不動産売却にかかる税金は?計算方法や税金対策をわかりやすく解説
所持している不動産を売却する際には、大きなお金が動きます。まとまったお金が手に入るのは嬉しいことかもしれませんが、そのお金は課税対象であり、さまざまな税金が課せられることになります。不動産を売却するときにどのような税金がどのくらいかかるのか、あらかじめ知識として持っておけば、おおよその計算が可能となり、売却後に手元に残った資金をどのように使うかといった計画も立てやすくなります。
この記事では不動産売却にかかる税金について、その種類や計算方法、節税対策などをわかりやすく解説します。
目次
不動産売却にかかる3つの税金
不動産売却にかかる税金としては、以下の3つが挙げられます。
① 譲渡所得税
② 住民税
③ 印紙税
いずれも不動産売却で利益が発生したのであれば、例外的な状況を除いて必ず支払わなければならないものとなります。以下の解説をしっかり把握しておきましょう。
税金①:譲渡所得税
一般的な労働において、所得に対して税金が課せられることはご存知の通りです。この税金のことを所得税といいます。個人事業主などは確定申告して所得税を申告しなければいけませんし、サラリーマンも支払われるし給料から源泉徴収という形で所得税が差し引かれています。不動産を売却した場合にも、手にした利益が「譲渡所得」として扱われ、それに対して所得税が課されます。
ただし売却益すべてに対して税金がかかるわけでないことに注意してください。譲渡所得は「利益」に対してかかるものであり、つまり売却益からさまざまな費用を差し引いたものが課税対象となります。不動産を売却し利益を得た場合には、そのことについて確定申告をし、自ら所得税を納める必要があります。普段サラリーマンとして働いている方は確定申告に慣れていない方がほとんどと思われますが、これは必須の作業となります。
といってもインターネットを検索すればマニュアルは数多く見つかるので、どうしてもやり方がわからないという事態に陥ることはまずないでしょう。
税金②:住民税
住民税もまた、不動産を売却し利益を得た場合に支払わなければならない税金の1つです。ただし所得税とは異なり、自分から申告をする必要はありません。所得税の申告と同時に住民税の申告も済ませたことになり、後に住民税納付書が送られてくるからです。
住民税の納付期限は各市町村によって異なります。6月・8月・10月・翌年1月のように4期にわけて納付できるようになっていますが、一括で納付することもできます。また確定申告の際に住民税の納付方法として「特別徴収」を選択していれば、給与からの天引きで支払うことも可能となります。
税金③:印紙税
印紙税は、不動産の売買契約書など「課税文書」と呼ばれる特定の書面に対してかかる税金のことです。
印紙税は上記2つとは異なり、収入印紙を購入し書面に添付・消印することで納付となります。不動産を売却する際にはほぼ間違いなく契約書を交わすことになるので、必然的に印紙税も支払うことになります。
印紙税に関しては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご一読ください。
【関連記事】不動産投資は節税になる!絶対に失敗しないためのポイントを解説
不動産売却にかかる税金の計算方法
ここでは、不動産売却にかかる以下の各種税金の計算方法について解説します。
・印紙税
・譲渡所得税
・住民税
・その他の税金
あらかじめ計算方法がわかっていれば、見積もりの時点で綿密なシミュレーションが可能となり、その後の計画も立てやすくなります。以下の解説を読んで、おおまかなところだけでも把握しておきましょう。
計算①:印紙税
印紙税の額は、不動産の売却価格に直接比例するのではなく、契約金額の大きさに応じて4段階に分けられています。
① 100万円超500万円以下:2,000円
② 500万円超1,000万円以下:10,000円
③ 1,000万円超5,000万円以下:20,000円
④ 5,000万円超1億円以下:60,000円
定められた金額の収入印紙を貼付し、消印しないと罰則の対象になります。収入印紙を貼付しなかった場合、もともと必要であった印紙税のほかに、その印紙税額の2倍の過怠税が課されてしまいます。つまり本来の3倍の税金を納めなければならなくなるので、契約の際には注意しましょう。
計算②:譲渡所得税
譲渡所得税の計算方法は、ざっくりいって以下の通りです。
・譲渡所得=不動産を売った金額(譲渡収入金額)ー(不動産購入のための費用(取得費)+売却時にかかった諸費用(譲渡費用))
・短期譲渡所得(所有期間5年以下)の所得税:30.63%
・長期譲渡所得(所有期間5年超)の所得税:15.315%
たとえば不動産が3,000万円で売れたとしましょう。この場合、3,000万円すべてに対して所得税が課税されるわけではありません。その不動産を2,000万円で購入しており、また売却時に100万円の費用がかかったのだとすれば、譲渡所得は以下の金額になります。3,000万円ー(2,000万円+100万円)=900万円
この900万円が譲渡所得であり、ここに対して所有期間に応じた所得税が課せられます。
計算③:住民税
住民税は所得税と一緒に計算されるため、住民税単体でどのように課税されるかを理解している人はあまり多くありません。申告が必要ないこともあり、送られてきた通知に記載されている数字を見るだけ、という方がほとんどです。しかしよい機会なので、以下の数字を覚えておきましょう。
・短期譲渡所得(所有期間5年以下):譲渡所得×住民税率9%
・長期譲渡所得(所有期間5年超):譲渡所得×住民税率5%
この計算結果に基づいた金額が、住民税納付書に記載され送られてきます。
計算④:その他の税金
それ以外にも細かい税金を支払う必要があります。たとえば登録免許税や、仲介手数料に係る消費税などが該当します。登録免許税は譲渡のための登記をする際に必要となるもので、登録免許税法によって「不動産価格の1,000分の20」と定められています。
消費税は普段の日常生活で支払っている消費税と同じなので、2022年10月現在では10%です。
不動産売却で税金を安くする3つの対策
不動産を売却する際にかかる税金を少しでも安くする対策としては、以下の3つが挙げられます。
① 3,000万円特別控除
② 所有期間10年超の軽減税率
③ 買い替えの特例
1つ1つ見ていきましょう。
不動産投資で経費にできる項目については、以下の記事詳しく解説しているので、ぜひご一読ください。
【関連記事】不動産投資で経費に計上できる12項目 | 経費にできない3項目も紹介
対策①:3,000万円特別控除
売却する不動産が居住用であった場合には、一定の要件を満たせば譲渡所得(利益となる部分)から3,000万円を控除できる特例があります。ただしこの特例は常に適用できるわけではありません。
売却した年、その前年、または前々年にマイホームを買い換えており、その際に特例の適用を受けていたのであれば、今回の不動産売却には適用できないことになります。また売り手と買い手が、親子や夫婦など特別な関係でないことなども条件となります。
対策②:所有期間10年超の軽減税率
売却する不動産の所有期間が、売却年の1月1日において10年を超えている場合、上記の3,000万円特別控除とあわせて軽減税率を適用することが可能です。ただし3,000万円特別控除と似たような条件を満たす必要があります。
対策③:買い替えの特例
居住期間が10年以上で、売却年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用不動産を買い替える際、売却金額よりも買い替えの金額が大きいのであれば、一定の要件を満たしたとき譲渡所得税の納付を新居の売却時まで繰り延べられます。
税金を支払うために貯金を切り崩したり、金融機関からお金を借りたりといった負担を減らすために設けられた特例です。譲渡価額が1億円以下であること、上記2つの特例の適用を受けていないことなどが条件となります。
まとめ
不動産を売却する際にかかる税金についての、基本的な知識を解説しました。
不動産は大きな商品なので、売却すれば一度に大きなお金が自分の手元に入ってきます。しかしだからこそ税金については慎重になる必要があります。とくに所得税は、金額が大きいにもかかわらず自己申告制であるため、油断すると申告漏れをしてしまい、追徴税を課されてしまうことにもなりかねません。この記事を参考にして、不動産売却時に税金のことで混乱しない態勢を作っておきましょう。
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