障がい者グループホームとは?物件・サービス別の種類や利用傾向も解説

障がい者グループホームとは?物件・サービス別の種類や利用傾向も解説

障がい者グループホーム(共同生活援助)とは、障がいのある方が地域生活を送れるよう、アパートや戸建てで支援を提供するサービスです。
一口に障がい者グループホームと言っても、入居される方に合わせた物件の形態やサービスなどにさまざまな種類があります。

この記事では障がい者グループホームの種類について、物件タイプ別やサービス類型別に解説します。
配置が必要な職種の種類や、利用傾向もあわせて紹介。障がい者グループホームへの理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

57c8166fb052ac107fd26b58a5e5c618.png

 

障がい者グループホーム(共同生活援助)とは

障がい者グループホームとは家庭的な雰囲気の中で、世話人や支援員の支援を受けながらアパートや戸建てで共同生活を営む住まいです。
ここでは障がい者グループホームの基礎知識として、以下の3つを解説します。

  1. 対象者
  2. 支援内容
  3. 必要な設備

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

対象者

障がい者グループホームの対象は、下表に該当する方です。

対象者 知的障がい者
・精神障がい者
・身体障がい者
・難病患者
年齢 原則18歳以上65歳未満
・15歳以上に関しては児童相談所の判断が必要になる
・65歳になるまでに障がい福祉サービスを利用していた方はこの限りではない

「障がい支援区分(※)」の認定は、必ずしも必要ではありません。
※支援の程度を示す区分で、非該当と区分1〜6の7段階がある(区分6がもっとも支援の必要性が高い)

ただし、介護サービスを利用する場合は認定が必要になるため、大多数の利用者が区分1以上となっています。

引用元:e-Gov|児童福祉法

 

支援内容

主な支援内容は下記のように、家庭的な生活を送るうえでの援助です。

  • 食事・お風呂・排泄などの介護
  • 料理・洗濯・掃除などの家事
  • 日常生活や社会生活での相談やアドバイス
  • 終了先や行政とのやり取り など

障がい者支援区分によっても支援内容は異なりますが、主に介護や介助です。
また、利用者が社会から孤立しないように、就労先や生活するうえでの悩みを解消することも必要です。

 

必要な設備

障がい者グループホームは、アパートや戸建ての面積や入居人数などに定めがあります。

共同生活住居は1以上のユニットが必要で、ユニットの人数は2人以上10名以下です。
家庭的な生活を営むうえで必要となる、リビングや交流室も設置が必須となっています。

また、障がい者グループホームをあらたに建築する場合には、下記の条件があります。

  • 住宅街に立地すること
  • 入居人数は10名以下

引用元:厚生労働省|令和5年共同生活援助に係る報酬・基準について≪論点等≫

 

【物件タイプ別】障がい者グループホームの種類

障がい者グループホームの種類を物件タイプ別に分けると、以下の3つが挙げられます。

  1. 戸建て型
  2. アパート型
  3. サテライト型

それぞれの種類によって、利用者の障がいの程度やメリット・デメリットが異なるため、利用者に合った物件を選びましょう。
また、物件タイプによっては建築基準法上の用途変更が必要になります。

障がい者グループホームにおける建築基準法に関して詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】障がい者グループホームにおける建築基準法の用途とは?手続きの流れも解説

 

種類①:戸建て型

支援の程度 24時間365日のサポート
対象者 障がい者支援区分が高い方
世話人・支援員の業務 ・生活するうえでの介護や補助
・24時間365日のサポートのため、人数が必要

戸建て型は、一軒家を活用した障がい者グループホームです。

3LDKや4LDKなどのLDKを交流室とし、トイレやキッチンは共用、個室をそれぞれの利用者の居室として利用します。
就寝は基本居室で、それ以外の時間は交流室などで過ごす住まいの場です。
密着したサポートを受けたい方におすすめの障がい者グループホームといえます。

 

種類②:アパート型

支援の程度 要望があったとき、自室から出る際
対象者 障がい者支援区分が低い方
世話人・支援員の業務 ・戸建て型に比べ業務量は少ない
・その分利用者のメンタルケアなど心に寄り添った業務が必要

アパート型は、その名の通りマンションやアパートを活用した障がい者グループホームです。
通常のアパートやマンションを活用するため、備え付けの居室やトイレなどがあり、一人暮らしに近い生活を送れます。

世話人・支援員は、戸建て型と比べ、24時間365日の密着サポートではなく、一人暮らしの生活をサポートする業務が必要となります。
自立した生活を送りたい、一人暮らしをしたいけど少し不安、という方向けのグループホームです。

また、お持ちのアパートやマンションを活用できる場合もあるため、障がい者グループホームを始めたい方にはおすすめの物件タイプです。

なお、弊社ゴールドトラストでは、障がい者グループホーム特別セミナーや資産運用セミナーを常時開催中です。
詳しくはセミナー情報ページをぜひご覧ください。

 

種類③:サテライト型

支援の程度 要望があったとき、本体住居に移動する際
対象者 障がい者支援区分が低い方向け
世話人・支援員の業務 ・戸建て型、アパート型に比べ業務量は少ない
・ただサテライト型住居に通う、移動の際の介助が必要

サテライト型は、アパートの1室を利用する障がい者グループホームです。
アパート型や戸建て型を本体住居として、別の場所にあるアパート・マンションの居室で就寝します。
食事や交流の際に本体住居に移動するため、より一人暮らしに近い形で生活できる分、自立を目指す方向けのグループホームとなっています。

また、既存の建物を障がい者グループホームとして活用する場合、ほとんどの場合で改修工事が必要です。
しかし、サテライト型はあくまでもアパートなどの1室を利用するだけのため、改修工事にかかる費用を抑えられます。

サテライト型は単身での生活をしたい利用者のニーズと、大幅な改修工事などをしたくない事業者のニーズを一挙に叶える障がい者グループホームといえるでしょう。

 

【サービス類型別】障がい者グループホームの種類

障がい者グループホームの種類をサービス類型別に分けると、以下の3つが挙げられます。

  1. 介護サービス包括型
  2. 日中サービス支援型
  3. 外部サービス利用型

それぞれサービスの提供範囲や報酬(※)が異なります。
実際の事業所数などとあわせてチェックしていきましょう。

なお、報酬とはサービス提供の対価として国から受け取るお金であり、基本的に以下の計算式で算出できます。

報酬=報酬単価×地域区分(※)

※地域によって異なりますが、10円として計算するとおおよその数字がわかりやすい

 

種類①:介護サービス包括型

事業所数(令和5年4月) 10,631か所
利用者数(令和4年度) 146,402人
基本報酬の単価(令和6年度) 171~600単位

介護サービス包括型とは、事業所内の職員が介護にあたる障がい者グループホームです。
主に夜間や休日に、食事や排泄などの日常生活のサポートをします。

利用者は障がい者グループホームで過ごす時間以外は、生活介護や就労継続支援など他の日中活動サービスへ参加します。

 

種類②:日中サービス支援型

事業所数(令和5年4月) 809か所
利用者数(令和4年度) 11,586人
基本報酬の単価(令和6年度) 253~997単位

日中サービス支援型は重度の障がいなどにより、日中活動サービスを受けられない方を支援する障がい者グループホームです。
他のグループホームと異なり日中もグループホーム内で過ごす分、職員の配置数が多く基本報酬も高い傾向にあります。

 

種類③:外部サービス利用型

事業所数(令和5年4月) 1,233か所
利用者数(令和4年度) 14,913人
基本報酬の単価(令和6年度) 115~273単位

外部サービス利用型は、利用者に必要な介護サービスを外部へ委託しながら運営する障がい者グループホームです。
夜間は食事や排泄といった介護を行いますが、上記2つの施設と比べると職員の比率が少ないタイプとなっています。

 

障がい者グループホームに必要な職種の種類

障がい者グループホームに必要な職種や人数は、人員配置基準で定められています。障がい者グループホームで必須となる職種は、下表の5つです。

職種 必要人数 勤務形態
管理者 1人 常勤(他施設との兼務可)
サービス管理責任者 1人以上(定員30人以下の場合) 非常勤可(兼務可だが、定員20人以上は専従推奨)
生活支援員 介護サービス包括型 前年度の平均利用者数に応じた必要数の合計を配置(障がい者支援区分に基づく) 非常勤可
日中サービス支援型
外部サービス利用型 不要
世話人 介護サービス包括型 利用者:世話人=6:1以上 非常勤可
外部サービス利用型 利用者:世話人=6:1または10:1以上
日中サービス支援型 利用者:世話人=5:1以上
夜間支援従事者 介護サービス包括型 基準上は不要だが、配置することで加算(※)の算定が可能 非常勤可
外部サービス利用型
日中サービス支援型 1人以上

※所定の条件を満たすことでもらえる報酬

特に世話人と生活支援員はサービスによっても異なるため、注意しましょう。

引用元:e-Gov|指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準

 

種類①:管理者

管理者は施設内の管理や職員の統括を行う、いわゆる施設長の役割を果たします。
資格の有無は問いませんが、下記のような多岐にわたる業務を行います。

  • 人事・職員の労務管理
  • 備品管理
  • 利用者が過ごしやすい環境づくり など

業務に差支えがなければ、他施設との兼任も可能です。

 

種類②:サービス管理責任者(サビ管)

サービス管理責任者は通称サビ菅と呼ばれ、下記のような業務を行います。

  • サービス内容の管理
  • 職員に対するサービスに関してのアドバイス
  • 他事業との連絡調整
  • 個別支援計画に関しての業務 など

配置基準は定員30人以下の施設であれば1人以上、31〜60人以下は2人必要です。
資格は必要ありませんが、一定以上の実務経験と研修を受ける必要があります。

また、近年では5年ごとの更新制度も導入されており、利用者のニーズに合わせた施設の運営が必要です。

 

種類③:生活支援員

生活支援員は主に食事や排泄といった、直接的な介護業務にあたる職員です。
管理者やサビ管を司令塔とするならば、生活支援員は実働部隊といえます。
配置基準は利用者の障がい者支援区分によって異なりますが、前年度の平均利用者をもとに算出します。

サービスによっても配置基準は異なり、日中サービス支援型の場合には生活支援員または世話人どちらかが常勤で1人以上が必要です。
一方で外部サービス利用型の場合には介護を外部委託するため、生活支援員は不要となっています。

生活支援員は非常勤でも問題はありませんが、同一職員に複数の職種を兼任させる場合は、職種ごとに時間を分ける必要があるため注意しましょう。

 

種類④:世話人

生活支援員が利用者の介護をする職種に対し、世話人は金銭や健康など生活の管理をする職種です。
配置基準は生活支援員と同様にサービスや比率によって異なりますが、すべてのサービス類型で必要となります。

世話人と利用者の比率は事業所によってさまざまですが、より手厚い配置をすることで基本報酬が上がる仕組みとなっています。

 

種類⑤:夜間支援従事者

夜間支援従事者はいわゆる夜勤の職員で、利用者が就寝した時間から起床する夜間帯に働く職種です。
具体的な時間は利用者の生活リズムに合わせるため、施設ごとに異なる場合がほとんどです。

配置基準は日中サービス支援型のみ、1人以上の配置が義務付けられています。
夜間支援従事者は非常勤でも問題ありませんが、世話人や生活支援員と同様、同一職員が多職種と兼任する場合には注意が必要です。

 

障がい者グループホームの利用状況

障がい者グループホームの利用者は年々増加傾向にありますが、サービスによって偏りがあります。
ここでは下記2つの点に着目しながら、近年の利用状況を解説します。

  1. 利用が多い障がいの種類
  2. 利用が多い障がい支援区分の種類

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

利用が多い障がいの種類

下表は、各サービス類型別で最も多い障がいの種類です。

介護サービス包括型 知的障がい(64.1%)
日中サービス支援型 知的障がい(55.3%)
外部サービス利用型 精神障がい(58.6%)

外部サービス利用型は精神障がいの利用者が多いのに対し、介護サービス包括型は知的障がいの利用者が多くを占めています。
また、日中サービス支援型は他のサービス類型に比べ、身体障がいの利用者の割合が高くなっています。

引用元:厚生労働省|令和5年共同生活援助に係る報酬・基準について≪論点等≫

 

利用が多い障がい支援区分の種類

下表は、各サービス類型別で最も多い障がい支援区分の種類です。

介護サービス包括型 区分3(25.6%)
日中サービス支援型 区分4以上(79.1%)
外部サービス利用型 区分なし(64.8%)

介護サービス包括型は各区分が比較的均等である一方で、日中サービス支援型は区分4以上と支援が多く必要な利用者が多数を占めています。
また、外部サービス利用型は支援の必要性が低い区分なしの方が多いのが現状です。

引用元:厚生労働省|令和5年共同生活援助に係る報酬・基準について≪論点等≫

 

経営が良好な障がい者グループホームの種類

実態調査によると、近年経営が最も良好なグループホームは介護サービス包括型です。

サービス類型 令和4年度決算における利益率(収支差)
介護サービス包括型 9.1%
日中サービス支援型 3.8%
外部サービス利用型 1.1%

日中サービス支援型は基本報酬が多いものの、職員が多く必要となる分人件費がかかり、利益率が上がりにくい傾向があります。
一方、外部サービス利用型は外部委託が可能なため、職員数は多く必要ありません。
しかし、基本報酬が少ない分、加算を積極的に算定しない限りは利益率の向上は期待できない状況です。

介護サービス包括型は基本報酬や職員の配置数が、日中サービス支援型と外部サービス利用型の間でバランスが良く、利用者も多いため利益率が上がりやすい傾向にあります。

引用元:厚生労働省|令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果

 

まとめ:障がい者グループホームは種類によって利用者の傾向が変わる

障がい者グループホームはサービスの種類により、基本報酬はもちろん、利用者の傾向も変わります。
その傾向に伴い、経営状況も多くの影響を受けるため、職員の配置基準や資格などをきちんと下調べすることが大切です。

なお、弊社ゴールドトラストでは、障がい者グループホーム特別セミナーや資産運用セミナーを常時開催中です。
詳しくはセミナー情報ページをぜひご覧ください。

57c8166fb052ac107fd26b58a5e5c618.png

【関連記事】障がい福祉サービスと建築基準法|法的位置づけや適合が必要な規定など
【関連記事】サ高住経営は儲かる?メリット・デメリットや注意点をわかりやすく解説

この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。