知っておきたい不動産贈与税の基礎知識や評価額の決め方を解説

知っておきたい不動産贈与税の基礎知識や評価額の決め方を解説

親や祖父母から不動産を譲り受ける場合に発生する「贈与税」は、非課税制度を上手く活用することで、税負担を軽減しながら手続きできます。

とはいえ「税金の制度のことは分からない」「難しそうで不安」と感じる方も多いでしょう。

そこで本記事では、不動産の贈与税に関する基礎知識や評価額の決め方、贈与税を非課税にする方法を詳しく解説しています。

不動産を贈与する、される予定がある方は、ぜひ本記事で贈与税に関する知識を深めていってください。


不動産の贈与税とは?

不動産贈与税の基礎知識や評価額の決め方を解説

不動産の贈与税とは、不動産の購入資金や土地や建物などを無償で譲り受けた場合などに発生する税金です。

相続税の課税逃れを防止する目的で施工されており、贈与総額が年間で110万円以上になると、受贈者に支払い義務が生じます。

不動産は財産としての評価額が大きく、110万円の非課税枠を超える場合がほとんどなので、ほぼ必ず贈与税が発生すると認識しておきましょう。

評価額は「固定資産税評価額」とも呼ばれており、固定資産税や不動産取得税、都市計画税、相続税など、さまざまな税金を計算するときの元になる額です。

親から土地をゆずり受けた場合や、家を買い与えられた場合でも贈与税は発生するので、必ず申告してください。

万が一申告を忘れてしまうと、贈与税額の5〜20%相当の無申告加算税が課せられるため注意しましょう。

課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類が用意されています。

相続時精算課税は60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合にしか適用できないので、自分が利用できるかチェックしてください。

 

不動産贈与税の評価額の決め方

不動産贈与税の基礎知識や評価額の決め方を解説

不動産評価額は、不動産の贈与税を決定する際に必要になります。

不動産評価額は贈与対象によって変わるため、以下の表を参考にしてみてください。

贈与対象 不動産評価額になるもの 更新頻度
土地 相続税評価額 3年に1回
建物 固定資産税評価額 1年に1回

贈与対象が土地の場合は相続税評価額が不動産評価額となり、建物の場合は固定資産税評価額が不動産評価額となります。

固定資産税評価額とは、土地や家屋などの評価基準を定義した固定資産評価基準を参考に、各市町村で定められた額です。

固定資産税の計算にも使用されています。
3年に1回更新されるので、親から家や土地を贈与される予定がある場合は、事前に把握しておきましょう。

相続税評価額は国税庁が毎年7月1日に公表している評価額です。

路線価方式(路線価が決まっている地域を評価する)と、倍率方式(路線価が決まっていない地域を評価する)のどちらかを用いて算出されます。

国税庁の公式サイトで確認できるため、不動産評価額に不安を感じている方は、一度目を通しておくのがおすすめです。

引用元:国税庁 | 令和4年分の路線価等について

 

不動産の贈与税の計算方法

不動産贈与税の基礎知識や評価額の決め方を解説

こちらでは不動産の贈与税の計算方法や、特例税率と一般税率の違いを解説しています。
贈与税が間違っていた場合は「無申告加算税」が課税されてしまう可能性があるので、ぜひ本記事を参考にしながら計算してみてください。

 

特例税率と一般税率の違い

「特例税率」と「一般税率」の大きな違いは贈与者と受贈者の関係です。

特例税率は父母や祖父母など、直系尊属から贈与を受けた場合(特例贈与財産)に適用される税率です。
一般税率のケースよりも税金が低いため、納税額を抑えられる可能性があります。

国税庁が定めている特例税率は以下の通りです。

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

引用元:国税庁 | No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

一般税率は、特例税率に当てはまらない贈与のすべてが該当します。
国税庁が定めている一般税率は以下の通りです。

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

引用元:国税庁 | No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

上記の表を比較すると、特例税率の税率が低く、控除額が大きくなっていることが分かります。

最大で240万円もの差が生まれてしまうので、自分がどちらの税率を利用できるかを把握しておくことが重要です。

 

贈与税の計算方法

贈与税の計算方法は以下の通りです。
「贈与税=(課税価格-基礎控除110万)×税率-控除額」

下記で贈与価格を1,000万円と仮定した計算を紹介しているので、これから贈与税を計算される方は参考にしてください。

税率 計算方法
一般税率 (1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円
特例税率 (1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円

同じ1,000万円の贈与価格でも、特例税率と一般税率では納税額に54万円もの差が生じてしまいます。

また一般贈与財産と特例贈与財産の両方を贈与される場合は、受け取った財産の割合に応じて税額を計算します。

下記に一般贈与財産を400万円、特例贈与財産を600万円とした場合の計算例を、ステップ別でまとめました。

  1. 一般税率ですべての財産を計算して実際の割合を算出
    (1,000万円-110万円)×40%=125万円=231万円
    231万円×(400万円÷1,000万円)=92.4万円
  2. すべての財産を特例税率で計算して実際の割合を算出
    (1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円
    177万円×(600万円÷1,000万円)=106.2万円
  3. 1と2の計算結果の合計額を算出
    92.4万円+106.2万円=198.6万円

一般贈与財産と特例贈与財産の両方を贈与された場合は計算が複雑になりますが、落ち着いて対処すれば誰でも対応できます。

計算方法や贈与価格が分からない場合や不安を感じている方は、税理士に依頼するのがおすすめです。

 

不動産の贈与税の他に発生する税金

不動産贈与税の基礎知識や評価額の決め方を解説

不動産を贈与された際には贈与税以外に以下の税金も発生します。

  • 不動産取得税
  • 登録免許税
  • 譲渡所得税

下記ではそれぞれの税金について解説しているので、不動産を贈与する、される予定がある方は合わせてチェックしておいてください。

 

種類①:不動産取得税

不動産取得税とは、土地や建物などの不動産を購入した際に課税される税金です。
地方税に該当するため、お住まいの都道府県の税事務所で手続きが行えます。

原則、税率は4%と定められており、税額は「課税標準額×税率」で計算されます。

 

種類②:登録免許税

登録免許税は不動産購入時の登記手続きにかかる税金です。

土地や建物ごとに設定されている固定資産税評価額に税率をかけて計算します。
税率は登記の種類ごとに異なるので、以下の表を参考にしてください。

登記の種類 税率
土地の所有権移転登記 原則2.0%
建物(住宅用家屋)の新築時の所有権保存登記 原則0.4%
中古住宅などの所有権移転登記 原則2.0%

また金融機関が不動産に抵当権を設定する場合にも登記が必要です。
この場合は0.4%の税率を住宅ローン(債権金額)にかけて計算されます。

 

種類③:譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益に対して課税される所得税や住民税の総称です。

譲渡所得は売却した不動産の価格だけではなく、売却までにかかった不動産の購入価格や費用、売却時にかかった費用を差し引いて計算するので、以下の計算式でも求められます。

「譲渡所得=収入金額-取得費-譲渡費用」

不動産の譲渡所得にかかる所得税と住民税は分離課税になるため、給与や事業所得などとは別に計算される特徴があります。

 

不動産の贈与税を非課税にできるケース・節税方法

不動産贈与税の基礎知識や評価額の決め方を解説

不動産の贈与税を非課税にしたり、節税したりする方法は以下3つです。

  1. 配偶者控除
  2. 住宅取得等資金の非課税制度
  3. 生前贈与

贈与税は高額になるケースが多いので、最低限の納税で抑えられるようにしましょう。

 

方法①:配偶者控除

配偶者控除は別名おしどり控除とも呼ばれる特例です。
婚姻期間が20年以上になる夫婦間での不動産贈与に適用されます。

控除できるタイミングは居住用不動産を贈与したとき、居住用不動産を購入するための金銭の贈与が行われたときです。

基礎控除額110万円に加え、最高2,000万円まで控除が適用できるため、結婚生活が長い夫婦はチェックしておきましょう。

しかし贈与を受けた年の翌年3月15日までに、対象不動産に受贈者が居住していなければいけません。
また、その後も継続して居住する見込みがないと利用できない点には注意が必要です。

 

方法②:住宅取得等資金の非課税制度

住宅取得等資金の非課税制度は、父母や祖父母などの直系尊属から、一定の条件に当てはまる住宅を購入する金銭を受け取ったときに利用できる制度です。

非課税限度額は対象の住宅が省エネ等住宅か、それ以外の住宅かで異なります。
それぞれの非課税限度額は以下の通りです。

  • 省エネ等住宅の場合:1,000万円
  • それ以外の住宅の場合:500万円

令和5年12月31日までの間の贈与が対象になるため、贈与するタイミングに注意してください。

 

方法③:生前贈与

生前贈与は「相続時精算課税制度」とも呼ばれており、60歳以上の父母または祖父母が、18歳以上の子や孫に財産を贈与する場合に利用できる制度です。

合計で2,500万円までの贈与税が非課税になります。
加えて1年で非課税枠を使い切れない場合でも、複数年にわたって利用することが可能です。

ただし限度額の2,500万円を超えてしまうと、超過した金額に対して一律20%の贈与税が課されます。

また贈与者が死亡してしまい、相続財産の対象に不動産が含まれてしまうと、その不動産分の相続税の支払いが必要になるので注意が必要です。

 

まとめ:不動産の贈与税について

不動産贈与税の基礎知識や評価額の決め方を解説

高額になりがちな不動産の贈与税ですが、実は適切な非課税制度を利用すれば、最大2,500万円もの節約が期待できます。

ただし制度を活用する場合は、自分が利用条件に該当しているか把握しておきましょう。

加えて不動産の贈与には、贈与税以外にも「不動産所得税」「登録免許税」「譲渡取得税」が生じる点にも注意が必要です。

納税額が不足していると無申告加算税が課税されるため、不安な方は自己判断せず、税理士などの専門家に相談して、確実に納めましょう。

オンラインセミナーも随時開催しておりますので、スケジュールについては弊社ホームページ
セミナー情報」よりご確認ください。




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この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。