不動産投資に地震保険が必要な理由とは?加入状況やメリット・注意点も解説

不動産投資に地震保険が必要な理由とは?加入状況やメリット・注意点も解説

地震保険とは、地震や二次災害として発生した火災などによる建物・家財の損害を補償する保険です。

不動産投資を行う場合、オーナーは建物の火災保険に加入することが一般的ですが、地震保険は付加していないケースも少なくありません。

しかし、数年ごとに起きる大地震を受けて、「やはり地震保険に入ったほうが良いのか」など不安に思う方もいるでしょう。

この記事では、不動産投資で加入できる地震保険の補償内容や、保険料などの基礎知識を解説します。

不動産投資における加入の必要性や現状のほか、メリットや注意点もあわせて紹介するので、オーナーの方はぜひ参考にしてください。

 

不動産投資で加入できる地震保険とは

まずは地震保険の基礎知識として、以下の3つを解説します。

  1. 仕組み
  2. 補償内容
  3. 保険料

なお、地震保険を含め、不動産投資の相談先を探している方は、こちらの記事もあわせてチェックしてみてください。

【関連記事】不動産投資の相談窓口どこがいい?見極めポイントやすべき質問も紹介

 

仕組み

地震保険は、地震発生時に民間の保険会社が負担する保険金のうち、一定額以上を政府が負担することによって成り立っています。

政府が関与することで、加入者は低い保険料で地震保険に加入し、万一のときの補償を受けられるのです。

なお、日本では地震保険の単独は契約できず、火災保険に任意付帯の特約として加入できるようになっています。

 

補償内容

地震保険の補償内容について、以下の2つを解説します。

  1. 損害程度別の認定基準と保険金額
  2. 保険金が支払われるケース

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

損害程度別の認定基準と保険金額

地震保険の保険金額は、主契約である火災保険金額の30〜50%内です。

保険金の最大額は建物が5000万円、家財が1000万円までとなっています。

具体的な認定基準と保険額は、下表の通りです。

損害の程度 建物 家財 保険金額の限度(※2)
主要構造部(※1)の損害 焼失・流失などの損害
全損 50%以上 延床面積の70%以上 80%以上 100%
大半損 40%以上50%未満 延床面積の50%以上70%未満 60%以上80%未満 60%
小半損 20%以上40%未満 延床面積の20%以上50%未満 30%以上60%未満 30%
一部損 3%以上20%未満 (全損・第半損・小半損に至らない場合)
床上浸水、または地盤面から45cmを超える浸水
10%以上30%未満 5%

※1 外壁や屋根、柱、壁、基礎など建物の構造上必要不可欠な部分/建物時価額が基準
※2 それぞれ時価額が基準(例:60%なら「時価額の60%」が限度)

例えば、建物の時価が3000万円、火災保険の保険金額が3000万円だった場合、地震保険の保険金額は900〜1,500万円となります。

ここで注意したいのは、地震による被害が発生した場合、実際の損害額ではなく、損害の程度に応じた保険金が支払われるという点です。

査定人の調査前に修繕してしまうと補償されないことがあるため、被害状況は詳細に写真などで記録しておくことをおすすめします。

なお、地震の被害による保険金の支払い総額が保険会社全体で12兆円を超える場合、保険金が減額されるケースがある点にも留意しましょう。

引用元:e-Gov法令検索|地震保険に関する法律施行令

 

保険金が支払われるケース

地震保険では、地震による直接的な損害のみならず、地震によって発生した火災や津波による損害も補償の対象となります。

保険金が支払われる・支払われない具体的な例は、下表の通りです。

ケース 支払い有無 解説
地震による火災で住宅が全焼した 地震による火災は火災保険ではなく、地震保険の補償対象
地震で土砂崩れが発生し住宅が埋没した 地震による土砂災害は、地震保険の補償対象
津波で家が流失した 津波による被害は、水害保険ではなく地震保険の補償対象
火山の噴火による溶岩で住宅が焼失した 噴火の被害も、地震保険の補償対象
地震の揺れで外壁のタイルが剥れ落ちた 主要構造部の損害額が時価額の3%以上であれば、「一部損」として認定
地震による液状化で地盤が沈下し、住宅が傾いた。 一定以上の傾きがあれば、補償の対象
地震の揺れで塀が崩れた × 主要構造部以外の損害は、地震保険の補償対象外
地震の揺れによって窓が割れた × 窓のサッシは主要構造部ではないため、地震保険の補償対象外
津波で自家用車が流失した × 自家用車は家財に含まれないため、地震保険の補償対象外
避難している間に家財が盗まれた × 盗難は地震保険の補償対象外

保有する賃貸物件ではどのような地震被害が起こりうるかを事前に分析し、補償対象の有無を把握しておくと良いでしょう。

 

保険料

地震保険の保険料は、建物の構造や所在地などによって変わります。

特に重要なポイントは、「どの保険会社で契約しても同じ保険料である」ということです。

地震保険の保険料は民間の保険会社と政府が共同で提供している分、公共性が高く、利益の創出も赤字になることもないように設定されています。

ただし、地震発生データ(震源モデル)をもとに保険金額を算出しているため、地域によって金額が異なる点には留意してください。

例えば、契約金額が100万円の場合、愛知県では1,000円台〜2,000円台なのに対し、東京都では3,000円台~4,000円台となっています。

愛知県をはじめとした東海地方は公示地価も上昇し、不動産投資に向いている地域といえるでしょう。

土地付きの優良物件を探している方は、弊社の「賃貸マンションアパート(一棟買い):トチプラス」もご参照ください。

愛知県の不動産投資がおすすめな理由について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてチェックしましょう。

【関連記事】名古屋で不動産投資をするメリット・デメリットとは?失敗させないコツも解説

引用元:損害保険料算出機構|自賠責保険基準料率のあらまし

 

不動産投資に地震保険が必要な理由

不動産投資家に地震保険をおすすめする理由は、以下の2つです。

  1. 地震の発生率が高い
  2. 公的補償がない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

理由①:地震の発生率が高い

不動産投資で地震保険が必要な理由は、地震の発生頻度が高く、起こりうる損害も大きくなりがちなためです。

日本列島は太平洋の周囲を取り囲む環太平洋火山帯の一部にあり、地球上で最も活発なプレート境界の1つです。

地球上で発生する地震の約90%がこのエリアで発生すると言われているほど、地震の発生頻度の高い地域となっています。

以下のような直下型地震も、記憶に残っている方が多いでしょう。

  • 阪神大震災(1995年)
  • 新潟県中越沖地震(2007年)
  • 熊本地震(2016年) など

不動産投資をする場合は、大規模な地震による損害を早期にリカバリーできるよう、地震保険をはじめとした備えを常に意識しておくことが大切です。

 

理由②:公的補償がない

地震の被害は命に直結するため、人的被害に対しては労災保険や災害弔慰金など公的な保障が充実しています。

しかし、建物や家財など、物質的な被害に対する公的な保障はほとんどありません。

仮に地震で住宅が全壊した場合、被災者生活再建支援制度から出る支援金は最高額でも300万円程度です。

そのうえ、「生活再建のための制度」であるがゆえに、当然ながら不動産投資用の物件には適用されません。

不動産投資をする場合は、大切な資産を守るためにも自分で保険に加入して備えておきましょう。

 

不動産投資における地震保険の加入状況

損害保険料算出機構が発表している最新統計によると、地震保険の付帯率は全国で69.4%となっています。

これは火災保険に対する付帯率を算出した統計のため、不動産投資において加入された火災保険も含むデータです。

付帯率は2001年の33.5%から毎年1〜3%ずつ上昇し、直近のデータでは2倍以上になっています。

特に2011年度の増加率は5%を超えており、東日本大震災が影響していると推測されます。

その後も地震保険の契約件数自体は、下表のように増加中です。

保険契約件数 増加件数 増加率
2018年度末 19,005,841件 747,914件 4.10%
2019年度末 19,740,800件 734,959件 3.87%
2020年度末 20,355,462件 614,662件 3.11%
2021年度末 20,804,068件 448,606件 2.20%
2022年度末 21,215,849件 411,781件 1.98%

また、​​2023年のファーストロジック社による意識調査では、不動産オーナーのうち約8割が投資用物件の地震保険に加入する意向を示したことが明らかになりました。

オーナーの55%が「地震保険に必ず加入する」と回答しており、不動産投資においても地震に対する備えの意識が高まっているといえるでしょう。

引用元:
損害保険料率算出機構|2022年度 グラフで見る!地震保険統計速報
PR TIMES|「地震保険に必ず入る」と意識調査で回答した不動産オーナーは55%という結果に

 

不動産投資で地震保険に加入する3つのメリット

不動産投資で地震保険に加入するメリットは、以下の3つです。

  1. 損害後の修繕費用にあてられる
  2. 保険料を経費として計上できる
  3. 不動産投資ローンの返済負担を減らせる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

メリット①:損害後の修繕費用にあてられる

地震保険に加入するメリットは、損害後の修繕費用にあてられる点です。

不動産投資をする際は、老朽化などに対する修繕費用も予算に組み込みます。

しかし、地震発生時に大きな損害をこうむった場合、準備していた資金だけでは対応しきれないケースも少なくありません。

そのようなときでも保険金を受け取れれば、修繕費用の足しにでき、投資計画の再建もスムーズになるでしょう。

 

メリット②:保険料を経費として計上できる

不動産投資で地震保険に加入した場合、火災保険と同様に保険料を経費として計上できるため、節税につながります。

ただし、1年間で計上できる保険料は、1年間分となります。

例えば、5年間で加入した保険料が20万円の場合、1年あたりで経費として計上できるのは4万円です。

「契約金額=1年で経費計上できる金額」ではない点に注意しましょう。

※不動産投資による節税は物件などの条件により効果が異なります。節税を目的とした投資をする際は専門家のサポートを受けながら行いましょう。

 

メリット③:不動産投資ローンの返済負担を減らせる

建物が全損した場合はもちろん、半損であっても入居者に部屋を貸し出せず、予定していた家賃収入が得られなくなってしまいます。

しかし、建物が被災したからと言って、金融機関が不動産投資ローンの支払いに猶予を設けてくれるわけではありません。

そのような場合に備えるためにも、地震保険の加入が必要です。

保険金をローンの返済に充てられれば、当面の返済負担を軽減できます。

保険金で建物を修繕して価値を復元できれば、家賃収入も回復しやすくなるでしょう。

 

不動産投資で地震保険に加入する際の注意点

不動産投資家が地震保険に加入する際の注意点は、以下の2つです。

  1. 損害額の全額補償は難しい
  2. 場合によっては保険料が高額になる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

注意点①:損害額の全額補償は難しい

地震による損害が発生したとしても、損害額の全額を補償することは難しいのが現状です。

地震保険の保険金額は、火災保険で支払い可能な金額の50%を上限としているためです。

また、地震保険の補償対象は、外壁や柱など主要構造部に被害が出た場合に限られています。

資金に余裕がある場合は、地震保険でカバーしきれない部分を上乗せ補償で対応することも検討しましょう。

 

注意点②:場合によっては保険料が高額になる

地震保険は投資する物件の所在地や構造によっては、保険料が高額になる点にも注意が必要です。

例えば、1年間の保険額を1,000万円とした場合、東京都と愛知県の保険料は下表のようになります。

地域 構造
鉄筋コンクリート造(イ構造) 木造(ロ構造)
東京都 27,500円 41,100円
愛知県 11,600円 19,500円

建物が密集している都市部で地震が発生すると、二次災害として火災が発生しやすくなるために保険料が高くなりがちです。

不動産投資にかかる費用をなるべく抑えたい場合は、地震保険の金額にも注目し、災害リスクの低い地域を選びましょう。

なお、不動産投資で活用する物件の選び方について詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

【関連記事】不動産投資における物件の探し方ガイド!着目したい条件やポイントも解説

 

不動産投資の地震保険に関するよくある質問

最後に、不動産投資の地震保険に関してよくある質問を紹介します。

  1. 質問①:物件を売却する際の取扱いは?
  2. 質問②:解約した場合の保険料は?

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

質問①:物件を売却する際の取扱いは?

不動産を売却する場合、火災保険や地震保険などの損害保険を次の所有者に引き継げない仕組みになっています。

しかし、所有者が変わったからと言って保険が自動的に解約されるわけではありません。

自分で解約の手続きをしておかなければ、保険料を支払い続けることになってしまいます。

この際、火災保険・地震保険の解約のタイミングには注意が必要です。

売買契約直後に保険を解約してしまうと、売買契約から引き渡しまでの間に被害が発生した際に補償されなくなってしまいます。

そのため、保険解約の手続きは、所有権移転登記が完了した後に行いましょう。

 

質問②:解約した場合の保険料は?

火災保険と同様に、契約途中で保険を解約した場合は、解約期間に応じた払い戻しを受けられます

不動産投資で火災保険や地震保険に加入する場合、数年分を一括で加入料を支払います。

そのため、解約時には保険会社がまだ使っていない期間を計算し、残存期間分が返還される仕組みです。

ただし、火災保険・地震保険の解約返戻金は日割り計算ではなく、月割りで計算されるのが一般的です。

残存期間が1ヶ月未満の場合は払い戻しされないため、注意しましょう。

 

まとめ:不動産投資オーナーは保険加入で地震に備えよう

不動産投資をする場合、地震保険に加入しておくことは重要なリスクヘッジです。

大きな損害によって家賃収入が途絶えたときでも、修繕費用やローン返済の足しにできるよう、地震保険の加入は早めに検討しましょう。

なお、弊社が運営する100億円資産形成倶楽部では、優良物件の情報や運用ノウハウを提供しています。

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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。