障がい者グループホームの設備基準とは?物件は購入と賃貸どちらが良い?
障がい者グループホームを建設するためには、国が定める設備基準を満たす必要があります。
開設を検討している方の中には、「さまざまな基準や条件があって、開業までたどり付くか不安」という方も多いでしょう。
この記事では、障がい者グループホームの設備基準について解説します。
物件は購入と賃貸どちらが良いか、それぞれのメリット・デメリットやおすすめの人をあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
障がい者グループホーム(共同生活援助)とは
障がい者グループホーム(共同生活援助)は、障がいのある方が地域住民と交流できる地域で、生活に必要な援助を受けつつ共同生活を過ごす住居です。
サービスの内容や物件タイプにより、対象となる利用者や提供できるサービスが異なります。
共通する支援内容は、以下のとおりです。
- 主として夜間において食事やなどの日常生活に必要な援助を提供
- 一人暮らしを目指す入居者に対して、居宅生活の移行や移行後に関する相談などを支援
- 利用者の就労先や日中の活動で利用するサービスなどと連絡調整 など
なお、障がい者グループホームは2通りの分類ができます。
- サービス類型
- 物件タイプ
それぞれの分け方を見ていきましょう。
引用元:厚生労働省|2023年共同生活援助に係る報酬・基準について≪論点等≫
サービス類型
サービス類型は、下表の3つです。
外部サービス利用型 | 介護サービス包括型 | 日中サービス支援型 | |
介護サービスの提供方法 | 外部の居宅介護事業者を利用 | 事業所内の生活支援員が実施 | 事業所内の生活支援員が実施(日中も対応) |
事業所数※ | 1,233か所 | 10,631か所 | 809か所 |
利用者数※ | 14,913人 | 146,402人 | 11,586人 |
※国保連令和5年4月実績
障がい者グループホームは、事業所数・利用者数ともに介護サービス包括型が全体のほとんどを占めています。
引用元:厚生労働省|2023年共同生活援助に係る報酬・基準について≪論点等≫
物件タイプ
物件タイプは、下表の3つです。
戸建て型 | アパート型 | サテライト型 | |
居住タイプ | 一戸建ての建物 | マンションやアパートなどの個室 | 戸建て型やアパート型に併設したアパートの1室 |
部屋の設備 | 就寝スペースのみ | キッチン、トイレや浴室が備え付け | キッチン、トイレや浴室が備え付け |
特徴 | 少人数での共同生活 | アパートなどでの1人暮らしのような生活 | 1人暮らしをしつつ本体の住宅にて複数人での食事や交流が可能 |
戸建て型は、生活支援員が交代制で常に入居者の生活をサポートしてくれます。
アパート型は1人暮らしのような生活が可能であり、地域生活への自立に向けた練習に活用しやすいでしょう。
サテライト型は、戸建て型やアパート型のグループホームである「本体住居」に併設した部屋になります。
利用者は日常を部屋で過ごし、食事などの際に本体住居の利用が可能です。
それぞれの詳細やメリット・デメリットを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】障がい者グループホームにおける建築基準法の用途とは?手続きの流れも解説
グループホーム開業時に満たすべき3つの基準
障がい者グループホームを開業するにあたって、法人の設立とともに以下の3つの基準を満たす必要があります。
- 設備に関する基準
- 人員に関する基準
- 運営に関する基準
設備に関する基準は、利用者が安心して生活できる環境を提供するために定められた基準です。
詳細は、後述する「障がい者グループホームの設備基準」をご確認ください。
人員に関する基準は、利用者が安心して生活できるために障がい者グループホームに配置すべき従業者と職員数を定めています。
従業者は世話人、生活支援員やサービス管理責任者に分けられており、職員数は定められた計算式で算出します。
また、運営に関する基準は、利用者が質の高いサービスを受けるための管理面や運営面について定められています。
障がい者グループホームの建設に必要なノウハウを知りたい方は、弊社の「障がい者福祉施設の運営支援・建設ページ」からお気軽にご相談ください。
引用元:e-Gov法令検索|平成18年厚生労働省令第171号第16章
障がい者グループホームの設備基準
障がい者グループホームの設備基準は、主に以下の5つです。
項目 | 本体住居(戸建て型/アパート型) | サテライト型住居 |
立地 | ・利用者の家族や地域住民と交流できる機会が確保された住宅地や住宅地と同程度の地域 ・病院や入所施設の敷地外 |
|
居室 | 収納設備を除いて面積7.43㎡(約4.5畳)以上 | |
ユニット(居室除き) | ・居間や食堂などの利用者が相互に交流を図る場所 | 本体住居の設備を利用につき基準なし |
入居定員 | ・原則、2人以上10人以下 ・既存の建物利用時 2人以上20人以下 ・居室は1人 |
居室は1人 |
設備 | ・日常生活を送る必要な設備 ・入居者同士で交流できる交流室や食堂など ・サテライト型住居の利用者から通報を適切に受電できる通信機器(携帯電話可) |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
設備基準①:立地
立地を考えるにあたって考慮すべき点は以下のとおりです。
- 利用者の家族や地域の方々との交流しやすい住宅地、または住宅地と同程度の地域
- 建設地付近の住民から理解が得られる地域
- 原則、日中サービス(※)を提供する施設と同一敷地外
- 病院や入所施設の敷地外
※生活介護や自立訓練など
地域での生活を望む利用者のためにも、家族や地域住民との交流は欠かせません。
病院などの敷地外であることも、地域での生活を目指すために重要です。
建設地付近の住民からの理解が得られていれば、開業後の無用なトラブルを避けられるでしょう。
また、サテライト型住居の場合は次の条件も加えられます。
- 1つの本体住居に対して、設置できるサテライト型住居は2か所まで
- 本体住居の職員が原則、毎日訪問
- 本体住居との距離が約20分以内
従業員の負担を考えると、なるべく本体住居と近い立地が望ましいといえます。
設備基準②:居室
居室の設備基準は、以下の通りです。
- 居間や廊下につながる出入口が設置され、他の居室と明確に区分
- 収納設備を除いて、面積7.43㎡(約4.5畳)以上
- 原則1人部屋(必要に応じて2人も可)
居室は利用者が生活しやすいよう、プライバシーに十分配慮する設計にしましょう。
また、居室の間取りには採光や換気などにも考慮する必要があります。
建築基準法上で守るべき内容を確認したい方は、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】障がい福祉サービスと建築基準法|法的位置づけや適合が必要な規定など
設備基準③:ユニット
ユニットとは、居室と入居者同士の交流が可能な場所からなる生活単位を指しています。
具体的に交流する場所としては、居間や食堂です。
居間には、利用者全員が集まって交流できるように十分な広さを確保することが必要です。
また、食堂を交流の場にする場合は環境衛生へも配慮しましょう。
設備基準④:入居定員
1事業所の最低入居定員は、4人以上です。
うち、1つの住居あたりの定員は原則2人以上10人以下になり、既存の建物を利用した場合は2人以上20人以下です。
また、サテライト型の入居定員は1名ですが、連携している本体住居の入居定員に含みません。
入居定員を満たす・満たさないの例は、下表の通りです。
パターン1 | パターン2 | パターン3 | |
本体住居の入居人数 | 住居①:2人 住居②:2人 |
3人 | 1人 |
サテライト型住居の入居人数 | — | 1人 | 住居①:1人 住居②:1人 住居③:1人 |
1事業所における入居定員の合計 | 4人 | 4人 | 4人 |
入居定員の基準クリア | 〇 | 〇 | × 本体住居の入居定員を満たしていないため |
上記のように本体住居と事業所とで、それぞれ入居定員を満たしているか、良く確認しましょう。
設備基準⑤:その他設備
障がい者グループホームには日常生活を送る設備として、以下も必要になります。
- 台所
- 洗面所
- 風呂
- トイレ など
洗面所とトイレは、兼用不可です。
また、10名を上限とした生活単位ごとで区分した配置が必要です。
なお、サテライト型住居の場合は、同住居からの通報や連絡を適切に受電できる携帯電話の設置も必要になります。
さらに、障がい者グループホームを運営するためには消防法上で定められている設備も必要です。
消防法の用途は障がい支援区分4以上の方がおおむね8割以上で「6項ロ」、それ以外は「6項ハ」になります。
障がい者グループホームの場合は建物の種類や利用者の重症度により、上記以外にも5項ロや16項イになる場合があります。
障がい福祉サービスに関連する消防法の基礎知識について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください、
【関連記事】障がい者支援施設に必要な消防法上の設備・対応とは?違反時の罰則も解説
障がい者グループホームの物件は購入と賃貸どちらが良い?
障がい者グループホームの物件を購入するか賃貸にするか迷っている方に向けて、以下の2つを解説します。
- 購入におすすめの人
- 賃貸におすすめの人
それぞれの内容について見ていきましょう。
なお、弊社ゴールドトラストでは、障がい者グループホームの建設もサポートしております。
必要費用や建設後の管理費用などを知りたい方は、「障がい者福祉施設の運営支援・建設ページ」もぜひご覧ください。
購入がおすすめの人
障がい者グループホーム用の物件を購入するのがおすすめなのは、以下のような方々です。
- 福祉事業を中長期的に拡大していく事業計画を立てている人
- 物件に手を加えていきたい人
- 資産形成を考えている人
購入する人のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
購入するメリットは、以下の3つです。
- 資産になる
- 安定した運営ができる
- リフォームや増築に対応できる
仮に障がい者グループホームの役割を終えても資産として残るため、売却や貸し出しする選択肢を持てます。
通常の住居にはない設備基準が設けられているため、新たに福祉事業を開始する人から購入または賃貸のニーズが見込まれるでしょう。
また、家賃の変動リスクを回避できるため、事業計画に沿った運営が可能です。
都心部の家賃は高く、今後の景気次第ではさらに高くなる可能性があります。
中長期的に事業を行う人にとっては、将来的な固定費上昇リスクの抑制につながるでしょう。
さらに、必要になるリフォームや増築はご自身の判断で対応できます。
物件の所有者であるため、利用者の利便性を考えた改善をスピーディーに実施できる点も大きなメリットです。
デメリット
購入するデメリットは、以下の2つです。
- 初期費用や購入後の管理費用の負担がかかる
- メンテナンス費用が発生する
設置基準に対応するため、物件費用は通常の不動産投資より高くなる可能性があります。
購入後に固定資産税や物件の管理費用がかかり、金銭的負担が大きくなりかねません。
また、年数が経つにつれて、物件の修繕や定期的なメンテナンス費用が発生します。
融資前提の購入であれば、管理費用やメンテナンス費用を見込んだ事業計画を立てることが重要です。
賃貸がおすすめの人
障がい者グループホーム用として賃貸物件を利用するのがおすすめなのは、以下のような方々です。
- 初期費用を抑えたい人
- 最低限のリスクにしたい人
賃貸する人のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
賃貸物件を利用するメリットは、以下の2つです。
- 初期投資を抑えられる
- 既存設備を継続使用できる
賃貸にすることで開業にかかる初期投資を抑えられ、投資リスクを小さくできます。
また、物件の購入資金を確保することに悩む必要がありません。
賃貸する物件には、継続して利用できる設備が設置されている場合があります。
すでに備わっている設備を利用することで、物件への追加投資を減らせるでしょう。
デメリット
賃貸物件を利用するデメリットは、以下の3つです。
- 管理運営費用がかかる
- リフォームなどの改装がやりにくい
- イメージに合う建物を見つけにくい
運営している間は管理運営費用がかかり続け、都心部での運営の場合、購入した方が事業にかかる費用総額が低くなる可能性があります。
都心部の物件は家賃が高いため、事業計画を立てる際に検証しましょう。
また、物件の所有者ではないため、修繕や経年劣化によるリフォームを考えた際に柔軟な対応ができません。
所有者への許可が必要であり、所有者の考えによっては納得してもらうまで時間がかかります。
賃貸契約時にリフォームに対して事前に擦り合わせておくことで、実際に必要となった場合には円滑に進められるでしょう。
障がい者グループホームの設備基準に関するよくある質問
障がい者グループホームの設備基準に関するよくある質問は、以下の2つです。
- どのような立地がおすすめ?
- 設備を整える際に利用できる補助金はある?
それぞれの回答について見ていきましょう。
質問①:どのような立地がおすすめ?
立地は設備基準で定められていますが、下表にあるように利用者・職員目線でうれしい立地を考慮して検討することもおすすめです。
おすすめの立地 | 具体例 | |
利用者目線 | 利便性の高い施設が近い | ・コンビニ ・スーパー ・商業施設 |
利用施設に通いやすい | 就労支援などの通所先 | |
家族や友人が来やすい | ・公共交通機関の充実 ・駐車スペースの確保 |
|
職員目線 | 緊急時に対応しやすい | 協力医療機関の近隣 |
通勤しやすい | ・公共交通機関の充実 ・駐車スペースの確保 |
特に公共交通機関の充実は、優先すべき立地条件になります。
それぞれの目線で立地条件に適応できれば、採用条件や利用案内において他の障がい者グループホームと差別化できます。
利用者や職員が減ると運営の継続が難しい状態につながるため、立地は慎重に見極めましょう。
質問②:設備を整える際に利用できる補助金はある?
補助金は、各自治体で設けられているケースが多くあります。
管轄の行政庁に問い合わせし、利用できる補助金について確認しましょう。
例えば、愛知県では「社会福祉施設等施設整備費補助金」があります。
【社会福祉施設等施設整備費補助金】
補助額 | 以下の金額のいずれか低い金額 ・国が定める事業の種類毎の補助基準単価の合計額 ・総事業費から対象外経費を控除した額の3/4 |
補助率 | 補助額のうち国2/3、県1/3 |
補助対象 | 社会福祉法人、医療法人、一般社団法人や特定非営利活動法人など (法人格を備えていれば申請可能であるが、愛知県では社会福祉法人や医療法人などを優先して採択) |
補助金は年度毎の予算で設計されており、時期によって補助金が発表されていない可能性があるため、定期的に問い合わせましょう。
引用元:愛知県|2023年社会福祉施設等施設整備費補助金について
まとめ:設備基準を満たした障がい者グループホームを開設しよう
障がい者グループホームを開設するためには、設備基準を満たす必要があります。
サービス類型や物件タイプの選択によって設備基準が異なるため、事業計画を策定する際に利用者やサービス提供についてよく考えましょう。
また、障がい者グループホームの物件を購入するか賃貸するかを考える際は、それぞれのメリットとデメリットを勘案してご自身の状況にあわせた判断が必要です。
障がい者グループホームを開設したい方は、専門家からのアドバイスやサポートを受けられる「障がい者福祉施設の運営支援・建設ページ」をチェックしましょう。
また、障がい者グループホーム特別セミナーや資産運用セミナーも常時開催中です。
詳しくは「セミナー情報ページ」をぜひご覧ください。
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