インパクト投資とは?ESG投資との違いや最新動向もわかりやすく解説
インパクト投資は、財務的リターンと社会的・環境的リターンを同時に発生させる投資方法です。
そもそもインパクトとは、福祉や教育などの社会的及び環境的な変化・効果のことを意味します。
SDGsやジェンダー意識が高まるなかで、インパクト投資が気になるという方も多いでしょう。
しかし、基本情報やESG投資との相違点などをしっかり理解していないと、投資を始めてから「想像とは違った」と後悔する可能性があるので注意が必要です。
この記事では、インパクト投資の定義やESG投資との違いをわかりやすく解説します。
インパクト投資の最新動向やメリット・デメリット、日本企業の事例についても紹介するので、参考にしてください。
目次
インパクト投資とは
インパクト投資に取り組むかどうか判断するためにも、基本情報を正確に把握しておくことが重要です。
ここでは、インパクト投資の基礎知識として以下の2つを解説します。
- 定義
- ESG投資との違い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
定義
インパクト投資とは、財務的なリターンに加えて、ポジティブで測定可能な社会的・環境的リターンを発生させることを目指した投資のことです。
インパクト投資は、以下の3点で評価します。
- リターン(利益)
- リスク(リターンの不確実性)
- インパクト(社会的・環境的な変化や効果)
従来の投資はリスクとリターンの2つで評価する一方で、インパクト投資はインパクトという評価軸があることが大きな違いです。
インパクト投資で求められる社会的・環境的な変化や効果とは、例えば以下の社会問題を解決することを意味します。
- 貧困
- 差別
- 環境
- 教育
- 福祉
また、インパクト投資には4つの構成要素があり、下表の通りです。
要素 | 内容 |
意図があること | 社会課題解決を意図する |
財務的リターンを目指すこと | 財務的なリターンと社会的リターンの両立を目指す |
広範なアセットクラスを含むこと | 株式・債券・融資・リースなど多様な金融取引を対象とする |
社会的インパクト評価を行うこと | 社会的・環境的な成果を把握して判断する |
2013年の主要国首脳会議(G8)において「社会的投資フォーラム」が開催されたことが契機となって世界的に波及し、現在も大きな注目を集めています。
引用元:GSG国内諮問委員会|インパクト投資拡大に向けた提言書 2019
ESG投資との違い
ESG投資とは、財務情報だけではなく、環境・社会・ガバナンスの要素を考慮して実施する投資のことです。
ESGは、以下の3つの頭文字を取っています。
- Environment(環境)
- Social(社会)
- Governance(ガバナンス・企業統治)
インパクト投資とESG投資の両方で、財務的リターンに加えて「環境」や「社会」を意識しており、一見すると同じ印象を受けるでしょう。
しかし、両者を比較すると下表のように定義・目的・意図・インパクト測定の4点に違いがあります。
インパクト投資 | ESG投資 | |
定義 | 財務的なリターンと社会的・環境的リターンの両立を目指した投資 | 財務情報と、環境・社会・ガバナンスの要素を考慮した投資 |
目的 | 社会課題の解決 | リスクの軽減 |
意図 | ある | 投資家によって異なる |
インパクト測定 | 必ず実施する | 実施しない場合が多い |
社会課題を解決する強い意図があるインパクト投資に対して、ESG投資はリスク軽減の観点から実施している場合もあり、投資家によって意図が異なります。
また、インパクト投資は社会的・環境的な成果を定量的・定性的に把握して評価しますが、ESG投資では実施しないケースが多いのも相違点といえるでしょう。
【関連記事】ESG投資とは?インパクト投資との違いやを日本の現状をわかりやすく解説
インパクト投資の注目度が上がっている3つの理由
インパクト投資の注目度が上がっている理由は、以下の3つです。
- 環境問題に対する意識が変化してきている
- 格差是正に向けた支援が増えている
- SDGsの意識が広がっている
それぞれの内容をしっかりと把握すれば、スムーズに投資に取り組めるでしょう。
理由①:環境問題に対する意識が変化してきている
投資家を含めた社会全体の環境問題に対する意識が変化していることから、インパクト投資への注目度が上がっています。
気候変動や自然災害などの環境問題は、人々の日常生活はもちろん、企業の事業環境や経済に悪影響を与える要因の1つです。
企業の事業環境の悪化は業績に直結することから、投資家も環境問題改善の重要性を認識するようになりました。
環境問題が深刻化した場合に、企業に与える影響は以下の通りです。
- 資源や原材料を確保しづらくなる
- 施設や設備の維持管理の費用が増える
- 従業員の労働環境が悪化する
また、企業は2050年のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みを求められる中で、対応が遅れた企業はサプライチェーンや取引から外されるリスクもあるでしょう。
環境問題と投資家の関係は密接であり、今後もさらに意識が高まっていくと考えられます。
理由②:格差是正に向けた支援が増えている
政府や金融機関が不当な差別を受けやすい方への配慮や格差是正に向けた支援を強化するなかで、インパクト投資にも期待が集まっています。
女性のエンパワーメントを通じて企業のポテンシャル向上を目指す投資はジェンダー投資とも呼ばれており、注目度の高い投資です。
ジェンダー投資には、3つの方法があります。
- 女性起業家への投資
- 企業内のジェンダー平等を目指す企業への投資
- 女性の生活を改善するサービスを提供する企業への投資
日本国内では、2017年に国内初のジェンダー投資ファンド「アジア女性インパクト基金(AWIF)」が笹川平和財団によって設立され、話題となりました。
企業内の格差是正に積極的でない企業では、人材流出やハラスメント発生などのリスクがあり、投資家にとっても重要なポイントといえるでしょう。
理由③:SDGsの意識が広がっている
環境問題や格差是正を含めてSDGsの意識が広がっており、社会課題解決を目指すインパクト投資の認知度もアップしています。
SDGs(Sustainable Development Goals)は「持続可能な開発目標」という意味があり、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標です。
17のゴールと169のターゲットで構成されており、例えば以下の目標があります。
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 気候変動に具体的な対策を
- パートナーシップで目標を達成しよう
自然災害の多発などで世界的に危機意識が高まっており、SDGsとともにインパクト投資の重要性も今後さらに大きくなっていくでしょう。
インパクト投資を行うメリット・デメリット
インパクト投資を行うメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。
メリットだけ確認して投資に取り組むと、後悔するリスクがあるためデメリットもチェックすることが重要です。
両方を踏まえた上で、インパクト投資をするか判断しましょう。
メリット
インパクト投資を行うメリットは、主に以下の3つです。
- 社会貢献ができる
- 将来性のある企業に投資できる
- 長期的に安定したリターンを期待できる
インパクト投資は財務的リターンに加えて社会的リターンも同時に生み出すことを目指した投資のため、社会貢献をしながら投資ができます。
環境問題やジェンダー問題など、興味のある分野や解決したい課題を自身で選んで投資ができるのも魅力です。
インパクト投資の対象企業は、カーボンニュートラルや格差是正に取り組んでいることから先見性があったり、良好な事業環境を構築していたりするので将来性を見込めます。
また、インパクト投資先として十分な企業は企業価値が高く、長期的に安定したリターンを得られるでしょう。
SDGsなど世界的な意識の高まりもあるので、インパクト投資は今後もますます拡大していくと考えられます。
【関連記事】社会貢献事業とは?資産家が取り組むべき理由や具体例を解説
デメリット
インパクト投資を行うデメリットは、主に以下の2つです。
- 短期間で大きなリターンは望めない
- 投資先の選択が難しい
環境問題や貧困など、インパクト投資が解決を目指す社会課題はすぐに解決できるタイプの問題ではないため、短期間で大きなリターンは望めません。
社会情勢を踏まえながら、長期的な目線で投資する必要があるでしょう。
インパクト投資は比較的新しい投資手法ゆえに、投資先の企業や商品・サービスの情報を十分に得られない場合があり、投資先の選定が難しいのがネックです。
財務情報と合わせて、社会的なリターンを生み出せるかチェックするのに時間を必要とする可能性もあります。
また、企業の社会課題に対する意識が高まっているものの、国内では取り組む企業の数が多いとはいえないため、選択肢が少ないのもデメリットです。
投資先を選定する際には、国内企業だけではなく海外企業も含めて検討してみてください。
インパクト投資の最新動向
インパクト投資の最新動向として、以下の3つを紹介します。
- 市場規模は急拡大中
- 財務パフォーマンスは非常に良好
- 国内外の政策面も動きが活発化
インパクト投資を始めるための判断材料が欲しいという方は、ぜひ参考にしてください。
【関連記事】【2023年版】不動産投資の今後の展望を徹底解説!最新の市況動向と注目のエリアは?
最新動向①:市場規模は急拡大中
世界的なインパクト投資の市場規模は2017〜2022年の5年間に約10倍となっており、急拡大を続けています。
2021年度の国内のインパクト投資残高は1兆3,204億円にも上り、前年度調査の約4倍です。
国内外に関係なくインパクト投資が増加しており、グローバルな規模で注目度が高いことが分かります。
市場規模が拡大し続けている理由は、以下の3つです。
- 既にインパクト投資に取り組む機関の取り組みが拡大している
- 新規の機関が参入している
- インパクト投資のアセットクラスが多様化している
人気や認知度が上がるにつれて、参入者が増えるのはもちろん、アセットクラスの多様化により投資先の選択肢が増えたことが拡大の要因だと考えられます。
気候変動など世界レベルでの社会課題が深刻化しており、今後も市場規模が拡大することが見込まれるでしょう。
最新動向②:財務パフォーマンスは非常に良好
インパクト投資に既に取り組んでいる投資家の評価は、以下の通りです。
- 経済的リターン:88%の回答者が「期待通りもしくはそれ以上を獲得」
- 社会的インパクト:99%の回答者が「期待通りもしくはそれ以上」
ほとんどの投資家がインパクト投資に満足しており、財務的リターンと社会的リターンを両立させていることが分かります。
また、2015年と2019年を比較して人気が高まっている投資分野は以下の通りです。
- 水・公衆衛生
- 金融(マイクロファイナンスを除く)
- ヘルスケア
- 食糧・農業
- エネルギー
水・公衆衛生やヘルスケア、食糧・農業の分野は、回答した投資家の50%程度が「今後5年間でこの分野への資産配分を増やすつもり」としており、注目度が高いといえます。
社会情勢や人気の分野・企業を分析していけば、財務的リターンと社会的リターンの両方を得られる投資先を見つけられるでしょう。
引用元:一般財団法人社会変革推進財団|2022年インパクト投資の国内外の最新動向
最新動向③:国内外の政策面も動きが活発化
インパクト投資に関連した国内政策の動きは、下表の通りです。
2019年 | ・G20大阪サミットにてインパクト投資の重要性を明言 |
2020年 | ・環境省がポジティブ・インパクトファイナンス・タスクフォースを設置 ・GSG国内諮問委員会IMMワーキンググループ(GSGIMM)が活動を開始 ・金融庁がサステナブルファイナンス有識者会議を設置 |
2022年 | ・内閣・内閣官房は「新しい資本主義グランドデザイン」及び「骨太方針2022」でインパクト投資推進を明記 |
環境省や金融庁などで会議やグループが設置されており、国としてもインパクト投資の調査研究や普及啓発に力を入れていることが分かります。
また、2021年にはG7議長国英国の後援でインパクト・タスクフォースを設置し、資金を必要とする途上国に対して多くの民間資金を呼び込むことなどが提言されています。
引用元:
・一般財団法人社会変革推進財団|2022年インパクト投資の国内外の最新動向
・GSG国内諮問員会|GIIN発行「インパクト投資家に関する年次報告書2020(概要版)
インパクト投資を行う日本企業の事例
インパクト投資を行う日本企業の事例として、以下の3つを紹介します。
- 三菱商事株式会社
- 東京ガス株式会社
- ゴールドトラスト株式会社
取り組み内容や得られたインパクトなどを解説するので、チェックしていきましょう。
事例①:三菱商事株式会社
三菱商事株式会社は、2012年に東日本大震災の復興を目的として「三菱商事復興支援財団」を設立しました。
4年間総額100億円の支援枠を設定し、以下の取り組みを実施しています。
- 奨学金の給付
- NPO法人などに対する助成金の給付
- 産業復興・雇用創出支援
三菱商事復興支援財団の事業によって得られた社会的なインパクトは、下記の4つです。
- 教育の機会均等
- コミュニティの活性化
- 雇用の促進
- 産業の活性化・創出
2015年には35億の追加拠出を実施し、活動を継続させるとともに「ふくしまワイナリープロジェクト」を立ち上げて、果樹農業の6次産業化をサポートしました。
10年間という長期的な支援に取り組んだ結果、三菱商事株式会社は災害復興に大きな貢献を果たし、社会的にも高い評価を受けています。
事例②:東京ガス株式会社
東京ガス株式会社では、脱炭素社会へ向けて再生可能エネルギー事業を資金使途とした「東京ガスグリーンボンド」を立ち上げました。
東京ガスグリーンボンドは東京ガス株式会社の無担保社債のことで、100億円が発行総額となります。
グリーンボンドで調達した資金の具体的な使い道は太陽光発電プロジェクトであり、以下の施設が対象です。
- アクティナ(Aktina)発電所
- 安中市太陽光発電所
東京ガスグリーンボンドには合計値で407,068t-CO2もの二酸化炭素排出削減効果があり、大きな環境インパクトを得られます。
その他にも脱炭素含む成長領域に約2兆円規模の投資を実施する「トランジションボンド」も発行しており、環境インパクトを生み出す取り組みを強化しているのが特徴です。
事例③:ゴールドトラスト株式会社
ゴールドトラスト株式会社では、ライフステージに合った暮らしを実現する「サービス付き高齢者向け住宅」を提供しています。
支援機構融資に沿って「L型プラン」「I型プラン」の2種類を提供しており、地域性や顧客のニーズに合わせた柔軟なプランニングを実施しているのが特徴です。
サービス付き高齢者向け住宅には、以下の社会的インパクトがあります。
- 高齢者の日常生活や介護の不安解消
- 高齢者の孤立・孤独の予防
- ライフステージに合った快適な暮らしを実現
デザイン性の高い外観バリエーションを揃えており、太陽光付など環境に優しいタイプの住宅にすることも可能です。
高齢者住宅は不足傾向にあるので、今後も高い需要を期待できます。
インパクト投資を個人で始める方法
インパクト投資を個人で始める方法は、以下の通りです。
- 投資信託(ファンド)
- 株式投資
- 社債
インパクト投資に特化した投資信託(ファンド)では、解決したい社会課題のテーマを選んで対象銘柄や事業に投資するのが特徴です。
一方、株式投資は企業が事業資金を集めるために発行する「株式」を、「売買益(キャピタルゲイン)」や「配当金(インカムゲイン)」で収益を得ます。
また、社債とは企業が資金調達のために発行する債券のことで、満期まで利子を受け取り、満期には元本が返済される仕組みです。
株式投資と社債は社会課題を解決する事業に取り組む企業を調査し、株式・社債を購入することで投資することが可能です。
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まとめ:インパクト投資を始めるならゴールドトラスト
インパクト投資とは、財務的なリターンと社会的・環境的リターンの両立を目指した投資のことです。
社会貢献ができるというメリットがある一方で、短期間で大きなリターンは望めないなどのデメリットもあるので注意が必要です。
インパクト投資の市場規模は急拡大中で、今後の成長も期待できるでしょう。
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