引用元:国税庁|No.2260所得税の税率

 

節税できる税金②:住民税

住民税とは上下水道やごみ処理といった行政サービスの活動費をまかなうために、地域に住む個人に課される税金を指します。
住民税は「均等割」と「所得割」の2つから成り立っており、下表の通りです。

種類 内容
均等割 前年に一定の所得がある場合、定額が課税される
所得割 前年の所得金額に応じて課税される

均等割の金額は原則5,000円で、市町村民税と道府県民税に加えて、森林環境税が含まれます。
所得割の税率は前年の所得に対して10%であり、内訳は道府県民税4%・市町村民税6%が一般的です。
住民税は所得税と同様に、不動産投資の損失をほかの所得と損益通算することで課税所得を小さくし、節税を図ります。

なお、住民税を節税するには、確定申告が必要です。
不動産投資で損失によって所得が減少している場合は、次年度の住民税を節税できます。

引用元:総務省|個人住民税

 

節税できる税金③:法人税

法人税とは、法人の事業活動で発生した所得に対して課される税金のことで、株式会社などの「普通法人」だけではなく、協同組合や一般社団法人なども対象となります。
法人税の税率は法人の種類によっても異なりますが、普通法人の場合は下表の通りです。

分類 所得 税率
資本金1億円以下の中小法人 年間所得800万円以下の部分 15〜19%
年間所得800万円超の部分 23.2%
中小法人以外の法人 全額 23.2%

法人においても不動産投資の損失で課税所得を減らせるのはもちろん、赤字の繰越期間が個人よりも長く、減価償却費を調整できるなどのメリットもあります。

なお、法人税を節税できるタイミングは、決算時です。
事業年度の法人税は、事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に支払う必要があります。

法人ができる節税対策のうち、不動産に特化したアイデアを知りたい方は、以下の記事もあわせてチェックしてみてください。

【関連記事】【不動産特化】法人の節税対策5選!法人化すべき人の特徴や相談先も解説

引用元:国税庁|No.5759法人税の税率

 

節税できる税金④:贈与税

贈与税とは、個人から贈与により財産を取得する際に課される税金のことで、課税方法を下表の2種類から選択できます。

種類 内容 税率
暦年課税 年間の贈与合計額に応じて課税される 10〜55%
相続時精算課税 累積贈与額が特別控除額の2,500万円を超えるまで贈与税が発生せず、2,500万円を超えた額に対して課税される 20%

2024年1月以降の贈与であれば、どの課税方式でも1人あたり年間110万円の基礎控除額が適用され、年間110万円以下の贈与なら申告も不要です。

父母や祖父母から子や孫に不動産を贈与した場合、相続時精算課税であれば2,500万円まで贈与税が発生せず、大幅な節税につながります。
また、収益のある不動産をそのまま相続すると、相続税に加えて家賃収入も課税対象となりますが、生前贈与しておけば相続時の課税対象は不動産のみとなるのもメリットです。

引用元:
国税庁|No.4408贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁|No.4103相続時精算課税の選択

 

節税できる税金⑤:相続税

相続税とは、亡くなった方つまり被相続人の財産を相続人が取得した際に課される税金で、財産価額に基づいて算出されます。
相続税は相続する額に応じて8段階で税率が設定されており、税率の幅は10〜55%です。

「相続税評価額が現金相続よりも圧縮される」で前述した通り、現金で相続するよりも同じ額の不動産を相続するほうが、相続税評価額が低くなります。
具体的には、建物と土地の相続税評価額は市場価格の70〜80%となるため、大きな節税効果を期待できるのが魅力です。

相続税・贈与税の改正内容について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】【2024年から】相続税・贈与税の改正内容|節税のポイントも解説

引用元:国税庁|No.4155相続税の税率

 

「不動産投資したけど節税にならない」の失敗例

「不動産投資したけど節税にならない」の失敗例として、以下の2つを紹介します。

  1. 空室が改善せずキャッシュフローが悪化した
  2. 物件の維持管理費用が想定以上にかかった

失敗例を踏まえてから事業をスタートさせれば、大きな後悔を回避できるでしょう。

 

失敗例①:空室が改善せずキャッシュフローが悪化した

空室が改善しないなど現金収入が減少する要因を放置しておくと、キャッシュフローが悪化して不動産経営が難しくなるため注意しましょう。
キャッシュフローとは現金の流れを意味し、入ってくる現金が減少すると、資金繰りが苦しくなります。

空室が原因の損失でも課税所得は減らせますが、不動産投資による節税はあくまでも建物費用などの減価償却による赤字が前提です。
不動産を購入した年以降に、実際の出費をともなわない減価償却費を計上できるからこそ、節税効果を得られることを念頭に置きましょう。

空室の継続・増加以外にも、減価償却期間の終了や管理費などの値上げによってキャッシュフローが悪化するケースがあるので注意が必要です。
物件の維持管理費用については、次の章で解説します。

 

失敗例②:物件の維持管理費用が想定以上にかかった

物件の維持管理費用が想定以上にかかる場合にも、支出がかさむためキャッシュフローの悪化を招きます。
物件の維持管理費用の一覧は、以下の通りです。

  • ローン返済費用
  • 火災保険などの保険料
  • 管理委託費用
  • 管理費用
  • 入居者募集に関わる広告費
  • 固定資産税などの税金
  • 修繕費・修繕積立金
  • 税理士への報酬など

物件の規模にもよりますが、ローン返済費用を除いた維持管理費用の相場は、家賃収入の20〜30%とされています。
満室にするために家賃を低く設定すると、維持管理費用によって利益が出ないケースもあるので、気をつけましょう。

不動産投資を始める際には、初期費用や節税効果に注目しがちですが、物件を安定して運営するには、維持管理費用も考慮して検討することが大切です。

 

不動産投資で節税しやすい・しにくい物件の特徴

不動産投資で節税しやすい・しにくい物件の特徴は、下表の通りです。

節税しやすい物件 節税しにくい物件
・中古物件
法定耐用年数を過ぎた木造物件
・建物費用の比率が高い物件
・新築物件
・区分マンション

不動産投資で節税しやすい・しにくい物件は、基本的に減価償却期間と費用で判断できます。

中古物件は新築よりも法定耐用年数が短く、減価償却も短期間で実施できるため、高い節税効果を見込めるのがメリットです。
特に法定耐用年数を過ぎた木造物件は、4年という非常に短い期間で減価償却できます。

 

また、購入候補の物件が同じ金額であっても、建物費用の比率が高い物件のほうが節税しやすいので、費用を確認する際は土地と建物の比率もチェックしましょう。
区分マンションは一棟売りのマンションよりも購入費用が低く、減価償却しても節税効果が限定的になるケースがあります。

築古物件の減価償却で効率よく節税したいと考える方は、ゴールドトラストの「中古再生:ズバッと節税ズバッと償却」をご覧ください。

築古アパートのメリット・デメリットを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】築古アパートのメリット・デメリットとは?築浅との違いや失敗しないコツも

 

不動産投資で節税しやすい・しにくい人の特徴

不動産投資で節税しやすい・しにくい人の特徴は、下表の通りです。

節税しやすい人 節税しにくい人
課税所得が900万円以上の人
・収入が大きく下がる予定のある人
・課税所得が900万円未満の人
・収入が安定しない人

課税所得が900万円以上の場合は所得税が33%以上になり、長期譲渡所得の税率である20.315%との差が大きくなるため、節税効果が高まります。
長期譲渡所得とは、所有期間が5年を超える土地や建物を売る際に発生する所得のことです。

一方で、課税所得が900万円未満の人は、多額の費用をかけて不動産投資をするリスクと、節税効果のメリットが見合わないといえます。

また、定年退職などで収入が大きく下がる人は、不動産投資によって住民税を節税すれば、退職後の税負担を軽減しやすくなります。
収入が安定しない人の場合は、所得が低下する年には減価償却による損益通算の恩恵を受けにくいので、節税につながりません。

不動産投資で法人化すべきタイミングを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】【早見表付き】不動産投資で法人化すべきタイミング!判断基準や設立方法も

引用元:
国税庁|No.3208長期譲渡所得の税額の計算
国税庁|No.2260所得税の税率

 

まとめ:「不動産投資は節税にならない」は工夫次第で回避できる

「不動産投資が節税にならない」と言われるのには、時間の経過とともに減価償却の節税効果が薄れるなどの理由があります。
節税効果を維持するためにも、デッドクロスを踏まえて投資計画を立てるなど対策を講じましょう。

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※不動産投資による節税は物件などの条件により効果が異なります。節税を目的とした投資をする際は専門家のサポートを受けながら行いましょう。

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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。