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相続税の基礎控除額の計算や改定内容を徹底解説

相続税の基礎控除額の計算や改定内容を徹底解説

相続税やその基礎控除について計算方法や内容がわからないという方も多いのではないでしょうか。

基礎控除額の計算方法や、法定相続人(相続を受け取る人)の内訳を覚えておくことで、相続税の正確な計算が可能となります。

また相続税は所有する全資産を対象に取るため、基礎控除を活用した節税対策も重要です。

この記事では、相続税の基礎控除について触れつつ、計算時の注意点を具体的に解説します。

2022年に行われた改定内容も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。


相続税の基礎控除とは?

基礎控除とは、相続する財産から一定金額を差し引ける仕組みです。

遺産を相続する際、必ず相続税が発生する訳ではありません。

まず、相続税が発生する3つの仕組みを押さえておきましょう。

  1. 相続する財産から諸経費をマイナスした「課税価格」を計算する
  2. 課税価格から基礎控除額を差し引く
  3. 残った金額が相続税となる

相続する財産の合計値から、葬式費用や債務処理(借金などのマイナス財産)を差し引いて「課税価格」を算出します。

財産の課税価格から基礎控除額を差し引き、残った金額に対して相続税が掛かるため、基礎控除額が財産価値を上回ると相続税は発生しません。

相続税は財産価値で決まるのではなく、基礎控除によって変動することを覚えておきましょう。

相続税の基礎控除額について

相続税の基礎控除額は、過去に改正された経緯を持っており、現在では大幅に引き下げられています。

基礎控除額は時代背景や経済状況によって変動し、形を柔軟に変えることも珍しくありません。

この記事では、現在の基礎控除額を解説しつつ、過去の基礎控除額についても深掘りしながら紹介します。

改正後(2022年時点)の計算式:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

3,000万円をベースとして置き、法定相続人の人数によって控除額が増減します。

例えば、次のような家族構成を想定してみましょう。

  • 配偶者
  • 長女
  • 長男
  • 次男

この場合、法定相続人は「4人」となり、基礎控除額は3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円となります。

改正前(2014年12月31日以前)の計算式:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)

現在の基礎控除額は、過去と比較して40%も縮小されており、社会情勢によって大きく変動していることが分かります。

当時の基礎控除額は、バブル崩壊の余韻が残る2004年に制定され、時代背景の変化によって現在の価格に落ち着いたといえるでしょう。

今後、基礎控除額の改定が起こる可能性もゼロではないため、金額や内容の変化に重要に対応することが重要です。

相続税を計算する際の流れ

相続税の計算は5つのステップに分かれています。

  1. 課税価格の計算
  2. 課税遺産総額の計算
  3. 総相続税額の計算
  4. 案分計算
  5. 各種税額控除の計算

それぞれの内容を具体的に解説します。

手順①:課税価格の計算

相続税を計算する際に最初に行うことは、相続する遺産の算出です。

課税対象となる遺産は「課税価格」と呼ばれ、総資産からマイナス分を計算したものが適用されます。

▼財産の大まかな種類

財産の種類 おもな内容
①プラスの要素を持った財産 金銭、不動産、資産価値を持つ財産など
②マイナスの要素を持った財産 借入金、未払金、税金など

課税価格は①から②を引いた値となり、この金額をベースに相続税の計算が始まります。

手順②:課税遺産総額の計算

相続税は課税価格に直接発生するのではなく、基礎控除額を差し引くことが可能です。

課税遺産総額は、課税価格から基礎控除額を差し引いた金額となり、残った金額に対して相続税が発生します。

基礎控除額の計算方法は次のとおりです。

3000万円+(600万円×法定相続人の数)

配偶者と子が1人の場合の基礎控除額は4,200万円となるため、1つの相場として頭に入れておきましょう。

手順③:総相続税額の計算

被相続人(遺産を相続する人)が遺言を用意していない場合、法律で定められた「法定相続分」によって按分(振り分ける)必要があります。

▼続柄による法定相続分一覧(※1)

配偶者と子どもが相続する場合 配偶者2分の1、子供2分の1
配偶者と直系尊属(※2)が相続する場合 配偶者3分の2、直系尊属3分の1
配偶者と兄弟姉妹が相続する場合 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

(※1)子供、直系尊属、兄弟姉妹が2人以上いる場合、原則として均等に分ける。
(※2)自分より前の世代で直通する親族(配偶者の父母、祖父母など)

遺言が存在せず、按分内容が決まっていない場合、続柄によって相続額が変化することを覚えておきましょう。

さらに、按分された課税遺産総額から総相続税を算出します。

▼相続税の税率一覧

法定相続分の取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円以上 55% 7,200万円

上記の表に従い、法定相続人ごとに計算した合計値が総相続税となります。

引用元
国税庁|令和4年No.4132 相続人の範囲と法定相続分
国税庁|令和4年No.4155 相続税の税率

手順④:按分計算

課税金額の計算が終わったら、案分計算をおこなって遺産を親族に割り振っていきます。

それぞれの配当額は被保険者が残した遺言状を優先するため、法定相続分に従う必要はありません。

しかし遺言状がない場合、法定相続分に定められた金額を元に算出することを覚えておきましょう。

手順⑤:各種税額控除の計算

相続分の按分が終了した後、最後に3種類の控除が発生します。

  1. 配偶者の税額軽減
  2. 障害者控除
  3. 未成年控除

条件にあった控除額を差し引いた後、残った金額が相続税となります。

相続税の基礎控除額を計算する際のポイント

相続税を計算する際のポイントは次の5つです。

  1. 配偶者控除も活用する
  2. 相続放棄をしても法定相続人には含まれる
  3. 代襲相続が発生する場合は計算に注意する
  4. 養子縁組の相続人は上限がある
  5. 生命保険金を確認する

それぞれの詳細について、具体的に解説します。

ポイント①:配偶者控除も活用する

配偶者が相続金を受け取る場合、2つの配偶者控除が発生します。

相続税額が配偶者控除額を下回る場合、相続税を打ち消すことも可能です。

配偶者控除によって、税金が免除される条件は2つあります。

  1. 1億6,000万円以下の相続
  2. 配偶者の法定相続分(遺言がない場合に使用する計算式)相当額
配偶者控除を活用することで、遺産総額が1億6,000万まで税免除されることを覚えておきましょう。
ただし、相続税の先送りでしかありませんのでご注意下さい。

引用元:
国税庁|令和4年No.4158 配偶者の税額の軽減
国税庁|令和4年No.4132 相続人の範囲と法定相続分

ポイント②:相続放棄をしても法定相続人には含まれる

遺産を相続放棄した場合、相続人に財産譲渡は行われませんが、法定相続人としてカウントされます。

法定相続人の人数は基礎控除額に影響を与えるため、相続税を抑えることも可能です。

ここで、基礎控除額の計算式をおさらいしておきましょう。

基礎控除額=3,000万+(600万円×法定相続人の数)

相続放棄をしたからといって、税負担が増える訳ではありません。税総額を計算する場合は、混合しないように注意しましょう。

ポイント③:代襲相続が発生する場合は計算に注意する

代襲相続とは、被相続人(遺産を譲渡する人)の子が亡くなっていた場合、親族が代わって相続を取り次ぐ制度です。

代襲相続が発生すると法定相続人の人数が変化し、相続税の控除額が増加する場合も考えられます。

注意点として、相続放棄した場合は代襲相続とならないため、法定相続人が増えないことを覚えておきましょう。

引用元:
国税庁|令和4年代襲相続人の有無(1)
国税庁|令和4年代襲相続人の有無(2)
国税庁|令和4年代襲相続人の有無(3)

ポイント④:養子縁組の相続人は上限がある

養子縁組を活用して法定相続人を増やし、控除額を引き上げて相続税対策をする方も少なくありません。

しかし、養子縁組が法定相続人としてカウントされる人数には上限があり、大きく2種類に分類されます。

  1. 被相続人に実の子がいる場合→法定相続人は1人まで
  2. 被相続人に実の子がいない場合→法定相続人は2人まで

養子縁組に設けられた上限を超えた場合、法定相続人は無効になるため注意しましょう。

引用元:国税庁|令和4年No.4170 相続人の中に養子がいるとき

ポイント⑤:生命保険金を確認する

生命保険は被保険者の親族を守る役目を持っているため、法定相続人1人につき500万円まで非課税枠として運用できます。

例として、配偶者・長女・長男の家族構成の場合、法定相続人が3人存在するため、500万円×3人=1,500万円まで非課税運用が可能です。

引用元:国税庁|令和4年No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

まとめ:相続税の基礎控除について

相続税の基礎控除を活用することで、節税効果に繋がる施策を打ちやすくなります。

  • 相続税の基礎控除で遺産課税額から一定額を差し引ける
  • 2022年に法改正が起きて大幅な引き下げが実施された
  • 基礎控除額を活用して税負担を抑えられる

所有する資産の評価額が数千万円を超える事例も珍しくないため、事前に節税対策を視野に置くことも重要です。

資産を生前贈与で分散しつつ、基礎控除をフル活用して相続税を抑えることを頭の片隅に入れておきましょう。

オンラインセミナーも随時開催しておりますので、スケジュールについては弊社ホームページ
セミナー情報」よりご確認ください。


この記事の監修者

西尾 陽平
西尾 陽平
役職
土地活用事業部 執行役員
保有資格
資産形成シニアコンサルタント、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学卒業後同社へ入社し、地主さんの土地活用という資産形成や節税を実践で学び、現在は土地のない方へ、土地から紹介し不動産の資産形成の一助を行っている。実践の中で身に付いた視点で、分かりやすく皆様に不動産投資のあれこれをお伝えしています。