中国の不動産不況はなぜ長引いている?原因や日本・世界への影響を解説
中国は経済成長が著しく、同様に不動産業の規模も発展したため、投資家も注目している市場でした。
しかし、近年は不動産不況の時代に突入しており、購入・売却のタイミングを判断するのが難しいという方もいるでしょう。
この記事では、中国の不動産市場で不況がなぜ長引いているのかについて、原因やバブルが起きていた背景を踏まえながら解説します。
日本・世界に与える影響や今後の展望もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
【基礎知識】中国で不動産バブルが起きていた背景
中国で不動産バブルが起きていた背景は、以下に挙げる3つです。
- 住宅制度改革の推進
- プレセール(事前販売制)の拡大
- 金融システムとの深いつながり
それぞれ詳しく見ていきましょう。
背景①:住宅制度改革の推進
中国では、1990年代に入ってから住宅制度改革が推進されたことにより、個人資産における不動産の比率が高い状況となりました。
国家の所有・提供していた住宅が、居住者に無料または低価格で譲渡されたためです。
元手がほとんどかかっていない住宅ですが、経済成長にともない資産価値も上昇し、不動産バブルへつながったという経緯があります。
特に都市部における不動産価値の上昇率は高く、富裕化の一因となっています。
付随してインフラ関連やサービス業などが発展し、雇用・所得機会も向上しました。
鉄鋼・セメントなどの建築関連、家電・自動車などの生活に必要となる商品需要が増加した影響です。
GDPにおけるウェイトも高まり、不動産投資は中国経済をけん引してきた要素の1つになっています。
背景②:プレセール(事前販売制)の拡大
プレセールの拡大によって不動産の開発が次々に進められたことも、バブルが起きた背景の1つに挙げられます。
プレセールとは住宅が完成する前の時点で一部代金を支払う制度で、中国での新築住宅販売においては最も一般的です。
不動産の開発会社は、事前に支払われたお金を利用し、次の建築に取りかかるという形式を繰り返していました。
不動産の需要に対して投資が上回るという構造ができあがったため、住宅市場はバブルの状態が続いたのです。
なお、海外不動産で注目される主な国の利回りや特徴をチェックしたい方は、下記の記事も参照してください。
【関連記事】不動産投資の利回りとは?平均や理想の数値・最低ラインを解説|計算方法も
背景③:金融システムとの深いつながり
銀行貸し出しにおける不動産関連の割合は非常に高いため、金融システムとの深いつながりがあるといえます。
住宅ローンやデベロッパーに向けた貸し出しだけでなく、不動産を担保としたものも含まれており、2020年には銀行貸し出しのうち39%を占めました。
また、2020年の地方政府における財政収入は、不動産関連税収などが約3分の1を占めており、重要な財源の1つです。
逆に言うと、不動産のリスクが地方債務のリスクにも直結する状況となっています。
中国の不動産不況はいつから始まった?
中国の不動産市場は右肩上がりを続けていましたが、2021年をピークに下落傾向となっています。
直近5年間における商品不動産および住宅の販売面積は、下表の通りです。
商品住宅の販売面積(億平方メートル) | 商品不動産の販売面積(億平方メートル) | |
2019年 | 15 | 17.2 |
2020年 | 15.5 | 17.6 |
2021年 | 15.7 | 17.9 |
2022年 | 11.5 | 13.6 |
2023年 | 9.5 | 11.2 |
2021年から2022年にかけては、商品不動産および住宅の販売面積ともに約25%の落ち込みで、さらに減少を続けています。
また、北京・上海などの一線都市よりも、規模の小さい二線都市や三線都市での減少幅が大きいのが特徴です。
中国の不動産不況といっても一概に判断できないため、エリアごとの状況をチェックしましょう。
なお、弊社ゴールドトラストでは、実績豊富な専門家が不動産投資に関する幅広いサポートを行っています。
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引用:中国国家統計局|National Real Estate Development and Sales
【なぜ?】中国の不動産不況が長引いている2つの原因
中国の不動産不況が長引いている2つの原因は、以下の通りです。
- 住宅需要の減少
- デベロッパーへの不安
それぞれ詳しく見ていきましょう。
原因①:住宅需要の減少
中国の不動産不況が長引いている原因の1つ目は、住宅需要の減少です。
中国では日本と同様に少子高齢化が進んでおり、若年層の人口も減少する傾向にあります。
物件を購入する平均年齢は27歳前後となっているため、若年層の減少は住宅需要を下げる要因です。
また、地方から都市部へ流入し常住する人口の上昇率が鈍化しているのも、原因として挙げられます。
住居として住宅を購入する人の割合は低下する一方、投資目的では増加していました。
しかし、住宅の需要とともに価格も下がると、投資目的での購入者減少にも拍車がかかります。
以上の状況を踏まえると、住宅需要の減少傾向は続くため、今後も不況が長引く可能性があると認識しておきましょう。
原因②:デベロッパーへの不安
中国では、債務返済に追われている大手デベロッパーが続々と判明しており、経営難に陥る企業も数多く存在している状況です。
実際、上述したプレセールによって次々と新しい建築に取りかかったものの、経営破綻して住宅を引き渡せないというケースもあります。
基礎工事が完了していれば売りに出せる形式のため、ほとんどプレセールとなっており、2021年における住宅販売面積のうち9割を占めていました。
しかし、住宅を購入したとしても引き渡してもらえる保証がないことから、デベロッパーへの不安は高まるばかりとなっています。
不動産不況に対する中国政府の対応
不動産不況に対して中国政府が掲げた支援策は、以下の通りです。
- 住宅需要の喚起
- 未完工住宅物件における建設・引き渡しの促進
- デベロッパーに対する資金繰り支援
- 公的住宅の建設推進
国民に対しては、住宅ローンの金利を引き下げることによって購入を促しています。
大都市では住宅の購入制限を撤廃・緩和するところが増え、需要の喚起につなげました。
デベロッパーに向けては、金融面でのサポートを強化し、資金繰りの改善を目指しています。
しかし、政府の対応だけでは効果が限られており、不動産不況を好転できていないのが現状です。
中国の不動産状況を見極めるためには、政府の動向にも注視しましょう。
中国の不動産不況による影響
中国の不動産不況による影響は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- 中国国内での影響
- 日本への影響
- 世界への影響
それぞれ詳しく見ていきましょう。
なお、弊社ゴールドトラストでは、日本の不動産投資における運用ノウハウを提供しています。
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中国国内での影響
不動産不況による中国国内での影響は、以下の2点です。
- 未完成住宅の放置
- 経済の停滞
それぞれ詳しく見ていきましょう。
影響①:未完成住宅の放置
デベロッパーへの不安としても上述しましたが、経営難により建築していた住宅が引き渡しまで至らないという事例が多数起きています。
つまり、建設中の住宅が未完成のまま放置されている状況にあるということです。
現在も不動産価格は下落傾向にあり、デベロッパーの業績が回復する見込みもないため、未完成住宅は放置の状態が続くと考えられます。
今後も未完成住宅が増える可能性はあるため、建設段階の不動産投資には注意しましょう。
影響②:経済の停滞
中国の不動産不況はGDPの押し下げを引き起こし、経済状況にも大きな影響を及ぼす事象です。
直接的に関わる建設業を中心として、製造業や卸小売業などのさまざまな産業にも波及します。
間接的な影響として挙げられるのは、以下の通りです。
- 雇用の悪化
- 土地使用権売却の収入減少による地方財政悪化
- 住宅価格下落による逆資産効果
特に建築業における就業者数は、全産業のうち10%ほどにのぼるため、大きな打撃を受けることになります。
2023年6月には、16〜24歳の失業率が21.3%と過去最悪の水準を記録しました。
現在は集計方法が修正され数値に改善は見られますが、若年層の雇用状況が悪いのは確かです。
住宅の資産価値が下がり雇用状況も悪くなると、国民が消費を控えるため、経済の停滞につながりかねません。
中には、中国経済の停滞を懸念し、国外に脱出する個人や企業も現れています。
不動産不況は、中国経済に多大な影響を与えていると捉えましょう。
引用:独立行政法人労働政策研究・研修機構|中国2024年の新卒者の就職支援を強化
日本への影響
中国の不動産不況による日本への影響は、以下の2点です。
- 不動産需要の低下
- 不動産価格の下落
それぞれ詳しく見ていきましょう。
また、日本での不動産投資に大きく関わる、2025年問題の影響について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
【関連記事】2025年問題が不動産投資に与える影響!損をしない売買のポイントも解説
影響①:不動産需要の低下
不動産不況によって中国の住宅価格が下落すると、日本における物件需要が低下する可能性があります。
もともと日本の不動産は、中国の都市部と比べると低価格だったため、多くの中国人投資家が購入していました。
中国では土地の所有権が認められていないことも、日本で不動産を数多く購入している理由の1つです。
しかし、不動産不況で中国の住宅価格が下落したことで、以前ほど日本の物件に割安感はありません。
不動産バブル崩壊のあおりを受けた中国人投資家が、日本の物件購入を見合わせることも考えられます。
不動産不況は中国でのできごとですが、少なからず日本にも関係していると認識しておきましょう。
中国をはじめとした海外不動産投資におけるメリット・デメリットを知りたい方は、下記の記事もチェックしてみてください。
【関連記事】海外不動産投資とは?メリット・デメリットや注意点を解説
影響②:不動産価格の下落
影響①として挙げた需要の低下にともない、不動産価格の下落にもつながる可能性があります。
中国での不動産開発が減少することで危惧されるのが、日本から輸出している建築資材の売り上げ悪化です。
売り上げが悪くなり建築資材が余ってしまうと価格は下がり、不動産にも影響を与えてしまいます。
中国との貿易関係が強い日本は影響を受けやすいため、注意してください。
世界への影響
世界への影響については、過去最悪の経済状況を招くと予想する専門家もいますが、見解はさまざまで詳しく分かっていないのが現状です。
過去の例を見ると、2008年にアメリカで起きたリーマンショックは不動産バブルの崩壊がきっかけで発生しました。
世界的に使用されていたドルの流通が止まったことで、あらゆる国に影響をおよぼした事例です。
特にアメリカは輸入額が大きかったため、輸出していた国は大きな打撃を受けました。
中国もアメリカと同様に貿易大国であり、経済の悪化で輸入額が減少すると、輸出する側の国は大きな影響を受けると考えられます。
また、日本のバブル崩壊という事例を見ると、日本円が国内を中心に流通していたことから、世界への影響は限られていました。
中国の人民元は国際化を推進している通貨ですが、ドルに比べると流通していないため、世界への影響は限定的と推測できます。
規模の大きさは明確ではないものの、世界への影響も少なからず存在すると捉えておきましょう。
中国の不動産不況における今後の展望
中国の不動産不況における今後の展望としては、停滞の時期が長期化した後に底打ちすると考えられます。
その後も不安定な状況が続き、需給は軟化しやすいため、予測では不動産デベロッパーの資金繰りは厳しいままです。
中国政府が掲げた支援策によって、少しずつではあるものの不況の底打ちに向かっていくと予測できます。
しかし、デベロッパーに対する不安や不信感はすぐに拭えるものではなく、安心して取り引きできるようになるには時間を要するでしょう。
また、少子高齢化による住宅需要の減少も、不安定な状況が続く原因の1つです。
販売不振の状況下となるため、住宅在庫は積み上がり、消化には数年かかると見込まれます。
不動産不況から立ち直るためには、長い目で見る必要があると認識しておきましょう。
中国の不動産不況が続くなかで日本の投資家が取るべき行動
中国の不動産不況が続くなかで日本の投資家が取るべき行動として、以下の2パターンを紹介します。
- 不動産の購入を検討している場合
- 不動産の売却を検討している場合
それぞれ詳しく見ていきましょう。
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不動産の購入を検討している場合
不動産の購入を検討している場合、金利が上昇する可能性を踏まえると、タイミングを逃さないのが重要になります。
固定金利を選択すると、住宅ローンを組んだタイミングでの数値が適用されるためです。
不動産価格の下落を待つのも1つの方法ですが、その間にもし金利が上がってしまうとローンの返済額も増えてしまいます。
例えば、金利が1%変動するだけで、ローンの返済額が1,000万以上変わることもありえる話です。
不動産の購入時には価格だけでなく、低金利のタイミングも見極めましょう。
また、不動産投資におけるローンの基礎知識を振り返りたい方は、下記の記事もあわせてチェックしてください。
【関連記事】不動産投資ローンの金利ランキング!相場や返済額のシミュレーションも解説
不動産の売却を検討している場合
不動産の売却を検討している場合は、価格下落のリスクを抑えるため、早めの行動がおすすめです。
不動産不況は現在も続いており、いつ価格の下落が起きてもおかしくありません。
また、不動産は新築に近いほど高く売れるため、築年数が増える前に売却するのが賢明な判断です。
中国の不動産を所有し売却を検討している方は、できるだけ早めに進めましょう。
まとめ:中国の不動産不況はまだまだ続く可能性あり
中国の不動産市場は2021年を境に不況の時代へと突入しており、今後も続く可能性があります。
中国の不動産不況が日本や世界に影響を与えることも考えられるため、動向には注意が必要です。
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